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ディマシュの立場/ New Vision ForumとウクライナFCの動向について、私見


 スミマセン、投稿期間がちょっと空いてしまいました。
 その理由はですね、ちょっと「旅」に出ておりまして……。
 ええっとですね、PS用TVゲーム『エルデンリングDLC』っていう架空の国に、ですね🤣
 まだ旅は終わっていないのですが、ディマシュに関係して素晴らしいインタビューとともに、ちょっとショックな出来事が起こったので、それについて私個人の私見を整理するために、この記事を作成しています。

 ショックな出来事とは、ロシア・ウクライナ紛争に関することで、ウクライナのFCの動向についてです。
 もしも、こういった現実的なことを知りたくない方は、ブラウザバックしてくださいね。
 ただし、私個人は基本、ディマシュの立場を理解するものです。

 今回はその「ディマシュの立場」についてです。

(7月16日付【ディマシュの立場とは】に追記あり)


(Dimash 58)
(10,898文字)
(第1稿:2024年7月9日)





【「New Vision Forum」の記事一覧】

 2024年6月27日から29日にかけて、カザフスタンのアルマトイ市で「New Vision Forum」というイベントが開催されました。
 ディマシュは最終日の29日に登壇し、インタビューを受けました。

 以下はその時のYouTube動画(公式)と、数本の記事のURLです。


★YouTube動画『Dimash interview at the New Vision 2024 forum, Almaty』
By Dimah Qudaibeegen(公式) 2024/07/02


★"Kazinform"International News Agencyの記事
『「カザフスタンの若者たちに道を切り開きたい。それが私の究極の目標です」と、ディマシュ・クダイベルゲンはニュー・ビジョン・フォーラムでのインタビューで語った』


★DimashNewsの記事より
『カザフスタンの文化の台頭:ディマシュがニュー・ビジョン・ビジネスフォーラムでパフォーマンス』



 上記のインタビューの英語翻訳版では、省略や誤訳が多かったため、以下の個人サイト様「nala-in-irvine」で、詳しい修正版を読むことができます。

★ @nala-in-irvine(Abemaブログ)
『〖修正版〗Dimash、〖New Vision Forum〗 インタビュー 2024.06.29』




【インタビューの要約】

 以下は、ディマシュのインタビューの重要箇所を要約したものです。
 全編については、公式YouTube動画でご確認ください。

🌷🌷🌷🌷🌷

・(ディマシュは、カザフスタンの詩人アバイの言葉である、「全ての金が輝くわけではない。だから我が道を見極めよ。才能があるならそれに誇りを持て。人生に自分の居場所を見出すのだ」を引用し、)
 この言葉は、自分のクリエイターとしての道、そして自分のリスナーへの責任をあらわしています。
 自分に与えられた才能を、世界の人々のために使いたいと思っています。

・自分には大きな夢があります。
 そのひとつは、国と国との間の文化的・外交的交流、そして団結と友好関係を強くするすることです。

(ここまでひと通り話した後、司会者が「あなたを素晴らしい歌手だとは思ってましたが、スピーチも上手だとは知りませんでした、本物のカザフの男ですね」と褒め、それを聞いたディマシュが照れちゃって、司会者の腕を軽~く叩いていました)

・世界中で一番話されている言語は「音楽」です。
 この芸術を「武器」としている音楽家は、次の世代の人間の精神的な糧を創造する責任があります。
 アーティストは間接的ではあっても、若い世代に影響を与えるからです。

・直近のコンサート(ブダペスト2024)では、世界の約80カ国からファンが来てくれました。
 様々な人々が一堂に会したことは、言葉では言い表せないほど感謝の気持ちでいっぱいです。

・アメリカの哲学者トマス・ペイン(注1)はかつて「国は私の母であり、私の信念は 良いことをするためにある」と言いました。
 僕は祖国を愛しているし、人を国籍や宗教、言語、人種で区別はしない、ということを強く言っておきたい。

・智慧というものは、自分の行動に責任を持ち、周りの人に優しくし、良い人間関係を築く能力のことです。
 それは人間の内側深くにある叡智です。

・我々の祖先は独立のために戦い、豊かな文化的財産や領土や富を残してくれました。
 我々は「良き隣人」であり、広い心を継承していることを証明しなければなりません。

・(カザフの著名な作家であり詩人であるスルタンマフムート・トレイギロフの言葉を引用。)(注2)
「自分の生まれながらの言語を愛しなさい。揺り篭の中で聴いた、子守歌。ドンブラの音色、空に向かって歌う草原の緑。母が読んでくれた神話。生まれながらに持った言語を愛しなさい。初めて話した言語を愛しなさい。
(以下略)」

