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福岡のクラフトサケ『LIBROM』〜お酒と夢のつくり方を根掘り葉掘り聞いてきた〜


福岡市中央区の中でもちょっと閑静な、それでいてオシャレなカフェが並ぶ街 高砂にLIBROMはある。

渡辺通駅か、薬院駅から歩いて5分ほど。
天神駅からも20分弱、いいお散歩だ。

マンションの1階にある


一見すると美容室かカフェか、といった店構え。
ここで日本酒造りができるんだ…と正直驚いた。

LIBROMの創業者で代表の柳生光人さんは、学生の頃に訪れたイタリアにハマり「将来イタリアで日本人らしいことをしたい、そうだ日本酒を造ろう」と決意したという。
そこからは迷いなく 大学在学中にまず山口県の新谷酒造さんで修行、そのまま就職。
その後は石川県の農口尚彦研究所に入社し酒造りの知識と研鑽を積んだ。迷いがないってすごいな。

製造責任者の穴見峻平さん。
こちらも変わった経歴。
プロのサッカー選手を目指し、ドイツで3年間サッカーをしていた。プロ選手という夢を諦めて日本に戻ってきたときに、中学の同級生である柳生さんにまず連絡をした。
柳生さんは酒造りをしながら 将来はイタリアで酒蔵をつくる!という夢を穴見さんに話したそう。情熱的に楽しそうに語る柳生さんの話に感化されて一緒にやりたいと思った。
そこでまず広島で酒造りの勉強をし、その後は新潟県の阿部酒造さんで3年間修行。


そして柳生さんと一緒に 福岡の街中で醸造所をつくり「日本酒文化をもっと身近に」をコンセプトに酒造りを始めた。


昔は綺麗な水が豊富に湧く場所に酒蔵はできたものだが、今は濾過技術が驚くほど高くなったので水道水でも問題なく酒造りできる。



ご存知の方も多いと思うが、日本では日本酒の新規製造免許は事実上おりない。
もし日本酒の酒蔵を始めたいと思ったら、M&Aか事業承継をする。

もしくは「クラフトサケ」を造る、という選択だ。
(詳しくはクラフトSAKEのページをみてね)
https://note.com/yokaiokan/n/nac0507ba694d

清酒、日本酒と名乗ることはできないが、
日本酒を造る工程でフルーツやハーブなどの副原料を加えてフレーバードの酒を造るのだ。
この方法なら「その他醸造酒」の新規製造免許がおりる。
しかも副原料のフルーツや野菜、ハーブ、スパイスなどは地元産にすることでより個性や地域性が高まる。


こうして始めたLIBROMの酒造り。

かわいいボトルがずらり。カラフルでつい手に取りたくなる。



蔵内(といっても誰でも見ることができるコンパクトさだが…)を穴見さんに案内していただいた。

穴見さんに根掘り葉掘り聞いちゃいました


驚くことに原料米は玄米を買い付けて、近所のコイン精米所で精米をする。
ということは、精米歩合92%!

その米を甑(こしき)というよりも「蒸し器」で蒸して、麹菌をふりかけ奥の小さなスペースで製麹している。

この上に四角いいわゆるセイロを重ねて蒸す

温度管理は電気ストーブ笑
以前は加湿器も入れていたが、この麹室は湿度キープしやすいので加湿の必要はないとのこと。

これが麹室
電気ストーブ2台で室温上げる!


そして出来上がった麹で 通常は酛立てをするところだろうが、LIBROMの酒造りでは現在酛(酒母)を立てたり立てなかったり。

以前は普通に3段仕込みしていたが、いまは酒母として分けて造らずにどぶろく造りのようにストレートに造ってしまうのだとか。

3日目の元気な醪


ちなみに酵母は「きょうかい9号」

長期低温醪にはしないで品温も高め。
15〜26度とかなり高い。ガンガン溶かしていく。なんと醪日数は1週間とのこと。
これだけ短期間で92%精米の米を溶かすので、さぞや力価の強い種麹を使っているのだろうなぁ…と思って聞いてみたところ現在は秋田今野商店さんの「ルーツ36」という初めて聞いた種麹だった。
稲麹から生まれた種麹だそうで、特徴としては糖化力は非常に高いが酸性カルボキシペプチターゼ活性が低く抑えられる。これを総ハゼにして使うとのこと。

日本酒用の小さめタンク


そんな品温上げて一気に溶かして造ったらめちゃ酸が出るのでは…と思うが、フルーツ系などの副原料の場合はちょうどバランスがとれて良いのだとか。
あまり酸を出したくない仕上がりの時には、酒母を造り、醪にも少し時間をかけて造るなど調整している。


副原料を入れるのは搾る2〜3日前。
当然、酵母はまだ活発に生きている。
そこにフルーツを入れると入れた物によって反応が違うという話が面白い。
例えばメロンを入れた時には酵母が「やったーメロンだ〜!!」と大喜びするかのごとく活発になり、タンクから泡が溢れ出した。
かたやハーブを入れても「草かよ!」と言っているかいないかは知らないが(笑)シーンとしたものなんだとか。


さて2〜3日これを布の酒袋に詰めて、槽の中に並べてゆっくりと圧をかけていく。
上槽は昔ながらの槽搾り。
様々な副原料が入っているためこれがベスト。
酒粕にはイチゴやらメロンやらが入っているんだよなぁ。興味あるなぁ。

槽です。



基本的に火入れはせず、濾過もせずに出荷。
生ということは酵母が瓶内で生きている。
だからシュワシュワ。

出来立ても美味しいがLIBROMのお酒の特徴は
「どんどん変化していくが、どれも必ず美味しくなっていく」

500㎖ではすぐに飲み切ってしまいそうだが、穴見さんいわく少しガマンして残し 変化を楽しんでもらいたいと。
生だと出来立てがいちばんのような気がしていたが、だんだん美味しくなるとは驚きだ。
今回買ってきたものは変化を楽しんでみようと思う。


さて、LIBROMにはレストランも併設されていてたくさんの種類のLIBROMクラフトSAKEとペアリングも楽しむことができるのだ。


しかも料理を担当しているのは、和食の料亭で10年も修行したプロの料理人西島光輝さん。
彼もまた柳生さん穴見さんとは高校生の頃からの友人。
岡山での料亭修行を終えて、福岡に帰ってきたタイミングで声がかかり縁あってLIBROMの一員となった。

私が伺った日はレストランはお休みだったが、お酒は何種類かテイスティングさせていただいた。

やっぱり美味しいなぁ。

さつまいもと生姜
これは香港輸出用、日本未発売
こちらはオールイタリア米で造ってみたもの。
イタリア進出に向けた試み。



さて、冒頭に書いた 代表柳生さんの夢
「イタリアで日本酒を造る」

着々と進んでいる。

昨年イタリアに現地法人を設立。
イタリアのワインの銘醸地ピエモンテ州のバルバレスコ(あのバローロも含まれる地域!!)のワイナリーにて日本酒造りをするべく、クラウドファンディングでの資金集めや間貸ししてくれるワイナリー探しなどを進め いよいよ現実味を帯びてきた。

LIBROMの話を聞くと
希望とワクワクしかない。

最新のあまおうとローズマリー


あまおう&ローズマリーのお酒を飲みながら
ようし、私もやるぞ!と思える良い年末だ。







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