見出し画像

『万里夢同心』中秋晩会2023/ディマシュin中国4


(Dimash 35)
(12,950文字)
(第1稿:2023年11月15~22日)


YouTube動画①:(この曲のみの動画)
『谭维维 迪玛希倾情对唱“一带一路”的动人乐章《万里梦同心 Sharing a Dream on a Long Journey》「2023央视秋晚」』
(タン・ウェイウェイとディマシュが「一帯一路」の感動的な楽章を情熱的なデュエットで歌った、『長い旅で夢を分かち合う』)
By CCTV春晚 2023/09/29 


YouTube動画②:①の番組の全編
『回看:2023年中央广播电视总台中秋晚会 2023 Mid-Autumn Festival Gala | CCTV春晚』 By CCTV春晚 2023/09/29にライブ配信
・『万里夢同心』を頭出し。





【イントロ:あぶねえ!(笑)】


「待ってるあいだに踊ろっか、踊っちゃお(×2)
 ちょっとカッコいいでしょ?(回転1回目)
 もう1回やってみようかな (回転2回目)
 あぶねっ!        (回転3回目)
 バツが悪くて笑っちゃった」

(⇧動画のキャプション)
 
★dear.sharlyのIGより。9月26日付。
投稿者「ディマシュは不器用な少年😂 爆笑」
Cr: https://v.douyin.com/ieWBHrco/(元動画)



【ディマシュ、中国CCTVの番組「中秋晩会2023」に出演する】


《番組について》

 9月29日、ディマシュが出演する中国CCTVの番組『中秋晩会(Mid-Autumn Festival Gala)』が放送されました。
(CCTV-1、CCTV-3、CCTV-4、CGTNでの同時放送です)
 番組の内容は、動画②の概要が詳しかったので、転載します。

『中国中央ラジオテレビ局の2023年『中秋節祝賀会』が、「長江第一の都市」である四川省宜賓市で開催され、「詩、酒、月、水、竹」という5つの文化的イメージが統合されました。
「河(River)、月(Moon)、歳月(Years)」の3つの章がゆっくりと展開し、長江文化の壮大な物語を使って、中国の物語を心と感情を込めて語り、美しい中秋節の絵を独特の創意工夫で描きます。』

《事前の注意》

 事前注意!
 この番組は生中継ではなく、録画放送番組です。
 したがって、全演奏と歌唱も録画です。
 また、中国の歌番組の慣習として、動画とは別録の歌唱を編集で差し替えてあります。
 マイクを持っている歌手は皆さんその場で歌っていらっしゃると思われますが、音声はやはり差し替えてある可能性が高いです。
 収録場所が観光名所の場合は、最低限の機材しか持ち込めないため、歌手がマイクを持っておらず、その場で声に出して歌っているとしても、完全に別録の歌唱に差し替えてあります。
 この点をよくご承知の上で、動画をご覧ください。
(一部界隈で問題になっていたので、ここに明記しておきます。)


【長江】

 この番組の舞台となった「四川省宜賓市(しせんしょう・ぎひん-し/スーチュアンシォン・イービンシー)」は、中国の中央部南寄りに位置する四川省の、南西部に位置する都市です。
 番組概要の「長江第一の都市」とは「万里長江第一城」、つまり「長江の最初の街」という意味です。
「長江(ちょうこう/チャンジャン)」は、アジア最長の川で、ナイル川、アマゾン川に次ぐ第3位の大河です。

 
 地図で見ると、中国の中央部を東西に流れるものすごく長い川に見えますが、実は上流部分は違う名前で呼ばれています。
 宜賓市より上流は「金沙江(きんさこう/ジンシャジャング)」と呼ばれ、中央北から流れてくる「岷江(びんこう/ミンジャング)」という河と宜賓市で合流し、ここからが長江となります。
 下流部を「揚子江」とも言います。

地図の下(南)のほうの河が長江で、「长」の字の左上に「宜賓」があります


「金沙江」は、中国東北部のタクラマカン砂漠とチベット高原を分ける崑崙(こんろん)山脈から始まり、チベットと四川省の境を南下して雲南に入ると北に反転し、途中から東に向きを変えて四川省を流れ、宜賓に入ります。
 名称は、この川から砂金が取れたことに由来するそうです。