・(カザフスタンの芸術や文化の発展を鑑みるような計画はあるかという質問に対して)
 近い将来、大きな計画があります。
 自分の名声がピークの間に、カザフスタンの若い世代が国際的に活躍するためのマネージャーや有名なエージェントの会社を紹介する手助けをしたいと思っています。

・若い世代には、自分の業績を一例として、自分を追い越して欲しいと思っています。

(このあと舞台のスクリーンに『OMIR』のMVが映され、昨年亡くなったお爺様の写真が出て来た場面を見て、つい涙ぐむディマシュ)

・(映画監督をするという噂についての質問に対して)
 自分には映画監督をする才能はありません。
 ですが、自分の音楽やパフォーマンスは常に自分でプロデュースしてきました。
 もちろん信頼する専門家やプロの意見も聞きますが、最終的には、自分が歌いたいように歌います。

・世界の情勢不安も懸念しています。
 25歳から3年かけて書いた曲は、自分で脚本を書きました。
 自分が気にかけているのは、人々が無謀であるということです。
 文化的な違いがあっても、お互いに調和するべきですが、実際には国籍や言語や人種で区別されています。
 少数の力を持った人間によって、多くの国が犠牲となっています。
 子供達の未来のため、世界の未来のために、自分のプラットフォームを使って、全ての人が理解できる平和についての曲を書いたのです。
(ここでワンスカイのMVが流されました)
(インタビューは以上)

🌷🌷🌷🌷🌷

(注1)トマス・ペイン
イギリス出身のアメリカ合衆国の哲学者、政治活動家、政治理論家、革命思想家。1737年1月29日[1] ~ 1809年6月8日。著作『コモン・センス』によりアメリカ独立の機運が高まり、著作『人間の権利』はフランス革命の理念となった。


(注2)スルタンマフムート・トレイギロフ
 カザフスタンの著名な作家、詩人。1893年10月29日~1920年5月21日(26歳で没)。13歳の時に初めて詩を書き、1913年、20歳でカザフスタン初の雑誌『アイカプ』の副編集長を務めた。1933年、彼の死後に発表された小説『美のカマール』は、最初のカザフ語による小説の1つ。



【ディマシュ本人による、彼が何を人々と分かち合いたいと思っているかについて】

 以下のインスタの投稿文が、私の私見をかなり具体的に代弁してくれているので、掲載します。

★@dimash_dears_downunder 7月7日 Video edit cr: @dear.sharly


・投稿者の投稿文より。

『これは、ディマシュがどれほど私たちに、彼が歌うときの感情を感じてもらいたいかを示す美しい要約です。彼は何度も、自分の声域は自分にとってあまり重要ではないと言っています。
 しかし、これ(声域)が最初に私たちの多くを驚かせたのです。それは彼の「名刺」ではないでしょうか...…多くの人が彼に惹かれ、もっと聞きたがる理由です。

 中国のあるテレビ番組(注:Singer2017)で、彼は病気のために歌えず、高音は重要ではなく、感情の表現に過ぎないと言おうとしていたのを覚えています。
 彼の友人のひとりが、ディマシュは自分ができること(つまり「高音を歌う」こと)をもう見せなくて済む時を待っていると、何気なく言っていたのを覚えています。

 そして、ディマシュが「自分にとってそれは重要ではない」と言った時、彼は本当にそう思っていると思います。彼は他のほとんどの男性歌手ができないことができることを常に知っていました。彼は常に彼に与えられた声域を最大限に活用してきました。
 しかし、それは彼にとって重要なことではありません。
 彼の願いは一貫して自分の心を分かち合い、彼が感じていることを私たち全員に感じてもらうことでした。
 そして彼が感じているものは何でしょう...…
 それは本当に、愛です。
 彼は愛を感じています。
 それは平和と団結への彼の願いの根底にあります。
 それは、子供たちやDears、そして彼の道を横切るすべての人々、彼らが誰であろうと何をしていようと、彼らとつながることが、彼の願いの核心にあります。

