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とんちぼ

ー賑やかですね。お祭りですか?お囃子の稽古?

お囃子?
…あぁ、あれはとんちぼだっちゃ
とんちぼの腹鼓だろて
とんちぼ知らねかね?佐渡の方言で狸のことだっちゃ
頓智坊って書くんだわ
古狸でよ、ずーっと昔っから棲みついてんだわ
あぁいうもんの名前は呼ばねぇ
霊獣っていうんか?
名前はあるんだどもさ、そういうもんの名前呼んだらいかんのだと
わしら山の兄さんって呼んでるっちゃ

最近は豆狸連れてるなぁ
豆狸も化けるんだけどよ、それが下手くそでなぁ
お地蔵さんに化けてお供えせしめようってんだわ
まぁあいつらも生きてかなきゃなんねぇからなぁ

村の者には悪さはしねぇよ
せいぜい酔っ払いが酒や肴取られるくらいよ
病気んなれば医者にもかかるし、まぁ持ちつ持たれつだな
人に化けて立派な屋敷で金貸しやってるけどな、
ありゃぁ張りぼてだ
貧乏人からは取り立てねぇのよ
借金の証文がよ、翌朝になると消えてなくなってるんだとさ
お人よしっつうか狸よしだな
だから村の者は滅多なことじゃ借りにいかねぇよ
それで兄さんも貧乏なもんだからさ、金山で働いていたってよ

あぁ、そういやぁ山の役人が化かされて上機嫌で田んぼに浸かってたな
役人は嫌いなんだな
ところで、吹子って何で出来てるか知ってるかい?
金属の精錬に使う風送るやつだよ
ありゃぁ狸の皮だ
豆狸の親も獲られたんだろうな
それでもまぁよく人間恨まずにやってるよ

なんだい?同情かい?
だから持ちつ持たれつだからよ
…そうかい、ならさ、お地蔵さんにお供え置いていきなよ
豆狸が喜ぶだろ

あんたも道中気をつけてな


※民間伝承に元に創作

とんちぼMV

制作後記
『とんちぼ』を早速聴いて頂きありがとうございます
昨年9月のイベント(百鬼夜稿祭、動物ソング、民族調曲)が楽しすぎて、次はとんちぼをやろうと心に決めておりました

とんちぼは佐渡の方言で狸のことです
子どもの頃父の赴任先であった佐渡の民間伝承をとても楽しく聞いており、いつか何かの形で作品にしたいと思っておりました

残念ながらニコニコ動画のトラブルで百鬼夜稿祭が無かったため、とんちぼの化け狸=妖怪的な面をフューチャーするのではなく、あくまで「狸」として佐渡の人々と共存する姿にしました

豆狸2匹は当初イラストのバランス上考案したのですが結果としてストーリーの重要な存在になってくれました

イラストレーターのラムネさんに描いて頂いたイラスト

今回名前は出しませんでしたが、日本三大狸(があるんだって)の一角を成す団三郎狸=山の兄さんがモデルで、その伝説は色々なところで見ることができます
平成狸合戦ぽんぽこでも名前が登場します

何故滅多に人を化かさなくなったかは諸説ありますが、高名なお坊さんを化かそうとしたらコテンパンにやられた説や、病気で人間のお世話になってからは恩を感じて止めた説などがあり、後者を取り人と共存するストーリーにしました

作曲にあたっては「佐渡らしさ」を演出したかったのでイントロと中間部のメロディに佐渡おけさを引用させていただきました

また、上の語りでは佐渡の方言を盛り込みました
ただ再現度は低く下越訛りが混じっています…雰囲気だけ…ご容赦ください

諸々、お楽しみいただけたら幸いです



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