長江の全貌。地図の左側、西から南に走る部分が「金沙江」


「岷江」は、宜賓市の北にある岷山山脈の南麓から始まり、世界遺産にもなっている古代から現在まで2300年にわたって使われている灌漑施設「都江堰(とこうえん)」を通って宜賓市で「金沙江」と合流します。途中には唐の時代から蜀錦(絹織物)の産地で有名な「成都」があり、成都高原は「都江堰」によって潤う広大な農地となっています。

宜賓から楽山、成都、都江堰を通る青いラインが「岷江」

 
 河の名称は正式には、西から順に「通天河」「金沙江」「川江」「荊江」「揚子江」と呼ばれているようです。長すぎるので各地域で名前が違う感じでしょうかね?

 長江の流域には「成都」「重慶」「武漢」「南京」「上海」があり、全流域の人口は4億5千万人に達するそうです。


【宜賓市(ぎひん-し)】

 この都市では「醸造業」が古くから発達し、名酒「五糧液(白酒)」で知られており、「酒都」の異名を持つそうです。
「五糧液(ごりょうえき)」は、中国発祥の蒸留酒の一種で、5種類の穀物の、高粱(コーリャン/もろこし、アマキビともいう)/もち米/うるち米/とうもろこし/小麦を原料としています。
 1978年、鄧小平時代の中国が取った「改革開放政策」以後、宜賓市は大農業地帯から豊富な天然資源を生かした工業都市へと転換しつつあるそうです。それでも最も特色がある産業は今でも酒造で、天然の香料植物が豊かなため、香料の生産も盛んです。この地域の「茶葉」生産量は四川省の4分の1を占めているそうです。


【番組の収録場所について】

 番組は、2つの河が合流する宜賓市で丁字に合流した川の、南の岸にある「宜賓長江公園」らしき場所で収録されています。

(上のページの「宜賓長江公園の周辺のおすすめスポット」という地図を拡大すると見えてきます)

  番組は主にこの「長江公園」と、川を挟んで北側にある「宜賓白塔山」(注1)の白い「白塔」、西の河岸にある「宜賓夾鏡楼」(注2)、そして河に浮かんでいるクルーズ船の甲板でも収録されています。
 また、曲目24番でディマシュとタン・ウェイウェイさんが歌っている場所は「天泉洞」(注3)です。
 曲目12番では「宜賓李庄古鎮」(注4)。
 曲目17番では「宜賓流杯池公園」の「流杯池」(注5)が収録場所になっています。

 オープニングは、河岸を舐めるように打ち上がるド派手な花火と、宜賓市の美しい夜景、ピッカピカにライトアップされて中継地点となった観光名所の建物、そして大きな月が写され、本当に豪華絢爛、すんげーお金かかってんなあという感じです。(すんません💦)


【ディマシュ、リハーサルに励むの巻】

 ちょっと前後しますが、ディマシュが「天泉洞」でリハーサルをしている短い動画を、CCTV4が投稿していました。

★jadecheung0524のIGより。9月28日付。
Cr. CCTV4 中国文学と芸術 (Douyin account)

 
 リハーサル中、共演者たちの楽器を試し弾きしているディマシュ。
 最後に振り向いてピースサインをするその顔は……どっかで見たぞ!

 これだ!

