じょっぱりのお殿さま その2(全2回)
昨日の続きだよ、ポン!
ところが、お告げのあった山本という侍は片目と足が不自由で、馬に一度も乗ったことがなかったのです。けれど、お告げなものですから、とにかく、山本の侍を江戸へ行かせたのです。さて、いよいよ明日という晩に赤倉さまが山本の夢枕に現れました。
「馬は外に繋いでおいた。馬に乗ったら、わしが目印に出す金の扇から目をそらすではないぞ。」
と言われたのです。
次の日、将軍さまや大名たちが鈴なりに居並んでいるお庭に、太鼓がどーんどーんと響き渡りました。出てきたのは、何と津軽の足の悪い年寄りの馬と、片目と足の不自由な侍です。それを見ると、一同あははっと大笑いしました。池には青々とした青竹一本が渡されてあります。
「やっぱり、じょっぱりさまよのぉ」
「あーんなもんに出来るわけはないよのぉ」
見ている者たちは、ざわざわとしていました。津軽のその侍は足を引き摺りながら、やっとこさ馬に乗りました。先ほどまでうなだれていた馬は、侍を乗せるとゆるゆる青竹の手前まで足を引き摺りながら歩いていきます。津軽の侍は大きく一つ息を吐くと向こうに見える金の扇を見つけたのです。まわりの大名たちはしーんと静まりました。馬が一本竹の端に足がかかったとたんのことです。侍も馬もいきなり、しゃんとなって、たったたったと一本の青竹の上を渡って行くではありませんか。侍たちが渡りきると、どっと歓声が上がりました。
「どうじゃ、これぞ我が津軽の侍と馬じゃ、見事であろうて」
じょっぱりさまは、ほっとして大声で自慢したのです。将軍さまも大名もこれにはビックリしてしまいました。皆惜しげなく
「見事なことよ。津軽のお殿さまは良いお宝をお待ちじゃぁ」
と褒めたたえました。
おしまい、ポン!