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ミネルバ大学は教育を変えるか

先日読んだ本に、ミネルバ大学の事が書いてあった。あちこちでこの大学のことを読むことがあって、前から関心を持っていました。そこで頭の整理のため、自分でもまとめてみました。なかなか、特色のある大学のようです。



ざっくり一言で言うと

従来の大学とは一線を画す革新的な教育機関として、近年注目を集めています。入学難易度が非常に高いことでも知られています。2022年の合格率はわずか1%で、ハーバード大学よりも狭き門となっています。

従来の大学との違う特色

キャンパスを持たない: 世界7都市を移動しながら学ぶ、グローバルな教育システムを採用しています。サンフランシスコを起点に、ソウル、ハイデラバード、ベルリン、ブエノスアイレス、ロンドン、台北と、4年間で7都市の寮に滞在し、それぞれの都市で文化や社会を体験しながら学びを深めます。東京にも拠点ができるそうです。

オンライン中心の授業: 全ての授業は、独自開発のオンラインプラットフォームを通して行われます。インタラクティブな授業形態で、学生同士の活発な議論や共同作業を重視しています。
実践的なカリキュラム: 「批判的思考」「創造的思考」「効果的なコミュニケーション」「効果的な相互作用」の4つのコア能力を育成することに重点を置いています。

座学だけでなく、企業やNPOとの連携プロジェクトなど、実社会で課題解決に挑む機会が豊富に用意されています。

少人数制教育: 教授と学生の距離が近く、密なコミュニケーションを図りながら学べる環境です。
ミネルバ大学は、従来の大学教育の枠にとらわれない、新しい時代の高等教育のモデルケースと言えるでしょう。グローバル化が加速する現代において、世界を舞台に活躍できる人材育成に貢献する可能性を秘めています。

教授陣

ミネルバ大学は、教授陣も他の大学とは少し違います。

著名な研究者ではなく、教育に情熱を持つ人を採用: ノーベル賞受賞者のようなスター教授はいません。学術的な名声よりも、教育への情熱や指導力、そしてミネルバの教育理念への共感を重視して採用しています。
多様なバックグラウンドを持つ: 教授陣は、学術界だけでなく、ビジネス、NPO、政府機関など、様々な分野で活躍してきた経験豊富な人材で構成されています。
具体的な教授とその業績を挙げるのは難しいのですが、それはミネルバ大学が個々の教授の業績よりも、教授と学生の密な関係性と学生中心の活発な学習環境を重視しているからです。

著名な教授

 

Dr. Sean Coughlan: He is the Dean of the College of Computational Sciences. He has a background in computer science and has worked in various roles in academia and industry.
Dr. Gadi Algazi: He is the Dean of the College of Arts and Humanities. He is a historian with expertise in the history of science and has taught at various universities.
Dr. Mark Nelson: He is the Dean of the College of Social Sciences. He has a background in political science and has experience working in government and non-profit organizations.
Dr. Rudiger Escobar Wolf: He is the Dean of the College of Natural Sciences. He is a biologist with research interests in ecology and has taught at several universities.
Dr. Wanjiru Kamau-Rutenberg: She is the Dean of the College of Business. She has a background in economics and business and has worked in various roles in the private and public sectors.


学生の評価


ミネルバ大学は、学生から以下のような点で高く評価されています。

グローバルな環境で学べる
実践的なスキルが身につく
教授との距離が近い
多様なバックグラウンドを持つ学生と交流できる
一方で、

オンライン授業だけでは物足りない
頻繁な移動は負担が大きい
といった意見も一部にはあります。

日本人の合格者いるの

2017年秋に片山晴菜さんが日本人として初めてミネルバ大学に入学しました。彼女は日本の教育システムや入試制度に疑問を持ったことをきっかけに、高校を途中退学してUWC(United World College)アメリカ校に転校し、ミネルバ大学へ進学したそうです。

ゆじーくん: YouTuber。東京の中高一貫校に通っていたが、日本の教育に疑問を持ち、イギリスの高校に留学後、ミネルバ大学へ進学。東京の広尾学園に通っていたようです。

梅澤凌我さん: 京都府の公立高校からミネルバ大学に進学。

熊本県立高から米ミネルバ大へ「熊本で育ったから進学できた」 成松紀佳さん

2000年、熊本市生まれ。中高一貫校の熊本県立宇土中学・高校に進学し、17年に高校生・高専生科学技術チャレンジ(JSEC)に計3人で出場。「“副実像”の写像公式化の研究」で物理学・天文学分野で花王賞受賞。この研究で18年、米ピッツバーグで開かれた国際大会ISEFに出場。19年、米ミネルバ大へ進学。21年9月から3年生。16年の熊本地震では自宅が被災し、みなし仮設で過ごした経験もある。

熊本県には、2013年にできた県の「海外チャレンジ塾」があって、中学から通っていました。二つ上に県立高校から米マサチューセッツ工科大に行った先輩らがいて、とても刺激的でした。「海外大へ行く」というマインドは、ここで作られたと思います。
英語や出願書類の書き方なども、チャレンジ塾でみてもらいました。週1でオールイングリッシュのTOEFL対策講座があり、大学出願時に必要な英文エッセーの対策講座もありました。民間の塾に頼ったら100万円以上かかります。本当に助かりました。