★YouTube動画:『Part-1 CCTV3 "Jasmine" Dimash Kudaibergen 27.12.2018 Димаш Кудайберген "Жасмин"』 By Тильда Меломан 2019/01/02
(概要欄:2018年12月27日収録「新時代を歌う」、CCTV3 2019年1月2日放送。ディマシュ「ジャスミン」公式初収録(総秒、当日計4回歌唱))

 動画が始まって5秒、収録中に大きな音がして収録がストップし、客席に背中を向けていたディマシュ君、つい横を見たら背後も気になったらしく、そおぉーーーっと振り向きます。
 この時の表情がもう、なんともいえず可愛らしくて、超お気に入り。
 写真集もあります。完全自分用(笑)

 ★your_love__0524 のIGより。9月9日付。⇩

 
★misszhangsanのIGより。2018年12月29日付。⇩

  ほんっとに、普通の男の子の表情でねえ🤣



【曲目と出演者名簿】

 ここは結構長くなったので、次の項目まで飛ばしてもOK。
 ただし、3番目,10番目,24番目、26番目にディマシュの友人がいます。
 21番目がディマシュとタン・ウェイウェイさんのデュエットです。

『2023年中央广播电视总台中秋晚会』

第1章:月の泉(月涌大江)

1.序章「月のうねりの河」 演奏:ラン・ラン(郎朗、ピアノ)、指揮:徐志軍、四川交響楽団。クルーズ船での収録。

2.オープニング曲「江水のバラード《江水谣》」 歌:黄绮珊、曹軒賓
 男性歌手のピアノ弾き語りから始まる、戦前の中国歌謡曲の雰囲気漂うバラード。男女デュエット。

3.「九州」(Our Whole Land) 歌:李玉剛、希林娜依・高 演:殷連蓮「宜賓夾鏡楼」での男女のデュエット。間奏部に四川オペラ劇団、京劇から殷連蓮の歌と踊り。
 男性歌手の「李玉剛」は、2020年1月25日の上海春節ガラでディマシュと『新貴妃醉酒+ディーバ・ダンス』をデュエットした人です。(注6)

4.「父《父亲》」 歌:鍾振桃、沙貞寧
 男性歌手2人によるポップス曲のデュエット。

5.「The Great Sky《天之大》」 歌:張暁飛 合唱:子供たち
 女性歌手と児童の合唱。

6.「Childhood《儿时》」 歌:任素汐、杨恩又
 女性歌手と少女のデュエット。

7.「Autumun Thoughts《来甦·秋思》」と「Hometown《故乡》」 
 歌:胡德夫、吉克隽逸
 台湾出身のベテラン男性歌手によるピアノ弾き語りで台湾民謡らしき歌+女性歌手とデュエット曲。

8.「人生の道を歩く《漫步人生路》」 歌: 檀健次、炎明熹
 男女デュエット+ダンサー達、ロック系ポップス。

9.「The Love of My Life《一生所爱》」「Old Street《老街》」「Slowly Like You《慢慢喜欢你》」の3曲メドレー 歌:莫文蔚、李荣浩
 女性歌手のフォーク系バラード、男性シンガーソングライターの自作ポップス曲、2人でバラードをデュエットの3曲。

10.「We Sing The Same Song《我们同唱一首歌》」 歌:袁娅维、吴克群、王祖蓝、麦嘉欣
 「遊覧船」「宜賓白塔山」「宜賓夾鏡楼」の3か所で収録。
 宜賓夾鏡楼と思われる場所で歌っているのは、「シルクロード映画祭」でディマシュとデュエットした、ティア・レイです。
 また間奏部で各建物と2つの川の位置関係をジオラマで見せています。
 最後には4人が鏡楼に集合して合唱。

第2章:三千の川(江水三千)

11.序曲「三千河」 演奏:ラン・ラン、四川交響楽団
 宜賓夾鏡楼でのピアノ演奏。

12.「月」 歌:毛晓彤、好妹妹
 宜賓李庄古鎮の河の船上から女性歌手を、街角から男性デュオ「好妹妹」を収録。

13.「山を越えて《过山》」 歌:凤凰传奇
 フェニックスレジェンドによる、ハードロック系民謡風?

