わたしのりょうげ
子どもが家に帰るのを待ってから午後のご法話に間に合うよう車で向かう。
お経がはじまっていた。
窓際の隅に座る。今日は正信偈のようだ。
正信偈が終わり途中からどこをよんでるのか分からなくなったので、
皆さんの声を聞きながら日常勤行聖典の白骨の章を読んでいた。
なもあみだぶつ、なもあみだぶつ、という人の声
鳥が鳴いた。庭を見ると、雨音と、
生い茂った木の葉から雨粒がしたたって、
地面の黒い石をつやつやと濡らしている。
鳥は飛び立ち枝を揺らしている。
ああ、なにも欠けてない。完璧だ。
これがなまんだぶつだ。
「うらやましい」そう思った。涙が出てきた。
娘はなまんだぶつになったんだ。
鳥に揺らされる枝に。つやつやと光る雨の輝きに。
こんなに近くにあるのに、私はかなわない。
今すぐ崩れ落ちて、この完璧な世界に溶けてしまいたい。
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