今日の食材 セップ茸
セップ茸=ポルチーニ茸のフライ。
香り、ジューシーさ、まさに揚げ物は蒸し物というかんじ。おいしかった。旬は夏だけれど、いたまないように秋口からしか輸入できないらしい。
エリンギみたいな軸だけど、マツタケとおなじく菌根菌で、生きている木にしか自生できないため人口栽培できていない(昨年のバカマツタケ人口栽培成功には狂喜したけれどその後どうなんだろう)。エリンギは椎茸とおなじく腐生菌で欧州原産。いまこそ大量生産されているけれど、人口栽培当初は湿気の高い日本での栽培条件の探索は苦労したようだ。
きのこの美味しさは香り。なぜマツタケやポルチーニやトリュフが良い香りと思うのか、ふとかんがえた。
美味しい!のもっともシンプルな形は脳内報酬系で糖や脂質などのカロリーゲットだぜの喜び。
日本の場合は、動物たんぱくをなかなかとらないかわりに、出汁の旨味成分でこの喜びを補ってきた。しいたけのグアニル酸も旨味成分だ。このあたり、農水省の味覚と思考の記事が面白かった。
松茸の場合、マツタケオールは大豆にも近い成分があるらしく西欧人は臭い(靴下っぽい)とおもうのに日本人は美味しそうと思うのはこのせいかもしれない。松茸はそこまでぴんとこないけど、納得と靴下の臭いはちょっと似ている気持ちが分かるので、確かにそうかも。
トリュフは黒トリュフは男性の腋、白トリュフはにんにく的な香り成分を有しているらしい。ジャンクなようなセクシーなような。ある種の擬態にそそられているのだろうか。
その他いわゆる森のかおり、海のかおりが美味しそうというイメージにつながることもある。逆に海で働いている人だと、ダイレクトな磯の香りは職場の匂いに過ぎなくて食欲そそられないという人にもあったことがある。
ポルチーニの成分を調べることはささっとしたネットサーフィンではできなかったのだけど、香りの美味しさは、生き物としての本能、文化的なバイアス、単に後天的なバイアス(これは世間の人が美味しいといっている高級で希少なものの匂いなのだ)などがない交ぜになって作られている。
そして、ときにそれが靴下とか不衛生なものと結び付くのも有機物なら自然なことであって、美味しい=衛生的、自然、添加物なしと理屈でつきつめると、矛盾が生じてしまう気がしている。たとえば、植物工場の野菜と露地物の野菜どちらがより美味しいかどうか必ずしも単純にこたえられないし、永谷園のまつたけのお吸い物も、人工栽培のバカマツタケも天然の松茸も、それぞれの価値を持っているのだと思う。