慢性疾患の原因となる社会的要因
病気の50%に社会的要因が関わっていると言われています。
社会的要因とは、失業や収入減少などの経済的な要因や家族・会社・学校などのストレス要因、社会的サポートなどの地域格差、幼少期の体験から、住んでいる国や環境まで、自分自身を取り巻く様々な社会環境を社会的要因と呼んでいます。
経済格差と関係がある疾患
例えば経済格差がある場合、そうでない人と比べて、がんや冠動脈疾患、脳卒中、糖尿病、慢性腎臓病、歯科疾患、メタボリックシンドローム、認知症、うつなどの疾患や、骨折・転倒、高齢者の低栄養、子供の問題行動、自殺などの事象が有意に増えると言われています。これらの疾患や事情はまさに現代が抱えている問題ばかり・・・。明らかになっているものがここにあがっているだけで、そのほかの病気もかなりの確率で社会的要因が関与しているとも言えます。そう考えても、社会的要因が病気の背景に色濃く、関係していることがわかります。
その一方で、今の医療はこのような社会的要因を無視した形で、治療が行われます。血糖値をコントロールしたり、肥満解消に運動をしたりと、様々な治療や予防が行われていますが、そもそも血糖が何故高くなるのか、また何故メタボリックシンドロームになるのかという根底に社会的要因が関係しているので、いくら薬を飲んだい、運動をしたり、注射や鍼灸治療などを行っても、症状が一時的に軽減しても、完全になくなることは難しいと思われます。そのため、病気の治療・予防には、もう少し社会的要因を加味したアプローチが必要になると思われます。
社会的処方とは?
社会的要因を対処する方法に社会的処方があります。これはお薬を処方するように、その人に合うコミュニティや活動を紹介する、言い方を変えれば社会を処方とするという考え方です。社会的要因の背景を分析すれば、その多くは所属欲求の低下、自己肯定感の低下、自己実現欲求の低下が根底にあります。そのような満たされない精神的欲求が社会的要因の根底に蔓延っているのです。そう考えると、コロナ禍の現代ではこれらの欲求が満たされていない人が増えると共に、AIなどの普及によりその欲求心はさらに低下します。これらの欲求はお薬や運動、注射や鍼などでは解決できないため、社会全体でこれらのコントロール仕組みが必要不可欠です。
養生を通じた社会的処方
そこで、我々は季節に応じた生活をするライフスタイルを提唱し、季節を楽しめる街づくりを通じて、この社会的要因を解決できないかと考えています。季節を楽しみながら田畑で農作業をすることで、運動により健康になると共に、農作業を通じたコミュニティ形成、さらには農作物ができることで自分の努力が実を結ぶという自己肯定感体験や、農作物を地域の人々にお裾分けすることで周りから感謝され、必要とされる自己実現欲求の高まりなど、季節を楽しみながら地域で生活することは、言い方を変えれば季節を楽しめる地域を作ることは社会的処方になると考えています。
そのため、我々は養生という健康観を地域住民に植え付け、季節を楽しむ立ちづくりを通じて、住むだけで健康になる街づくりの実現を目指しています。その意味を込め、私が運営する「YOJYOnet(株)」では「健康行動で社会をイノベーションする」を信念に、養生を広める活動をしています。