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マーケティングは愛か戦争か

前回の記事で、マーケティングを 戦略・作戦・戦術 で分けて考えてみた。
マーケティングには軍事用語が多い。商品を買ってくれるだろう対象者をターゲットと言うが、標的ってことである。最初はすごく違和感があったのに、今ではすっかり慣れてしまった。

マーケティングは、戦争に喩えるとわかりやすいのは事実。
領土(売上)を拡大するためには、近隣諸国の情勢(市場)や敵国(競合・消費者)の情報を収集して分析し、自国(自社)の資源をどう使えば勝てるかの戦略を立てて実行する。
マーケターは、情報収集して勝つ戦略や戦法を考える軍師であり、最前線にいる営業部隊が戦いやすい武器を作る武器職人だ、という説明をよくする。
ここで言う武器は、商品そのものの品質、ブランドストーリー、デザインなどのビジュアル、営業資料、販促、広告などなど。

一方で初回の記事では、マーケターはお見合いおばさんであると書いた。
マーケティングは恋愛でも説明できる。

好きな人ができたら、相手について知りたくなるもの。相手との会話や共通の友人知人、SNSから相手の情報を集めてしまわないだろうか。相手が既婚者なら論外だが、恋人がいたり、自分が好みと完全にズレているとわかったら、諦めて他に自分に合う相手を探すかもしれない。もし諦めないという選択をしたら、相手に好かれる努力をするだろう。自分を磨いて魅力をアップしたり、相手の趣味について勉強してみちゃったり、相手と会える場所に顔を出したり。そして、相手の心に届きそうなアプローチをする。
例えば本や映画が好きで文化系メガネ男子が好きな女性に、筋肉ムキムキマッチョアピールしてもその思いは届きにくい。
うまくいったらいったで、長く続く関係を構築できたらと思うが、その努力をしなければそのうち別れがやってくる。
好きな相手を、自社のお客様と捉えればそのままマーケティングに当てはまる。
まあ、恋愛はそんな簡単じゃないけどね。笑
マーケティングも簡単じゃないからやっぱり一緒か。

私はどちらかというと、戦争より恋愛に喩える方が好きだ。
が、今までの経験から言うと、男性はマーケティングを恋愛で説明すると微妙な反応をすることが多い。
マーケティングは基本的に仕事脳でやることなので、彼らにとっては戦争だと理解しやすいが、恋愛で言われるとピンとこないのだろう。そもそも、恋愛にはそんなに頭を使わないのかもしれない。笑


恋愛と戦争とマーケティングの共通点

好きな相手の気持ち。戦争に勝って手に入れる領土。
愛は善で戦争は悪という倫理的な問題は置いておいて、自分の望むものを得たいというプリミティブな欲求という点で、恋愛と戦争は同根である。
戦争は愛に喩えないけど、愛を戦争に喩えることはある。
昔々、Love is a Battlefieldって歌もあったな。

マーケティングは、稼ぐためのものである。
個人的にはベーシックインカムに興味があって、「サピエンス全史」を読んで以来生きていくことや本来の労働の意味などについて思うところはいろいろあるのだが、現代社会に生きる私たちは、生きるために稼がないといけない。
稼ぐことは善でも悪でもない。稼ぎ方にはその人の生き方や思想が出る。

人間を相手に、その気持ちに丹念に向き合いながら、自分ができることを提供し、喜んでもらって、満足の対価としてお金を払ってもらう。
薄利すぎれば続かないし、悪どく儲ければいずれ顧客は離れ、やはり続かない。悪どく見えても、対価を払うお客様が満足していれば成り立っていく。
何が適正かは状況ににるが、適正な利益を得て、お客様と良好でサステナブルな関係を作る。
そうやって、社会に生かしてもらうものだと考えている。

愛することも、戦うことも、稼ぐことも、人間が生きていくには付きもので(戦争はなくしたいけど)、どれも人間を相手にしていくことだから、基本は同じなのだろう。


優れたマーケティング理論には普遍性がある

マーケティングは人の心や社会を丁寧に見ていくものだから、優れたマーケティング理論は人間の心理や物事の本質を的確についていて、時代を超える普遍性がある。

例えば、マーケティングの基本的な考え方として、4Pというのがある。

Product(製品)
ターゲット、コンセプトを明確にして売れる商品を作る
Price(価格)
適正な価格はいくらか、高価格でいくか薄利多売かの価格戦略
Place(流通)
どういう経路(直売、問屋経由など)で流通させ、どこで(直営店、百貨店、スーパー、ネットショップなど)売るか
Promotion(販促)
どのようにコミュニケーションするか(広告、商品POP、キャンペーンなど)

商品を作る時に、この4つをしっかり考えて設計しましょう、ということ。大企業でも個人でも、ビジネスの規模を問わず、有効なアプローチ。
1960年に提唱され、基本中の基本であり、今でもブランディングや新規事業の設計などのときには使うことが多い。その度に、本当によくできているフレームワークだと感心する。
一時期、4Pはもう古い、Personnel、Process、Profile、Participationなどを加えて6Pだ7Pだという議論もあったが、4Pだけが今でもスタンダードとして残っている。

再び、マーケティング用語について

話を戻す。
マーケティングの理論や手法を説明するときにはどうしても軍事用語の方がわかりやすい。
言葉にはその語源や意味が付随するので、言葉選びは大事だ。ただ、お客様を標的にしたり、戦争をしかけるような考え方はおかしい、などと信条を優先して別の言葉に置き換え、伝えたいことが伝わらなくなるのはただのこだわりだと思う。
冒頭でターゲットという表現に違和感があったと書いたが、今では標的ではなく、対象としている人たちを指す言葉として自分の中で定着している。同じように認識してくれる人にはターゲットと言うし、こだわりそうな人には言葉を置き換えて話すようにしている。

このnoteでは、なるべく一般の人にわかりやすい言葉を選ぶようにしているが、やはり軍事用語を使う場面も多くなるだろう。
その分、たくさん愛を込めて書いていきたい。
マーケティングは、作る人、売る人、買う人、使う人、関わる人みんなへの愛が根本にあった方がいいと思っているので。

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