14.「If You Were A Song《若把你》」 歌:杨幂、刘瑾睿
 女性歌手2人によるバラードのデュエット。

15.「Giving《给给》」 歌:许茹芸、马条
 ブルース調バラード、男女デュエット。

16.「五色《五色斑斓》」 歌:王蘇龍、王莉
 ちょっとケルト風フォーク調バラード、男女デュエット。

17.「Unstained《不染》」 歌:郁可唯、井柏然、 演奏:自得琴社
 宜賓流杯池公園の「流杯池」から中継。
 男女のバラードと、古典楽器の伴奏。

18.「光《光亮》」歌:周深 京劇演:張燕 
 天使の声として有名な中国人男性カウンターテナー歌手の周深と、京劇から張燕の歌と踊り。

第3章:毎年の江悦(江月年年)

19.序曲「姜越年年」 演奏:ラン・ラン、四川交響楽団

20.「Wine to the Moon《把酒问月》」 歌:李沁、赵照
 李白の詩にフォーク調の曲をつけた歌。男女デュエット。

21.「Ten Thousand Miles of Dreams Together《万里梦同心》」
 歌:谭维维、迪玛希・库达依别列根
 タン・ウェイウェイと、ディマシュ・クダイベルゲンのデュエット。
 演奏:四川交響楽団。
 録画収録場所は「天泉洞」という鍾乳洞の内部。

22.「I Wish You Peace《祝你平安》」 歌:孙悦、毛不易
 男女デュエット。別れた相手の幸せを願うバラード、

23.「But You Don‛t Understand My Heart《其实你不懂我的心》」
 歌:蔡秦、チェロ演奏:欧阳娜娜
 ベテラン女性歌手のソロ曲。女性チェロ奏者の演奏。

24.「Restless Heart《驿动的心》」 歌:萧敬腾、单依纯
 クルーズ船に「萧敬腾」がいますが、この人は『Singer2017』にも出演していたロックバンド「LION」のボーカル「ジャム・シャオ」です。
 曲は、男女デュエットのちょっとロック系バラード。

25.「River Love《江河恋》」 歌:孙楠 男性歌手のソロ曲

26.エピローグ曲「海に浮かぶ明るい月《海上明月》」 
 歌:吕薇、張英席、周旋
 演奏:四川交響楽団
 女性歌手2人と、男性歌手1人のトリオ曲。
 男性歌手の「張英席」さんは、ディマシュが2021年の大晦日に中国のTV番組に出た時、今回と同じ曲の『万里夢同心』を一緒に歌ったテノール歌手です。公式の動画もあります。今まで出て来た歌手とはもう全然違う上手さと声の良さで、なんでかなと思ったら、プラシド・ドミンゴに師事したという人でした。
(曲目と出演者名簿、終了)


資料①:『2023年中央广播电视总台中秋晚会』
・非常に詳しい資料で、歌や出演者の青文字をクリックすると関連ページが新しいタブで開きます。
・ディマシュ(の中国名)では、中国での彼のとんでもなく詳しい履歴が出てきて仰天します。特に人物評の「子鹿のように無邪気な大きな目」とか
「芸術家らしくない行動により、彼は可愛らしい愚かな少年のように見える」とか、そういうことまでここに書くのかいと思って😂
『万里夢同心』では今までにディマシュが歌った同曲の全動画があります。

 

資料②:CCTV1 総合 「素晴らしいレビュー、歌う再会」
・こちらは、各歌の単独動画があります。


【演奏に使われた楽器について】

『万里夢同心』で使われた民族楽器は、以下の通り。

 カメルーンのダニエル・リンダ・アゾング・ングエストプDaniella Lynda Azong Nguestop=非洲鼓=アフリカンドラム。

 インドネシアのシルヴァナ・フェリンシアShylvana Felinsia=昂格隆=アンクルン=竹管楽器。

 ネパールのアニシュ・ティワリAnish Tiwari=班苏里笛=バンスリ=竹笛。

★dimash_dears_downunderのIGより。10月1日付。
投稿者:
「この楽器はANGKLUNGと呼ばれ、竹で作られたインドネシアの伝統楽器です。 音は個々のリードを振ることで作られます。」以下、各ページのクレジットが続きます。



【ディマシュの場面の写真集など】

 
★jadecheung0524のIGより。9月30日付。
Cr. Photographer mule (Little Red Bookアプリアカウント)
・プロの写真家による、美しい写真集10枚。
・6枚目の写真に、見るからに複雑そうなTVカメラがあり、もっとアップで見せてほしいんですけど。最後の写真はドローンかな?


