【文献から】産業理学療法のポイントは「筋力強化」と「人間工学」
こんにちは。
産業理学療法で社会と理学療法をつなげたいyokoです
理学療法士は「身体の悩みを、動いて治すことが得意な専門家」です。
★★
今回は産業理学療法をおこなった結果についてのレビューの文献を読みました。
理学療法を職場で行うことに効果があるのか?というテーマで文献レビュー、システマティックレビュー、メタアナリシスを紹介しているものです。
(私のテーマにはドンピシャ!見つけて嬉しくなってしまいました。)
以下に文献の記述で私が気になったところを抜粋します。
番号は文献内のreference(参考文献)の番号です。
文献レビューにおいて
10)ワークステーションの修正、人間工学教育、姿勢訓練、治療的エクササイズは、労働者の痛みや障害に対して短期的なプラスの効果のみ見られた
システマティックレビューにおいては
29)
職場において、身体運動がプラスの効果をもたらすという中程度のエビデンスが示された。この領域では、職場の筋力トレーニングのポジティブな効果に関する強いエビデンスがあり、これは高い統計値を有していた。人間工学については、限られたエビデンスしかなく、参加型人間工学、多面的介入、ストレスマネジメントについては、効果がないとの強いエビデンスがあった。
30)
筋骨格系疾患(:整形外科で見る疾患のこと:以下MSDと訳しています)への介入策において、否定的な結果は見つからなかった。職場で筋力トレーニングを実施することで、身体的に厳しい職場環境にある労働者のMSDを減らすことができると結論付けた。特定の介入を特定するために、より質の高い研究を行う必要がある
理学療法による人間工学的介入がコンピューター作業者に行われた場合、上肢、下肢、脊椎領域における業務上の負傷が統計的に有意に減少することが示された。これらの研究の主な限界は、人間工学的介入の長期的効果を調査する研究がないことである。
9)
理学療法による人間工学的介入とワークステーションの修正は、ワークステーションの修正のみと比較して、上肢の痛みと傷害を減少させるのに優れていることを示す中程度のエビデンスがあると結論付けた。
16)
著者らは、人間工学的介入は、ヘルスケア部門に対して製造業・倉庫業で費用対効果が高いと結論づけた。
★★
ここからは文献読んでの私の感想です。
産業理学療法は高いエビデンスが認められる、つまりどんな環境下でもどんな人でも効く、という記述は残念ながら少ないです。
しかし、その中でも筋力強化には強いエビデンスがありました。
そして人間工学的な介入やそれに基づく職場環境の設定は、短期的ならば効果が出ていました。また、上肢・脊椎には中等度に効果が認められていたり、文献によっては下肢にも効果が出ていました。
また、人間工学的アプローチは製造業・倉庫業にも効果が高いという報告がありました。
仕事の内容として、重量物の持ち上げや大きな動きを伴う仕事に対しては、身体に負担の少ない運動の仕方を伝えること自体に効果があると推察されます。
思い返してみると、仕事がPC作業で痛みが出ている患者さんの場合は、積極的なストレッチや体幹の練習をした患者さんで効果が上がった記憶があります。
こういう姿勢がいいですよ、肘の角度はこれくらいで、という指導をして環境を整えてくれた患者さんもいたのですが、長い目で見るとあまり効果がなかった・・・
逆に製造業の患者さんの場合は、スクワットだったり、ものの持ち上げの際の頸部や肩周りのトレーニングをしっかりやり込んだ患者さんに結果が出たことを思い出しました。
この論文の内容と、私の臨床感を照らし合わせると結構似ているな、という印象です。
一方でまだまだ研究の質を上げる必要性を訴える記述が何度も出てきました。
産業理学療法は、より精度の高い研究が求められています。
研究の最先端は、臨床現場。
普段の整形外科の治療で、もっと患者さんの種類や内容を聞き込んで、効果のあるアプローチや傾向性を見つけていきたいです!
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これからも産業理学療法と理学療法士が、社会に必要とされるために、いろいろな視点から情報発信をしていきま
思うところがありましたら、コメントなど頂けると嬉しいです。
参考文献
J. Prall, M. Ross:The Impact of Physical Therapy Delivered Ergonomics in the Workplace: A Narrative Review,Indian Journal of Physiotherapy and Occupational Therapy,2021,DOI:10.37506/ijpot.v15i3.16160