 彼は常に一貫しており、メッセージが揺らぐことはありませんでした。
 そして、愛が彼の道を導き、彼のあらゆる願いを燃え立たせています。
 彼の中に種をまかれ、根付き、今や彼を通して世界で花開いているのは、愛です。
 私はまた、彼の「中にある何か」、彼の心、彼の導きの光を信じています。
 彼はとても知的で思慮深い人で、今では権力と影響力のある人々と交流しています。
 しかし、彼が分かち合いたいのは自分の心であり、分かち合いたいのは愛であることを彼は知っています。
 彼は、自分の声を聞くすべての人が感動し、感じ、彼らの中に宿る共感を引き出すことを望んでいます。
 それが本当の影響力であり、本当の力です...…そしてディマシュは、それをどう使うかをよく知っています!』
(投稿文、以上)


【フェイスブックにて、ウクライナFCの動向】

 その発端は2024年7月3日、カザフスタンで「上海協力機構(SCO)」が開催されたことでした。

★CNNニュースより
「 中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は3日、同日から始まる上海協力機構(SCO)の首脳会議に出席するため、中央アジア・カザフスタンの首都アスタナを訪問した。
 両氏は今年2度目となる首脳会談も行う予定。
 今回の首脳会議では、ベラルーシの加盟が正式に決定されるとみられている。
 インドのモディ首相はSCOの方向性について一部加盟国が不安を抱いていることを指摘し、この会合を欠席する。
 SCOは2001年、テロと闘い、国境警備を強化することを目的として中国、ロシア、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンによって設立された。同機構は、中国とロシアが米国の「覇権主義」と見なすものに対抗し、国際的な体制を自分たちに有利に作り変えるという共通の野心に沿って近年成長している。」


 ディマシュは次の日の4日、インスタにて、
「昨日は、中国とカザフスタンの兄弟国の指導者の前で演奏しました。」
と投稿。
 またkazinform_kz(カザフのニュースサイト)も同日インスタにて、
「カザフスタンを訪問した習近平国家主席がトカエフ大統領とともに、カザフスタン文化と歌唱を促進している名オペラ歌手マイラ・ムハメドキジーとディマシュ・クダイベルゲンの公演を鑑賞。アーティストで歌手のマイラとディマシュの才能を楽しんだ。」
と報道していました。

 ここで問題が発生しました。

 FacebookのウクライナFCが、ディマシュに失望したとして、ディマシュに関する投稿を止めると宣言したのです。
 どうやらディマシュがプーチン大統領の前で演奏したと思って、このような発言になったようです。

 ディマシュはインスタでも言っていたように、「上海協力機構(SCO)」の初日に「首脳」の前で演奏しましたが、実は「プーチン大統領の前で演奏した」とは書かれていません。

 以下にその時の記念写真があります。

★@kazinform_kzのインスタより 7月4日付

 

 写真の真ん中にカザフスタンのトカエフ大統領と中国の習近平国家主席がいて、その両脇にディマシュとマイラさんがいますが、プーチン大統領はいません。

 私は最初、「架空の国」を旅していたこともあって、この頃のディマシュの動向をあまり知らずにそのFCの投稿を読んだため、理由が把握できずにちょっとショックを受けました。何が起こったんだろうかと。
 それがこの「上海協力機構」での出来事に由来するとわかり、ショックというよりも、疑問が湧きました。


 ウクライナのFCの気持ちは、非常によくわかります。
 5年も愛し続け、ディマシュの活動を支えようとしてきたのに、ディマシュはウクライナを蔑ろにした、という気持ちなんだろうな、と。
 ある意味、「恋人」が自分の今の境遇を全く意に介していないかのような行動をした、と失望して怒ってるんだろうな、と。

 以前、ディマシュがどこかの国のライブでのスピーチ中に、ロシアの国名は言ったのにウクライナの国名は言わなかったとして、ウクライナのファンが怒ったという話を聞いたことがありました。
 それと同じような事かもしれません。

 いやー、それを言ったらさー、日本のファンなんてライブ中にディマシュから「ジャパン」って言ってもらうことなんてないんだけどなー。
 ま、それはともかく。

 