★dimash.usa.fanclubのIGより。9月30日付。
Cr: Dimash Studio
・ディマシュのみの写真集7枚。特に5枚目、発音のためにちょっと見えている舌がカワイイ。


★dear_4yleenのIGより。10月1日付。
Cr. DimashStudio
投稿者:
「テキストなしのゴージャスな写真😍💕 
 まあ、私たちにはこの美しい生き物を解説するテキストは必要ありませんけど😝」
・ディマシュのみ、洞窟内で撮影された黒と白の衣装の写真集6枚。



 ディマシュ大アップ写真集。
★dimash_cuba_dearsのIGより。10月1日付。
© Dimashstudio (Weibo)
・舌がちょびっと見えてる写真のアップが無いですよキューバさん……🤣



【タン・ウェイウェイ谭维维について】

 タン・ウェイウェイさんは1982年10月8日生まれで、四川省自公市出身の中国人女性歌手です。このTV番組当時40才。
 1998年、16才の時に四川音楽学院音楽科に入学しますが、最後から2番目という低い点数で入学したにもかかわらず、最終的には主席で卒業したという人だそうです。
 2002年に国内の歌手選手権で優秀賞、2003年に中国金レコード奨で最優秀新人賞を受賞。
 2004年には1stアルバムをリリースしています。
 2010年には、四川音楽学院の准教授に就任。
 2015年の『Singer2015』第3シーズンにも出場しており、第6期で挑戦成功、第12期敗者復活戦、第14期ガラ・コンサートに出演しているようです。
 ちなみにこの第3シーズンは、ディマシュが歌った『デイブレイク(天亮了)』の作者、ハン・ホンさんが優勝しています。

 また、念のために言っておきますが、タン・ウェイウェイさんは2017年に台湾の俳優と結婚してまして、既婚者です。ご安心ください(笑)

「タン・ウェイウェイ谭维维 Wikipedia」
(埋め込んだら、写真が彼女のバスト部分だけになってしまったので、URLのみにしておきます💦)
https://zh.wikipedia.org/wiki/%E8%B0%AD%E7%BB%B4%E7%BB%B4



【歌の歌詞】

《モチーフとなった漢詩について》

 今回の歌『万里夢同心』の歌詞は、唐代中期の政治家で詩人の「張九齢(ちょうきゅうれい)」が書いた古典詩『送韋城李少府(李少府を韋城に送る)』を元にしています。
 張九齢(678~740)は、楊貴妃を寵愛した玄宗皇帝(唐の第9代皇帝)の時代の政治家で、彼は楊貴妃に取り入った安禄山の野心を見抜き、皇帝に安禄山を討てと諫言したことで有名です。安禄山はのちに部下の史思明とともに「安史の乱」を起こし、張九齢の予言した通りになりました。

 漢詩の全文は以下の通り。「五言絶句」ってやつです。

送客南昌尉,離亭西候春。
 :南昌への客を見送り、東屋を西へ出て春を待つ
野花看欲盡,林鳥聽猶新。
 :野の花は数え切れず、森の鳥はまだ鳴いている
別酒青門路,歸軒白馬津。
 :東の門の道で別れの酒を交わし、白馬津の舘へ帰る
相知無遠近,萬里尚為鄰。
 :互いを知る同士に遠近は無く、万里離れてもなお隣人なり

 舘を出た主人公と客(友)が、あたりを見回して花を見、鳥の声を聴いています。2人は別れの悲しみに無言でいるため、咲き誇る花を見、ふたりの沈黙の故に聴こえる鳥の声に気持ちを紛らすしかありません。しかし、杯を交わして別れた後の主人公は、友がいなくなってからの方が友の存在を身近に感じている、そういうふうに読めます。

『万里夢同心』の歌は、1番のブリッジの部分がこの漢詩の後半をそのまま当てはめた歌詞になっています。
 訳詞は以下の通り。画面に出ている英語訳はすんごい意訳なので、中国語に合わせて訳しています。
 日本語訳で意味を知ってから聴くと、けっこう胸にジーンとくる歌です。

