PATCompanyグッド・イブニング・スクール感想② 若林先生と周りの関係について

12/17 夜公演配信を観て、若林先生とその周りの関係について考えたことの記録です。ピンボケかもしれませんが、物語を自分なりに噛み砕きたくて考えてみました。


▼ワカと生徒たちの関係について

一幕時点では若林は生徒たちへの愛をもてていなかったと思う。行動の目的は生徒の成長ではなく、自分が認められることだったから。生徒のことを見ているようで父のことしか見てない若林。

なのに生徒たちが彼を「ワカ」と呼び、歩み寄ってくれたのは何でだろう。
多分、彼らは今まで「諦められてきた」人たちだから。
真田先生が語っていた「夜間クラスの先生は嫌になってすぐやめちゃうんです」というエピソード。誰かを殴って中退に追い込まれたのであろう源さん。パチンコやめられなくて人を裏切って居場所をなくしてきた福ちゃん。
ワカが(本当の理由はどうあれ)、諦めずに自分たちと向き合って頑張ってくれたことが嬉しかったのかな。

それが最後にやっと双方向の矢印になれそうで、そういう兆しの中で終われてよかった。
あの苦しみのシーンを経て、ようやっと若林先生の目にしっかりと生徒たちの姿が映った気がした。

「最初の20年頑張ってこなかった連中が楽しそうで、悔しくて悔しくてたまらない。」「でも今は羨ましくて羨ましくてたまらない。」っていう台詞の、まだうまく気持ちが処理できない青い感じ。
生徒たちだって最初の20年「なにも頑張ってこなかった」わけじゃない。「頑張る」とは必ずしも「勉強を詰め込む」って意味ではないし。
終盤の彼はそのこと(彼がとらわれてきた「頑張る」という言葉の狭さ)に気付きかけているのかな~という感じがしました。

これからの若林クラスはどうなっていくのかな。きっと自由な生徒に振り回されるワカという構図、表立ってのわちゃわちゃ感はあまり変わらないんだろうけど…笑
生徒たちへのある種の尊敬が生まれたら、ワカはどんどん柔らかさと深みをもった素敵な大人、素敵な先生になっていくんだろうな~。楽しみですね。

でもそんな風に彼の人生が変わったのは、はじめに他でもない彼自身が「諦めない」という選択をしたからなんだなとふと気付く。
それが生徒たちを動かし、自分の考えも動かし、未来も動かした。
ちゃんと自分の力で切り開いたワカ。それってすごい。神童ではなく平凡な子どもだったのかもしれないけれど、充分なのではないかなあ。
きっとワカのお父さん、喜んでくれるだろうな。

「諦めない」も今作のテーマですよね。
作品のあちこちに諦める、諦めないってワードが散らばっていた気がします(帝のくだり、福ちゃん&ミキちゃんの会話、魂消るの話など)


▼若林と父について

「最初の20年頑張ればあとの80年は順風満帆に過ごせる」って教えをしている時点で、えーっ……って思っていたんですが、ワカが付け足していた「最初の20年を頑張らなかった者があとの80年で苦労をするのだ」「だから我々教師がいるのだ」「その後の80年苦労させないために。そして生徒の人生に思い出という一生咲き続ける花を添えるために」を聞いてちょっと安心。
単に勉強(学歴)第一主義!と思ってるタイプの先生とも違うのかなと思えて。ちゃんと生徒自身を見ている感じもして。
ワカは頑張る=品行方正、勉強熱心と解釈しているみたいだけど、お父さんのいう頑張るってそういう意味じゃないんじゃないかな~
お父さんがその言葉をどういう意図で言ったのかは想像するしかないですが、ワカが思っていたように「品行方正にすごし勉強を頑張っていい学歴、いい仕事につけばあとは安泰」というのは違う気が……教師やってる人はんなこたないとわかってると思うので…

若いうちに色々悩み経験する(=頑張る)ことをしておけば、その先に苦労や困難が待っていても胸をはって「順風満帆だ」と言い乗り越えられる強さが身に付く。って意味だろうか?お父さん、どこまで分かっている人だったのかな…

父からの手紙を読んだワカ。こんなこと言わないでほしかった、というくらいだから、彼が父の姿から感じ取っていたメッセージは全然違うものだったんだろうな。
ただ幸せを願ってくれる優しい言葉は、父が年を重ねて変わっていった結果なんだろうか?
それともはじめからそういう思いがあったのに、親としての見栄や期待が邪魔してしまったんだろうか。
それとも、ワカ自身が父の言葉に変なフィルターをかけてしまっただけ?

考えても本当のところは分からないけれど、私が思った父親像は「子の幸せを願いながらも、期待(欲)のために傷付けてしまってきた人」かなと。
立派な先生をやっている親御さんだっていち人間。どんな立派で素敵な考えの人でも、ふとした一言や些細な行動で人を傷付けてることってあると思うしそれが普通だと思うんですよね。ワカが感じたように、確かにお父さんは息子に失望したし、その表情をわざとではなくても見せてしまったんだろうなと想像しました(ただ、「出来損ない」とまでは言っていないだろうとは思う)。ついぽろりと。

夜間クラスの生徒や若林自身だけでなく、ワカが目標としつづけた父親でさえも、完璧でない人間らしさをもっているっていうのがGESの人くささ、愛らしさのようにも思いました。
(GESには悪人もいないし聖人もいない、皆それぞれがいい塩梅に人間らしい傷がある感じがいいなと思っています)
ただ亡くなってしまうまでその誤解が解けず、言葉の解釈がすれ違ったままなんだとしたら、悲しいほどコミュニケーション不足だったんだな若林家…。脳内では物語冒頭からあんなに話しかけていたのにな…
大好きで憧れすぎて遠かった父親。その憧れの大きさと、諦められて見捨てられたときの忘れられない恐怖心が邪魔していたのでしょうか。せつない。


最後、ワカが父に自分で決めたことを宣言するシーン。
自分で導いた答えは父の教えとは少し違っていた。でもそれは父を否定することとイコールではなく。
物語の最後にやっと父と和解することができ、ここからやっと彼自身の人生がスタートしていくんだな。
「夜明けを待つ学校」というフレーズにふさわしい、明るいラストだなと思いました。素敵な作品をありがとう。


こういう重さも抱えつつ、コミカルでチャーミングな笑いで作品全体をコーティングしているグッド・イブニング・スクール。とっても可愛く、いとおしさのある作品でした。
そしてまさかの次回作発表!!さすがのスピード感に笑いました。最高ですね。振り落とされないように頑張って走ってついていきたいです。頑張れパトカン!

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