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借金作った自分を習慣の力で変える31歳フリーター③
Sさんに誘われて入社した総合不動産会社、I社。設立からまだ5年目という若い会社で、従業員も皆若く、すぐに馴染むことができた。最初に配属されたのは秋葉原店で、当時は池袋と秋葉原の2店舗しかなかった。そこでお世話になったのが、店長のIさん。不動産会社の店長らしからぬ柔らかな物腰で、営業マンというより親身な相談役といった雰囲気の方だった。
Iさんには本当にお世話になった。前職で心がすっかり腐りきっていた僕を、一から育ててくれたのだ。「一気に売れっ子営業マン!」となれば理想的だったが、現実はそう甘くはなかった。むしろ、僕はダメ営業マンのままだった。秋葉原店には約2年半在籍したが、最後まで成績を伸ばすことはできなかった。
そして、コロナが大流行。観光地である秋葉原は人っ子一人いない状態に。当然、店にもお客さんが来なくなり、最終的に社長が下した決断は秋葉原店の閉店だった。利益が出ない店舗を維持するのは無理もない話だ。秋葉原店の閉店が決まり、Iさんも別部署へ異動に。直属の上司が変わると聞いた僕は、「この機会に辞めて地元に戻ろう」と考えた。今思えば情けない決断だ。お世話になったIさんに何の恩返しもできていないのに、自分だけ逃げ出そうとしたのだから。実際、僕はIさんに甘えていただけだったのだ。
「秋葉原店が閉店するなら辞めます」とIさんに伝えた。すると数日後、Iさんは「話し合いがある」と言って、ある場所へ連れて行ってくれた。それは赤羽店だった。(その頃には、I社は飯田橋、池袋、赤羽、秋葉原の4店舗を展開するまでに成長していた。)
赤羽店には、賃貸部の部長兼店長のSさんがいた。Sさんとはそれまで深く関わったことはなかったが、顔を合わせれば軽く話す程度の仲だった。辞めるつもりでいた僕は、会って早々に「辞めようと思っています」と伝えた。するとSさんは開口一番、「ダメ。」と一言。話し合いはこれで終了かと思いきや、さらにこう続けた。
「俺の下で1か月だけ働いてみろ。それでも辞めたければ辞めていい。」
辞める覚悟で臨んでいた僕は呆気に取られたと同時に、まだ僕を必要としてくれる人がいるのかと少し嬉しくも感じた。そしてこの赤羽店への異動が、営業マンとしての成長を一気に加速させるきっかけとなった。