最上義光(もがみよしあき)の野望(その4 全4回)
その様子をふすまの隙間から覗いて、満足していた義光がいたのさ。そうしてすぐに家来の土井半左衛門を呼んだのさ。
「鉄砲隊をひきいてな、高野山に向かう義康を撃てよ」
「殿、若殿を撃てと?みなが慕っておる若殿を」
「土井、お前はわしの家来だな、できぬというなら、ここで『めしはなし』とする。お前にはかわいい娘も親もあったな、、、」
「承知いたしました」
しかたなく、しかたなくそう言ったんだ。
義康の家来の里見民部はね、義康が高野山へと旅立つ時に腕利きの家来60人もついていかせたんだよ。嫌な胸騒ぎがしていたからね
その日、土井半左衛門は鉄砲をかかえて草の中に隠れていたんだ。
『お優しゅう若とのであった。娘に独楽をこさえてくれたのは若殿であった。馬の蹄の音が近づいてきた。三頭目が若殿だ。何も知らぬご様子。南無阿弥陀仏、お許しくだされ」
ダダーン!ダーン!
叢から一斉に義康のお腹に玉が打ち込まれた。馬から落ちた義康。義康の家来たちは義康の周りで円陣を組んだよ。また鉄砲が打ち込まれた。前にいた家来たちがバタバタと倒れたよ。
「父上か」
義康はそう言ってね、刀を抜くとその場で、武士の最後らしくお腹を十字に切ったって。こうして義光の目論見通りことは進んでいったんだ。
この後ね、義光はなんと、
「わが子を殺した土井半左衛門の一族を晒し首とする」
なあんて言ったんだ。ほんとに言ったんだよ。
土井家の人たちはね、騙されたと言ってみんな逃げていったんだけれど。しばらくして見つけ出されて、みな斬られてしまったということさ。
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#日本史 #戦国時代 #最上義光