梅若(うめわか)の涙雨(なみだあめ)その3(全3回)

昨日の続きだよ、ポン!
花御前(はなごぜん)の歌2つ

尋ね来て問わば答えよ都鳥 すみだ河原(がわら)の露と消えぬと
汲み知りて哀れと思え都鳥 子に捨てられし母の心を

{都鳥さん。誰かが来て私のことを尋ねたなら、ここで隅田川の雫(しずく)となって死にましたと伝えておくれよ}
{都鳥さん。私のことを可哀そうに思うでしょう。そうですよ。私は子供に先立たれてしまった可愛いそうな母ですもの}

と花御前が和歌を詠んでいると、池の中に梅若(うめわか)の姿がゆらゆらと浮かび上がってきた。
「あぁ、梅若、梅若よ。今一度、今一度会いたいのですよ」
花御前は涙を流しながら叫ぶと梅若に触れてみたくなって、池の中の梅若の傍(そば)へと近寄っていったのだ。その池は鏡池(かがみいけ)と呼ばれていた。残念ながら、今は埋められてなくなってしまっている。

毎年4月15日には、梅若の念仏が行われているそうだ。この日にはよく雨が降る。天が憐れんで(あわれんで)涙を流しているという。4月15日に降る雨を、{梅若の涙雨}といっているそうだ。

梅若は12歳、天延(てんえん)2年(974年)3月15日のことであった。梅若の塚は春日部市新方袋(にいがたふくろ)の真言宗、満蔵寺(まんぞうじ)の門前にある。梅若祈念の大きな朽木(くちき)は梅若舎(うめわかしゃ)の後ろ側にあるそうだ。今年も綺麗な桜の花を咲かせたことであろう。

この話しは、謡曲(ようきょく)や浄瑠璃(じょうるり)でも有名で、{隅田川}として演じわれている。

これでおしまい、ポン!

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