逃げるキリシタン その4(全4回)
向こうへと急いで歩いていく島原の男の人の後ろ姿があったんだ。五兵衛さんはねキリシタンとお話をしたことが怖かったんだ。それが知れたら、家族中火あぶりにされちゃう。木に縛られて火で焼かれちゃうと思うとね、恐ろしかったんだ。怖かったんだ。五兵衛さんは走って島原の男の人に近づくと、訳も分からず槍で突き刺して殺してしまったんだ。
それからね、何日か経ったある日のことだよ。おみつさんが一人でお留守番をしていた時のことさ。
「おみつ、おみつや。ちょっと出てきておくれ」
庭から誰かの声がしたんで、ガラリと縁側の戸を開けてみたんだよ。
「きゃー!」
近所の人がおみつさんの悲鳴を聞いていたんだ。この時からおみつさんの姿が見えなくなってしまった。五兵衛さんも心配したよ。近所の人たちにも手伝ってもらって、おみつさんを探しにいったのさ。
そしたらね、大里岬(おおさとざき)の大岩の下でおみつさんの死体が見つかったんだ。惨(むご)たらしい姿だった。怪物にでも引きずられてきて、岩に叩きつけられたような姿だったんだって。皆あまりのことで声も出なかったよ。誰がこんなことを?って思ったよ。その時、五兵衛さんは震える声でつぶやいたんだ。
「あの島原のキリシタンの男の仕業(しわざ)だ。道を教えたのがおみつだったから、それを恨んで化け物になって、おみつを、、、」
五兵衛さんたちはね、それからおみつさんを丁寧に弔った(とむらった)ってことだよ。
これでおしまい。最後まで読んでくれてありがとう。ポン!