【 「戦争」の心理的被害】

 これは、「戦争」による人々への心理的な被害の一種だろうと思います。
 普段の状態なら、ディマシュがへたっぴな英語で喋ってる時、ものすごく苦労して彼が頭の中で英語を組み立てている間に、どこかの国名を言うのを失念したとしても、たいして気にも留めないかもしれません。

 しかし、現在のウクライナの人々は、おそらくですが「戦争」というフェイズによって彼らの人間関係を強制的に「敵と味方」に分断されています。
 そして、それ以外の「灰色」、あるいは「どっちでもない」立場の人々を受け入れられなくなっているのではないか、と。

 おそらく、「ディマシュがプーチン大統領の前で演奏したかどうか」が問題ではなく、彼が「ウクライナの味方である」と明確に発言しないことへの不満なんだろうな、と。

 しかしそれははたして正当な要求なのだろうか、とも思うのです。



【ディマシュの立場とは】

 では、肝心のディマシュの「立場」を見て行きましょう。

 ディマシュの生まれ故郷であるカザフスタンは、国土面積272万4900平方キロメートルと、国の広さでは世界第9位に位置する国で、世界で最も広い「内陸国」です。
 日本の国土面積が約37万8000平方キロメートルですので、カザフスタンは日本と比べて約7倍の広さを持っています。

 しかし、その人口密度は世界でも低い国のひとつであり、1平方キロメートルあたり6人以下。
 カザフスタンの人口は、約1900万人です。(2022年調べ)
 この人口は、東京都の約1400万人に、千葉県の約600万人を合わせたよりも少ない人数です。
 ちなみに、日本の人口密度は1平方キロメートルあたり約340人。
 カザフスタンの56倍だよ。

 この約1900万人という、思った以上に少ないカザフスタンの人口の中で、ディマシュは一体どういう立場にいるのでしょうか?

 彼ほどの育ちの良さ、品行方正さ、マルチな才能、若い男性であること、そして世界的な名声を持った人物が、カザフスタンにもう一人いる可能性はあるでしょうか?

 個人的には、無い、つまり、いないと思います。

 カザフスタンがもしも日本と同じくらいの人口だったら、もう2、3人は居てもおかしくはないとは思うのですが。
(もしもフィギュアスケート選手のデニス・テンが今も生きていれば、とも思いますがね)

 そういう国にとって、30歳という若くて有能で、国境を越えて活躍しているアーティストの立場は、いったいどんなものなのでしょう。

 ファンのみんなが口々に言っている「カザフの王子様」
 それが本当に彼の「正しい立場」なのです。
 個人的には、日本風に言うと「皇太子」のような立場なんじゃないかと考えています。

 西洋占星術で見ると、ディマシュは、故郷のカザフスタンと非常に強く、ほとんど「呪い」と言ってもいいほど強く結びついて生まれています。
 彼の才能は、カザフスタンのアクトベでなければ生まれ得ず、カザフスタンの中で育たなければあの才能を開花させることは出来なかったでしょう。
 しかし、逆にカザフスタンに生まれたことで、彼の音楽活動はかなり制限を受けています。
 そして、彼の人となりの素朴な、ある意味で高貴なほどの素晴らしさ。
 これが、彼を国家と強く結びつけてしまっています。
 彼のこの人となりによって、どの国でも国賓を迎えた時に彼らをもてなす「政治的にフリーな立場にいる、国の親善外交官」の役割を、ディマシュは果たさなければならない立場に立たされてしまっているのです。
 そしてそれが出来るのは、おそらくカザフスタンには彼一人しかいないのです。

 もしもディマシュが「才能はあるけど酒も麻薬も女もやり放題の不良で、鼻持ちならない驕った人格の男」だったら、国家が親善外交官として目をつけることは絶対になかったでしょう。
 しかし幸か不幸か、彼はそういう人間には育ちませんでした。
 そして彼はその高貴さから、「New Vision forum」で語ったように、自分の国を一流国にしたい、自国の役に立ちたいと真剣に願っています。
 これは、彼の生涯にわたる「目標」です。
 なぜなら、かれは「カザフスタン人」だから。

 また、ディマシュは「人を国籍や宗教、言語、人種で区別はしない」とも言っています。
 これは、彼が「カザフスタン人」であることを誇りに思い、国に貢献しようとする気持ちと矛盾するのでしょうか。