《歌詞の日本語訳》

『万里夢同心』歌詞全編翻訳 (訳:yoko-tzm)

果てしなく続く渭城の柳、果てしなく続く稜線上の雲。
鳴き止まぬカッコウの声、弾き止まぬ琴の音色。
 
 東の門で別れを告げて、白馬津の舘へ帰る。
 互いを知る同士に遠近無く、万里離れてなお隣人なり
 
名月に託して、優しき祝福を振り撒こう
新しい燕を遣わして、咲き誇る春の花を贈ろう
 
東から来て西へ行く旅人よ、世界の果てに離れたる人よ
山河万里も遠くにありて、近くにあるは玲瓏たるその心
同じ心が同じ夢を築けば、すべての家に春が訪れる

 

【歌唱の感想】

《ディマシュの場合》

 ディマシュは今までにこの歌を結構何回も歌っていて、公式動画にもありますが、今まではどれも、どちらかというと別れの悲しさや、やるせなさ、心残りを表現していました。

 今回は、デュエットということと、中秋のお祝いのイベントだからでしょうか、むしろ「張九齢」の4行以外の部分、特に2番の「友の門出を祝う」という晴れやかさや、友の心はいつも自分と共にあるという喜ばしい気持ちを表現したような歌い方をしています。
 1番の最初のヴァースを歌ったタン・ウェイウェイさんの声には、ディマシュの声のような「悲哀」の色がないため、ディマシュ側が合わせたのかもしれません。

 それとは別に、ディマシュが「張九齢」の詩の部分などを単独で歌う時は、声に乗っている感情や意味が音符の1音1音ごとに違っていて、それはもう、とても聴き応えがあって、引き込まれます。
 それと、ディマシュは今までも色々な民族楽器と共演してきたので、今回も3種類の民族楽器を聴きながらアンサンブルしている感じがあって、リスナーとしても聴いていてとても楽しいです。
(ずっと単独で歌ってくれんかね?と思ったのはどうかナイミツに…😅)

《タン・ウェイウェイさんの場合》

 タン・ウェイウェイさんは、日本人の歌手で言えば、誰に似た感じかなあと考えてまして、顔立ちは「小泉今日子」ですが、彼女の他の歌を一通り聞いた印象では、演歌歌手の「藤あや子」かもしれないな、と感じました。 
 見た目が美しい女性ですので分かりづらいかもしれませんが、「男唄」のほうが似合うタイプです。
 彼女の内面に、何か岩のように固いタフさがあるというか、豪気な雰囲気があって、彼女の履歴の「最後から2番目の成績で入学した音楽学校を首席卒業」がそれを物語っています。
 ディマシュの方がよほど柔らかくて女性的な感じがします🤣
 今回のような「たおやかな歌」が彼女に合ってるんだか合ってないんだか、ちと分かりません。
 どちらかというと、やっぱりタフさと粘り強さのある声だよな。
 そして、これ言っていいかどうかわかりませんが、でもそう聞こえるので言ってしまいますね。

 タン・ウェイウェイさん、ディマシュのことを歯牙にもかけてくれていません😂

 取り付く島、まったく無しです。
 彼女の旦那さんの顔を見たらわかりますが、全然お好みではなかったようです😅
 あ、わかったこの人、クルトイ氏ジュビリーのトリオで歌った時の、あのお方だ、アイーダ・ガリフリナさんだ。
 ハハハ、そりゃ無理だディマシュ君😂

 そういうわけで、表面上は非常に美しく整った歌になっていますが、内実は、なんというかもう、ふたりの世界が違い過ぎて合わないといいますか、ちょっと合いかけたのは最後のロングノートだけでしたかね?
『同行 - Join Hands』のほうがよっぽど面白かったです、スミマセンねえ、おふたりとも。


【あとで分かる『同行- Join Hands』というデュエットの良さ】

 そしてこのデュエットを聴いて、「ゴールデン・パンダ映画フェスティバル」の『同行』でディマシュとデュエットした女性歌手のウェイウェイさんが、どうして「国民的歌手」なのかの理由もわかりました。

