水鳥の羽音と幻の富士川の合戦 その3(全3回)
ポン!昨日の続きじゃ。
治承(じしょう)4年、1180年の11月9日のこと。
平維盛(たいらのこれもり)の率いる平氏軍と、源氏軍を率いる源頼朝(みなもとのよりとも)軍は、駿河の国(今の静岡県だね)富士川を挟んで戦うことになったんだよ。
その日の夜の事。維盛たち平氏軍はね、富士川の西側でいつでも戦えるように準備しながら体を休めていたよ。家来たちはたったの3千人くらいだ。闇を透かして向こう岸を見れば、源氏軍の白、白、白の白い旗が累々(るいるい)と幾重にも続いている。夜も深まって、シーンと静かになって川の流れの音しか聞こえていなかった。
わさわさ、わさわさわさ、わさわさ、わさわさわさ、
突然に闇を切っての物音が。
「源氏軍が攻めかかってきたぁ!!」
って早とちりしちゃった、あわてんぼうの平氏の人たち。我先にと逃げ出したんだ。有名な平家物語の巻5富士川のところにはね、こんな風に書いてあるんだよ。
「弓を取った者は矢を忘れ、矢を取った者は弓を忘れた。他人の馬に自分が乗り、自分の馬に他人が乗っている。近くの遊郭(ゆうかく)から呼んできた芸者や遊女(げいしゃやゆうじょ)たちは、ある者は頭を蹴り割られ、腰を踏みつけられて、わめき叫んでいた」とあるよ。
この慌てぶりがわかるでしょ。芸者や遊女というのはね、大人の男の人たちと仲良く遊んでくれる綺麗な女の人たちのことを言うんだよ。負けそうな戦いでビクビク怖がっていたのに、近所から女の人たちを呼んで来ていたなんて、戦いを本当にやる気あるの?って感じだね。
この、わさわさと言うのはね、川岸で休んでいた水鳥たちが、何かの音にビックリして、何十羽か何百羽が一斉に飛び立った羽の音だったんだよ。
水鳥の羽の音にビックリして、京都まで逃げ帰ってしまった平氏軍。あぁ、情けないぃ~
維盛たちは、そりゃぁ、おじいちゃんの平清盛(たいらのきよもり)からはガンガンに叱られて、やれ島流しだの殺してしまうぞなどと言われたよ。
ね、これが有名な「幻の合戦」って言われた、富士川の合戦のことだったんだよ。面白いね。
さぁ、お休みね。ポン!
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