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「5分前にもソレ言ったよね⁉」同じ事を何度も聞いてくる認知症の親に「家族が楽になれる」声かけ方とは?
私が認知症の母(83歳)と同居するようになってから、半年が経とうとしている。
もう半年・・・だけどまだ半年。
介護はまだまだ始まったばかりだ。
人生で初めて「認知症」と向き合い、まだ半年ではあるが、なかなか濃い半年だった。
認知症がどういったもので、人はどうなってしまうのか、毎日目の当たりにしてきた。
そもそも母に対してあまりいい感情を持っていない私は、認知症が進んでいき、少しずつ壊れていく母を見ても「悲しい」とか「前の状態に戻ってほしい」という感情は少なく、冷静に受け止めている。
それでも、いい感情を持っていないからこそ、余計に母の行動に対して腹の立つこと、イライラすることも多く、親だという甘えから遠慮なく言い争いもしてしまう。
ただ、そんな日々を送りながらも、母と接しているうちに母の行動パターンや思考パターンが分かってくると、こちらの声かけ次第でうまく問題を回避できる部分もあると分かってきた。
現在母は要介護1。
自分の身の回りのことや排せつ、食事を食べるなどの毎日のルーティンは準備だけしてあげれば自分でできている。
でも短期記憶障害が急速に進んでいて、既に新しいことを記憶している時間は数分もないくらいだ。
私と子ども達が同居していることも、半年経った今でも認知されておらず「なんでここに居るの?」と毎日何度も聞いてくる。
最初は聞かれる度にいちいち説明しては、すぐにまた聞いてくるのでその度にケンカになっていたが、半年が経ち私も学習した。
そもそも説明して「分かってもらおう」と思うことが間違いなのだ。
いくら一生懸命説明したところで、報われることなどなく、繰り返される同じ質問に疲弊させられる。
認知症が進んだ相手を前にして、まともに答えても時間も労力も無駄だと痛感した。
例えばこんな風だ。
「なんでアンタたちがここに居るの?」
「もー!またその質問!? 何回も言ってるけど、半年も前から一緒に住んでるでしょ!」
「そうなん?? なんで一緒に住んでるの?」
「一人で住むのが大変になったからでしょ。いろいろあぶないし。だから一緒に住んでるの!」
「なんで!? そんなことない! 来てくれなくていいわ! 私は一人でできるから帰ってよ!」
「一人でできてないから来たんでしょ! 買い物も行けないし、病院も銀行も一人で行けないでしょ!」
「ちゃんと行ってるわ! 人をバカにして! 帰って! 出て行って!」
私も頭で分かっていても怒りが抑えられず、このやりとり以降は罵詈雑言の応酬に発展し、最終的には母が怒って部屋に引きこもることで終了していた。
これが少し前までの母と私の間で一日に何度も繰り返される日常だった。
でも今は違う。
最近私がやっているのは「嘘(ウソ)をつく」という方法だ。
・・・
「うまくいった嘘(ウソ)」の事例 ①
「なんでアンタたちがここに居るの?」
「昨日から(ウソ)様子を見に来てるんやで」
「そうやったっけ? すっかり忘れてるわ。いつまでいるの?」
「明日帰るよ(ウソ)」
「ふーん、そうなんや」(終了)
これだけでケンカになることもなくなり、お互いが平穏に過ごせるのだから嘘も方便だ。
この方法にしてから、母と私の不毛な言い争いは1日に4~5回だったのが、1日に1~2回くらいで済むようになり、ストレスもかなり減ったと感じている。
最初は私自身が嘘をつくことに抵抗を感じたり、子ども達の前で嘘を言うことにも罪悪感を感じていた。
でも今は子ども達にも説明して、納得してもらっている。
この「嘘をつく」方法は他にもいろんな場面で活躍している。
母はデイサービスが嫌いだ。
週に1回行くだけでも嫌がってストライキを起こす時がある。
でも母自身「嫌だけど時々は行かなくてはならない」という気持ちも持っているので、その気持ちをうまく利用するような嘘をつく。
・・・
「うまくいった嘘」の事例 ②
「今日はデイサービスの日やで」(当日の朝にいきなり言うのがいい)
「えー! 忘れてたわ! いやや~。行きたくないな~。」
「そう言って最近ずっと休んでる(ウソ)ねんで。
だから今日は行かないと。毎週は嫌やけど月に1回は行くて自分でも言うてたやん(ウソ)。家でじっとしてたらすぐに寝たきりになっちゃうしね。」
「ずっと休んでるの? 全然覚えてないわ。じゃあ行かないとアカンな」
そんな感じで毎回母は月に1回のデイサービスだと思って毎週ちゃんと行くようになった。
同居を始めてしばらくは週に1回のデイサービスに行ってもらうことすら大変だったが、この声かけ方法を行うようになってから、ほぼ毎回行けるようになり、今は週2回にデイサービスを増やすことができている。
・・・
逆らわない & 受け流す
「嘘をつく」というのは、具体的な対処法の1つだが、声かけの最大のポイントは「なるべく言ってることを否定せず、納得してもらえそうな言葉を選ぶ」ことだと思っている。
そして、その言葉は「嘘」であっても全然いいのだ。
逆に本当のことを伝えて納得してもらうことはほぼ不可能だと言える。
そのことに気付くまでに私は何ヶ月もかかってしまった。
母は認知症以外の持病などは無いし、身体も丈夫な方だ。
だからついこちらも「普通の人」みたいに思ってしまう。
でも普通なのは「見た目」だけで、中身は全然そうではない。
母の頭の中は常に「不安」が湧き出ていて、止まることなく溢れ続けている。
それを止める術はなく、母を「不安」の渦中から救い出すことはできない。
それでも、言葉の選び方次第で溢れ出る不安を一瞬だけ少なくすることはできるかもしれない。
一瞬でも不安が少なくなれば母は納得し、しばらくの間、落ち着くことができる。
介護者である私にとって、それはとても大切なことで、母の不安に正面から向き合い続けていると、自分の方が母の不安に飲み込まれてしまう。
そうならないよう、私は今日も嘘をつく。
いつまで続くのか、まだ終わりの見えない母の相手に私自身が疲弊してしまわない為に。