 ウェイウェイさんは、音程や呼吸法、リズムなどの技術的な部分は、それほど厳密でも正確でもありません。
 ですが彼女の声は、非常に印象に残ります。
 切羽詰まった感情的な声というか、懸命に気持ちを表現しようとしているような真剣さを感じる声です。
 それが、ディマシュと同じように「歌に全身全霊を捧げて歌っている」という風に聴き手に思わせているようです。
(いや実際にそうしていらっしゃいますが)
 それが、聴き手の一生の持ち時間のうちの貴重な数分を、彼らの歌を聴くことに使ってしまっても、その時間を価値あるものにしてくれるような印象になっています。
 だからでしょうか、『同行』は聴いていてそれほど感動するわけでもないのに、YouTubeのお勧めに出てきたらなんとなくクリックして聴いてしまいます。
 どうしてこのふたりが国の重要なセレモニーやイベントの歌手として起用されるのか、その理由はこういうことなんだろうな、などと思いました。

 タン・ウェイウェイさんの声には、「それってあなたの感想ですよね(©ひろゆき)」という超絶に私個人の限定付きですが、そういう感触は感じません。(ファンの方々、ゴメンナサイねえ💦)
 というか、むしろタン・ウェイウェイさんにちゃんと合った曲でキャスティングしてあげてほしいと思いました。


【番組全体の感想/デュエットについて】

 番組を全部見て、デュエットで一番良かったのは、ジャム・シャオと单依纯さんが歌った24番目の歌かな。
 単独では最後のテノール歌手の張英席さんが1番良くて、2番手にデュエットの出来としてジャム・シャオ、3番手に単独でディマシュ、みたいな印象かな。
 あと、7番目の台湾人の男性歌手さんが歌った台湾民謡も良かったです。

 デュエットは、難しいですね。
 ジャム・シャオと单依纯さんのデュエットが良かったのは、ふたりの声のかすれた音が同じような周波数だったので、聴いていて矛盾を感じなかったからでした。
 もちろん歌の表現力も、ジャム・シャオは『Singer2017』の時より格段に上達していて、しかも彼は10月だったかな、彼の専属スタイリストさんと結婚してました。そういう情緒も声に乗っていたのかもしれません。もともと音に対してものすごく鋭敏な感覚の持ち主でしたが、それがより強く歌に出るようになった感じがありました。

 そして、そういう内面とか表現力は、実はデュエット自体にはあんまり関係なくて、声の周波数の種類が似ているかどうかが、かなり重要なんだなと思いました。
 
 それで言えば、ディマシュとタン・ウェイウェイさんは、声の「密度」、粘り方かな? それが違い過ぎますね。
 彼女の声の「密度」が高すぎて、他の音が絡まないというか。
 それが彼女の「取り付く島がない」感につながっているのかも。
 なので、ふたりが合っているのは音楽の技術的な面で、感覚的にはふたりの得意分野が違い過ぎたのかもしれません。



【ディマシュ、中国をいったん離れるの巻】

 9月29日、ディマシュは「福州」の空港から、(たぶん)カザフスタンへ帰りました。
 
★dimash_dears_downunderのIGより。9月29日付。
@dimash_eurasianfanclub(Weiboのオリジナル - Shixin)
投稿者「シルクロードイベントの後、福州を離れる空港でのディマシュ。
彼はどこへ飛んでいくの?? まだ誰も知らない... 乞うご期待 😀❤️」

 
★jadecheung0524のIGより。10月1日付。
Cr. 开张大吉(Douyin account)
投稿者:
「ベイビー、ついに家に帰る💖💖💖(中略)
 君は今でもあの温かくて優しい少年でした。
 君は世界最高のアイドルであり、アーティストです。
 dearsとひとりずつ握手して、みんなに手を振って、サングラスも外して、その美しい瞳に深く魅了されて、またウインクして! なんて甘い瞬間!」



