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魂のいちばんおいしいところ

少し前に、ふとしたことから谷川俊太郎さんの詩集を読み返しました。

好きな詩はたくさんあるのだけれど、やっぱりここで立ち止まる。

「魂のいちばんおいしいところ」

神様が大地と水と太陽をくれた
大地と水と太陽がりんごの木をくれた
りんごの木が真っ赤なりんごの実をくれた
そのりんごをあなたが私にくれた
やわらかいふたつのてのひらに包んで
まるで世界の始まりのような
朝の光と一緒に

何一つ言葉はなくとも
あなたは私に今日をくれた
失われることのない時をくれた
りんごを実らせた人々の微笑みと歌をくれた
もしかすると悲しみも
私たちの上に広がる青空にひそむ
あのあてどないものに逆らって
そうしてあなたは自分でも気づかずに
あなたの魂のいちばんおいしいところを
私にくれた

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急に目まぐるしくなった私の3月。

いろんな形でいろんな人が差し出してくれる「魂のいちばんおいしいところ」に、私の気持ちは救い上げられ支えられています。

思い出すたび私の心を温めてくれる、小さいけれど確かな、ろうそくの炎のような灯。やるせなさと共にいるための勇気。あてどない気持ちの寄る辺。

自分でもうまく言葉にできない涙をたくさん流した1週間でしたが、それ以上に、美しい涙に救われた1週間でした。

悲しみだけとも言い切れない、小さく積み重なったその人の生きてきた証みたいなものが、涙をこんなにも深く美しく見せるのだということ。そう感じられる感性が、私の心にまだ生きているという安堵感。

自分の人生を信頼して、もう少し頑張ります。

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