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装いが生むファーストレディーのソフトパワー

先日就任したトランプ大統領の夫人、メラニア・トランプ氏の装いは、国内外で多くの注目を集めました。彼女が選んだアダム・リップスによる濃紺のコートは、威厳や安定感を象徴しつつ、洗練されたエレガンスを体現するものでした。

このクラシックな色合いと目元を覆う帽子の存在は、一部では「葬儀を連想させる」や「帽子はトランプ大統領とのキスを阻むためのもの」といった意見もありましたが、多様な解釈を生むことこそが、ファーストレディーの装いが持つメッセージ性の強さを物語っています。装飾を抑えた今回のシンプルなデザインのコートや帽子は、メラニア個人の印象を控えめにしながらも、ファーストレディーとしての品格やその場における荘厳さを象徴しており、見る者に強い印象を残したと思います。

彼女の装いは常に肯定的な評価を受けていたわけではありません。たとえば過去に、移民収容施設を訪問した際にメラニア氏が着用した「I don’t care, do you?(私は気にしないけれど、あなたは?)」と書かれたジャケットは、そのメッセージが「無関心」を象徴するものと解釈され、多くの批判を浴びました。こうした失敗などを経て、今回の就任式で選ばれた濃紺のコートは、過去の教訓を活かし、彼女が意図的に計算した選択だったと言えるでしょう。


装いに宿るメッセージ

ファーストレディーが選ぶ装いには、国のアイデンティティやリーダーのビジョンを体現する力があります。とくに、パートナーと調和の取れたスタイルを示すことで、パートナーとの信頼や結束を視覚的に表現し、国家全体の安定感や団結を印象付ける効果を持ちます。夫が堅実でシンプルな装いを選ぶ際、妻が華やかさや個性を加えることで、双方が補完し合い、より深みのあるメッセージを発信することが可能となります。

たとえば、アメリカのバラク・ミシェル夫人は、さまざまなファッションを通じて多様性や力強さを示していました。オバマ氏の堅実なスーツスタイルと対照的なミシェル夫人の大胆な色彩やユニークなデザインは、アメリカのリーダーシップと文化的な多様性を象徴し、外交の場で強い印象を残しました。

また、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とブリジット夫人は、スタイルを通じて国家の洗練を体現していました。ブリジット夫人のモダンで洗練されたミニマルな装いは、シンプルな装いを好むマクロン大統領と見事に調和し、フランスの「エレガンス」を象徴していました。


装いが発するメッセージは時に称賛を集め、また時には議論を呼ぶこともありますが、その全てがファッションの持つ影響力を裏付けるものであり、意図的に選ばれることで国家を代表する顔として機能し、世界に向けて力強いメッセージを発信することができます。装いは単なる衣服ではなく、国家のアイデンティティや未来のビジョンを静かに映し出す力さえ持っているのです。

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