どこに住むか? 問題!
今年はもうアイリスが咲きました。桜前線があっという間に駆け上がる2021年の春。今日は東京や静岡では夏日になるとのこと。びっくりです。先週予告したように、今週は「どこに住むか」問題を取りあげます。
before コロナとwith コロナの今
あと数日で新年度も始まります。新社会人、新入生として移動する方も多い引っ越しシーズン。「会社や学校の場所を中心に住むところを検討する」これがbeforeコロナのnormalだったと思います。
一方、withコロナで「自分・家族にとって暮らしやすいところを検討する」という人も出てきています。リモートワーキングというnew normalによって、住む場所の選択の幅がぐっと広がったからです。
住む場所は、キャリアデザインにとって重要な要素です。プロティアンの「キャリア資本」の視点を援用して、「どこに住むか?問題」について考えてみたいと思います。
「どこに住むか」を「キャリア資本」の視点で考える
(1)ライフスタイル:「ビジネス資本」に関連して
ライフスタイルから考える。これは誰にとってもわかりやすい視点でしょう。「生まれ育った場所に帰りたい」「趣味のサーフィンを楽しめる海の近くに住みたい」「いい飲み屋が多い昔ながらの下町に住みたい」「都会のアーバンライフを満喫したい」「とにかく会社の近くがいい」…などなど、毎日の暮らしの中で自分が優先したい事項をまず考えて、候補地選びをします。自分がしたいこと(学びたいこと・続けたいこと・挑戦してみたいこと)という意味では、キャリア資本の「ビジネス資本」に近いといえるでしょう。自分に何ができるのか、あるいは、何を得ようとしているのかという視点です。
(2)自治体のサービスや財政状況もチェック!:「経済資本」に関連して
とはいえ、何の縛りもなく住む場所を自由に決められるかというと…賃貸であっても、購入であっても経済的な問題は避けて通れません。身の丈に合った家賃やローンの支払いを考える必要があります。これについては、みなさん自分事として、しっかりと確認する人が多いことでしょう。リモートワークにより、都会の給料を得ながら生活費の安い地方に住むという選択肢が生まれて、その恩恵にあずかる人もいそうです。
ただし、新しい場所に移る場合、自治体のサービスや財政状況もきちんとチェックをしたほうがいいと思います。たとえば、自治体によっては子どもの医療費が全て無料になったり、過疎地では移住者に格安家賃で空き家を提供してくれるところ等もあります。一方、そういったサービス面でだけでなく、将来的なリスクも視野にいれましょう。たとえば、夕張市のように財政破綻した自治体の場合、住民税が超過課税になることがあります。日本はこれから人口減、かつ、社会保障費がかかる高齢者比率が高くなっていく状況なので、自治体によっては茨の道しか残されていない場合もあります。また、「これまで安泰だったから」と、将来についてあまり考えない従来通りのやり方を踏襲しているだけのところもあります。踏襲だけの自治体は全体の下り坂と一緒に下がっていくだけなので、気づけば茨の道ということに…。要注意です。
(3)コミュニティ:「社会関係資本」と関連して
「社会関係資本」とはネットワーク、端的に言えば人間関係のことです。これは最重要の視点ですが、コミュニティの実態はなかなか把握しづらく難しい問題です。「住んでみたらすごくよかった。このコミュニティが大好き💛」ということもあるでしょう。事前によくリサーチすることをお勧めします。足しげく通ったり、体験的に住んでみることも有効でしょう。ただ、セカンドハウスとして利用していた時にはよかったけど、実際に住んでみたら、ちょっと違ったということもあるかもしれません。
「時代錯誤じゃないの?」と思うようなことが、その地域では「当たり前」だったり。ただ、物事全ていい面と悪い面がセットであるので、保守的なところはちょっと息苦しいけれどもコミュニティとしては安定しているというようにいい面に目を向けることも大切です。いい面については参加しつつ、「これは無理!」なことにであったら、そういう出来事や集団には与しない勇気も大事だと思います。「長い目で見ること」それが大事です。「今ここでこうしないと面倒なことになるから…」という近視眼的な判断のみで行動することは不幸の始まりだと思います。また、次世代に負の遺産を継承することにもなります。「自分が我慢すれば…」は美徳でもなんでもなく、次世代への悪影響だと私は思います。
また、コミュニティに対する姿勢として、「所属させてもらう」だけでなく、新しいコミュニティを「創り上げていく」ことも大事です。もし、その土地のコミュニティになじめない場合、現在、オンラインコミュニティの質がものすごく上がっているので、オンラインコミュニティで自分自身をメンテナンスしつつ、リアルな場では臨機応変にふるまうという作戦も有効です。そして少しずつ自分自身のコミュニティを育てていくのです。物理的に離れられないコミュニティには慎重に対応しつつ、精神的充足の一部をオンラインで求めつつ、居心地のよい居場所を作り出す。これこそがnew normalな「社会関係資本」の育て方だと思います。また、そういう人が地域に存在することによって、コミュニティにも変化が起きることでしょう。下り坂の我が国、これまで通りのやり方ではなかなかに難しい、そういったことを自覚しないコミュニティは淘汰されていくと思います。
上述した「キャリア資本」の3つ「ビジネス資本」「経済資本」「社会関係資本」について詳しく知りたい方はこちらの記事をどうぞ。
住む場所についても、今後はより自律的な選択をする人たちが増えてくると思います。new normalの時代 希望がいっぱいです。私も現在、模索中です。自治体は「選ばれる」ところと「去られる」ところに二分されていくのではないかと思います。コミュニティについては、選ばれるものもあれば、新しく生まれるものもあるでしょう。それぞれの価値観で多様で小さなコミュニティが生まれ、有機的につながるところ、孤立するところ、悲喜こもごもになるのではないかと思います。