 総括。ディマシュin中国2,3,4の写真を並べると……

 ★dimash_dears_downunderのIGより。10月1日付。

投稿者:
「ディマシュは、好きな色は黒と白だと自分で言っていたけど、まさにその通り! エレガントで自信に満ち、美しく…完全に彼の本領の優雅さを発揮していました。(中略)
 そう、全体として、ディマシュにとってはとても満足で充実した旅だったと思います……
 そしてdearsにとっては少し圧倒的だった。
(つまり、dearsは彼のゴージャスさにどれだけ耐えられるのだろうか!)
 私たちのプリンスは、これまで以上に歌がうまくなり、見た目も良くなっている……
 そしてこのdear(投稿者)は、これからもっともっと多くのことが起こると思うと、有頂天になっています!」


 はい、このオーストラリアのFC、dimash_dears_downunderが言う通り、もっと多くのことがディマシュとdearsに起こります。乞うご期待。

 そして、ディマシュはこの中国CCTVの番組「中秋晩会」を収録したあと、何と!
 体調を崩します。

 まさかとは思うが、まさかね🤣 (つづく)



(終了)


【注解】

(注1)  宜賓白塔山について

 『White Pagoda(白塔)のレビュー』

 宜賓白塔山風景区にある「白塔」は、明王朝時代の1569年に建てられた、6角形の円錐形の石造りの8階建ての白い建物です。高35.8メートル。
 塔の展望台からは、宜賓市と遠くの風景を鳥瞰できるので、宜賓市の景色を楽しむには最適な場所です。

(注2)宜賓夾鏡楼について

記事:「2つの水のサンドイッチになった鏡、二重橋が虹に落ちる」宜賓夾鏡楼が一般公開されています


「ミラービルディング(夾鏡楼)」百度百科事典

 古代は月を鏡と呼んでいたので、この建物を鏡の建物と呼びます。
 2つの河の合流地点にあり、金沙江の水は金を含む砂を運ぶため金色に見え、閩江の水は鏡のように澄んで青く、黄色の波と青の波が交わる地点となります。


(注3)天泉洞について 

「天泉洞」百度百科事典

 天泉洞は、宜賓市の興文石海景エリアの景勝地です。
 300万年前に形成された興文石海洞窟群の有名なカルスト洞窟です。
 その空間規模と体系的なツアーの長さは世界最規模で、多層の長廊やホール状の洞窟が長さ約5キロメートルにわたり、上下4層、大小支脈百本ほどが連なっています。
 代表的な景観として「穹廬広厦(Qiongluguangsha)」「天泉明宮(Tianquanminggong)」「潟玉流光(Xieyuliuguang)」などがあるとのことです。

★dimashofficial_fanclub(中国FC)のIGより。9月29日付。
Source: https://sichuan.scol.com.cn/m/ggxw/202309/58983728.html

 

(注4)宜賓李庄古鎮について

「宜賓李庄古鎮」百度百科事典

 古代の漁村であり、漢王朝がここに宿場を設置し、明王朝の商業と貿易の場でした。
 明清王朝の古代都市の既存のパターンとスタイル、および石造りの通りは、主に清王朝によって建設され、古代の町の中心的な保護地域は1平方キロメートル。
 2022年6月、麗荘古鎮は「2021-2025年中国建築学会科学教育基地」の支援ユニットリストに選ばれました。


(注5)宜賓流杯池公園「流杯池」 

「流杯池」百度百科事典

 北宋元年、偉大な詩人で書道家の「黄廷堅」が鎌州に住んでいた時、王羲之の「蘭亭コレクション序文」の「流れる曲がりくねった水」の芸術的概念を模倣し、石を彫刻して水を飲むプールとして「流れる杯プール」と呼びました。


(注6)李玉剛

YouTube動画:『[ENG SUB] Li YuGang & Dimash - New Drunken Concubine + Diva Dance | English Translation』 by Tempest Jun  2022/01/26
・ディマシュと李玉剛がデュエットした曲の動画。


維基百科・自由の百科事典(中国語版Wikipedia)より

 

(注解、終了)

いいなと思ったら応援しよう!