 しません。

 彼が「区別しない」と言っているその内容は、「それらの事実で人々を敵と味方に分断はしない」ということなのです。
「上海協力機構」のコンサートに、もしプーチン大統領がいたとしても、彼は歌ったでしょう。

(追記 7月16日付
 どうやら以下の動画が、「上海協力機構(SCO)」の晩餐会での演奏風景のようです。途中、プーチン大統領が映ります。でも、ディマシュに選択権はないし、上で書いたように、それでもディマシュは歌ったわけです。それが彼の思想に基づく行動なのですから。)
★@khabartv.newsとkhabartv 7月4日付
『SHIサミットに参加するためにアスタナに来た国家および国際組織の首脳がディナーコンサートプログラムを見た』


 ディマシュが『ストーリー・オブ・ワンスカイ』のMVの最後に引用した『アブダビ宣言』。

「対話、理解、寛容と他者の受容、人類の共生を目指す文化の普及、これらは人類の大多数を悩ませている、経済、社会、政治、環境の多くの問題の解決に大いに貢献するはずです」

  ディマシュは、「敵」であっても対話をする必要がある、と言っているのです。
 それが本質的な「対話」だからです。
 それが、ディマシュが人々と分かち合いたいと願う「愛」なのです。

 カザフスタンはロシアと国境を接し、他にも関係が難しい国々と接しています。カザフスタン政府は、何としても自国を「戦争」に巻き込みたくはないでしょう。どの国でも、それは同じです。
 だから「外交」は非常に重要で、「対話の窓口」は常に開けておかなければならないのです。

 ディマシュもまた、これまで否応なく政治の舞台に引っ張り出された経験から、「対話」と「外交」の重要性を痛感しているのだろうと感じます。



【ディマシュに出来ないこと】

 今日(日本時間7月9日)、ウクライナの首都キーウ(旧キエフ)や、オデッサ、ドニプロなどの各都市がロシアの大規模なミサイル攻撃を受けたというニュースが入ってきました。
 ウクライナのFCには、本当にお気の毒なことと思っています。

 しかし、だからといって、彼ら彼女らがどんなにそれを望んでも、ディマシュをウクライナの「味方」にすることは出来ません。
 なぜなら彼は第一に「カザフスタン人」であり、他国の味方をすることは、彼の「カザフの王子様」という立場上、出来ないのです。

 さらに言えば、ディマシュにはディマシュ自身が運営する「公式のFC」は存在せず、すべてのFCが「公認」であり、要するに「自発的に活動するボランティア」です。
 ボランティアは、見返りを求めて遂行するものではありません。
 たとえそのFCの国が他国に武力で攻め込まれても、ディマシュがその国を特別扱い、つまり「贔屓」することは出来ません。
 それをしてしまうと、自発的なボランティア精神と友愛で成り立っている世界中の彼のFCが大混乱を起こしてしまいます。
 今現在、ディマシュがウクライナFCを通してウクライナの味方をしたら、ロシアのFCとロシア人のファンの立場はどうなるの?
 ディマシュに、彼らを切り捨てろって言うの?
 それは違うだろ?

 だからディマシュは、ライブなどのスピーチでは、ものすごーく慎重に、しかも慎重すぎて時々大ポカをするけど(英語だから許して)、どこのFCにも肩入れしないような発言と行動をしているように見えます。
(ハーレムの運営は大変なんだぜ……、いえ冗談です🤣)

 でも、それでいいのです。

 それが「カザフの王子様の責務」なのです。

 どこぞの国の「皇太子」が(その皇太子は天皇になられたけど)、国賓がどこの国の誰であっても敬意を持って歓迎するように、ディマシュは「愛」をもって彼らに歌を歌う、それが彼の仕事なのです。

 たとえそれが彼にかけられた強い「呪い」であったとしても、ディマシュはそれを真正面から受け入れており、自分の責務を全うしようとしているのです。
 大変な勇気と忍耐力の持ち主です。
 彼は本当に、稀に見る「本物の男」だと思います。



【私見まとめ:戦争という病】

 ディマシュがウクライナとウクライナのDearsを案じていないはずはありません。
 ただ、それを明確に話すことは、立場上、彼にはできないだけです。
 でも、彼がライブで「戦争反対」について語る時、ロシア・ウクライナ紛争が彼の頭にあること、両国で戦争被害を受けた人々を想定していることを、はっきりと感じます。(もちろん他の紛争も彼は想定しています)

 にもかかわらず、ウクライナのFCの人々が、あれほどあからさまなディマシュの「愛」を信じられないこと。

 それ自体が、戦争が人々にもたらしてしまう最大の被害であり、戦争とはすなわち人類を分断する「病」なのです。



【ディマシュの聡明さが持つ哀しさ】


 それにしてもですよ。

 今回の「New Vision forum, 2024」でディマシュが話している動画を見て、非常に安堵しました。
 私は彼のファンになった時から、このシンガーはこういうことを考えながら音楽活動をしていそうだなと憶測(ていうか妄想)していましたし、同じニュアンス的なことは過去のライブ中やインタビューで、彼もよく話していました。
 しかし、本人の口からこんなにはっきりと「カザフスタンに貢献したい」と言っているのを聞くのは、もしかしたら初めてでは?
 しかもディマシュは、「音楽家は次の世代の人間の精神的な糧を創造する責任がある」「若い人たちに追い越されたい」とまで話しています。
 驚きました。ホントに君は私が妄想したとおりの人物だったのか、と。

 さらに、途中で掲載したDearのインスタ投稿文にあった、
「彼は、自分ができること(高音を歌うこと)を、もう見せなくて済む時を待っている」
と、友人が語っていたという話。
 この子はそこまで見越して生きているのかと、これも驚きました。
 彼の高音は人生の前半期を彩る「子供の声」で、これは普通、大人の体が完成した時には本人にはもう必要なくなり、フェイドアウトしていきます。
 実を言うと私も、あの高音が出なくなってからの「彼の本来の声」の出現を待っているところがあります。
 でも、本人がそれをきちんと自覚しているとは。
 彼も声楽の専門家だから当然の判断ではあるけれど。
 この「高音」に関する彼の自覚と、「後輩に追い越されたい」とすら願う彼の「聡明さ」が、私には少し哀しくて、だからこそ愛おしいのです。

 ディマシュは私にとって、現在の世界では珍しく「まともな人」です。
 まともというか、自分を非常に冷静に客観視しているというか。
 それはもしかしたら、祖国にがんじがらめの状態が彼にもたらす視点なのかもしれません。
 私は今回のインタビューを見ながら、彼はカザフスタンの歴史上、音楽家としてだけでなく、歴史の教科書に載るような「偉人」になるんじゃないかと感じていました。


【おまけ: 「架空の国」を旅してわかったディマシュの本当の能力】


 そして、彼を発見できてホントによかったと思う今日この頃。

 というのもですね、現在旅している「架空の国」、つまりTVゲームの『エルデンリングDLC』が、なんかもう異常に難しくて、面白いんですけど、終始緊張しまくっていて、ゲームを終える時には「面白かった」よりも「疲れた」ってつぶやいて終わるような状態です。
(このゲームを開発した会社とはディマシュより長い付き合いなので、そこは赦して下され😂)

 で、ですね、ゲームを終えた後は一番にディマシュの歌を聴くのですが、これがもう、効果抜群絶大なのです。

 まず、緊張した筋肉が緩みます。
 そして、お腹に溜まっていた緊張による「ストレス」(なんか濁ったナノレベルのつぶつぶみたいなもの)を、ディマシュの声の振動がふ~んわりとまとめてからめ取ってしまい、その声が通り過ぎるのと同時に、声にからめ取られた「ストレス」が体の外へ出て行ってしまうのです。
 そして、ゲームをしていた時とは全く違う、ぽよーんとした心理状態で、ストーンと安眠できます。

 これは凄い、と思いました。

 ディマシュの歌が凄いことは知っていましたけど、身体的にこれほどの「効果」があるとは。
 実は彼の歌を聴き始めてすぐに私の長年の「不眠症」が治っているのですが、治った時には無自覚だったので、今回その「効果」をやっと実感したって感じでして。
 実感しすぎて、歌を聴くのがもったいないくらいです。
 でも聴くけど(笑)

 そして、今回書いたようなディマシュに関するネガティブな出来事が起こったとしても、当のディマシュの歌を聴いている時には、そんなことすっっかり忘れて幸せな気分になってるんですよね🤣

 そういうシンガーで、そういう男だったんです、ディマシュって。


(終了🌷)


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