出願時に、どんな学校なのかを説明したスクールリポートを学校が用意する必要があるのですが、他校から海外大へ進学した人の資料を取り寄せて、何度も書き直して作ってくれました。
出所 朝日新聞

卒業の針路

ミネルバ大学の卒業生は、そのユニークな教育経験と多様なスキルを活かして、実に多岐にわたる分野で活躍しています。具体的な進路としては、以下のようなものが挙げられます。

  1. 就職

多様な業界: テクノロジー、金融、コンサルティング、教育、国際機関、NGOなど、様々な業界で活躍しています。
有名企業: Google、Amazon、McKinsey & Company、Boston Consulting Group、ゴールドマン・サックスなど、世界的に有名な企業に就職する卒業生も多いです。
スタートアップ: 起業家精神を持つ卒業生も多く、自らスタートアップを立ち上げるケースも増えています。
2. 大学院進学

世界トップクラスの大学院: ハーバード大学、スタンフォード大学、オックスフォード大学など、世界トップクラスの大学院に進学する卒業生もいます。
専門分野: 経営学、法律学、国際関係論、コンピューターサイエンスなど、様々な分野で専門性を深めています。
3. 社会貢献活動

NPO/NGO: 社会問題解決に情熱を持つ卒業生は、NPOやNGOで活躍しています。
国際機関: 国連や世界銀行などの国際機関で、グローバルな課題に取り組む卒業生もいます。
ボランティア: 各国でボランティア活動に参加し、地域社会に貢献する卒業生もいます。
4. その他

フリーランス: ライター、デザイナー、プログラマーなど、フリーランスとして活躍する卒業生もいます。
アーティスト: 音楽家、画家、俳優など、芸術分野で活躍する卒業生もいます。
ミネルバ大学の教育は、学生の批判的思考力、問題解決能力、コミュニケーション能力、異文化理解などを育成することに重点を置いています。これらのスキルは、どのような分野に進んでも必要とされるものであり、卒業生の多様なキャリアパスを支えています。

さらに、ミネルバ大学はキャリアサポートにも力を入れており、インターンシップの紹介、キャリアカウンセリング、卒業生ネットワークの活用などを通して、学生のキャリア形成を支援しています。

選抜基準

ミネルバ大学は、従来の大学とは異なる独自の入学基準を設けています。学力だけでなく、多様な能力や資質を総合的に評価するのが特徴です。具体的な入学条件は以下の通りです。

  1. 高校の成績

GPA: 高いGPAが求められますが、具体的な数値目標はありません。過去の成績から、学業に対する意欲や能力を評価します。
成績証明書: 高校3年間の成績証明書を提出する必要があります。
2. 英語力

英語が母国語でない場合、英語力を証明する必要があります。ただし、TOEFLやIELTSなどの特定の試験スコアは必須ではありません。
オンラインでの面接やエッセイなどを通して、英語でのコミュニケーション能力を評価します。
3. 思考力・問題解決能力

ミネルバ大学独自のオンライン試験を通して、批判的思考力、問題解決能力、論理的思考能力などを評価します。
この試験では、様々なシナリオや課題に対して、自分の考えを明確に表現することが求められます。
4. 課外活動・社会貢献活動

学校内外での活動を通して、リーダーシップ、協調性、社会貢献への意識などを評価します。
ボランティア活動、クラブ活動、スポーツ、芸術活動など、様々な活動が評価対象となります。
5. エッセイ

ミネルバ大学が提示するテーマについて、エッセイを提出する必要があります。
エッセイを通して、自己表現能力、思考力、価値観などを評価します。
6. オンライン面接

入学選考の最終段階として、オンライン面接が行われます。
面接では、志望動機、学習意欲、将来の目標などを評価します。
その他

SATやACTなどの標準化テストのスコアは必要ありません。
推薦状は必要ありません。
出願料は無料です。
ミネルバ大学は、学力だけでなく、多様な能力や資質を総合的に評価することで、個性豊かで優秀な学生を選抜しています。

具体的な問題

試験問題は秘密のようだが、AIに聞いたところこんな例を出してきた。長いが参考まで
Example 1: Logical Reasoning

Question:

You are given a set of cards with symbols on them. Each card has a different symbol on each side.

Card 1: Side A - Circle, Side B - Square
Card 2: Side A - Triangle, Side B - Star
Card 3: Side A - Square, Side B - Star
Rule: If a card has a circle on one side, then it has a square on the other side.

Which card(s) must you turn over to test if this rule is true? Explain your reasoning.

Model Answer:

To test the rule, you must turn over Card 1 and Card 3.

Card 1: This card has a circle on one side. To confirm the rule, you must turn it over to see if it has a square on the other side.
Card 3: This card has a square on one side. To see if the rule is broken, you need to turn it over to check if it has a circle on the other side.
Card 2 is irrelevant to the rule, as it does not have a circle or a square.

Example 2: Interpreting Information

Question:

Study the graph below showing the population of two cities, City A and City B, over a period of time.

[Imagine a simple line graph showing the population of two cities increasing over time, with City A's population growing at a faster rate than City B's]

Based on this graph, which of the following statements is most likely to be true?

a) City A has a higher quality of life than City B.
b) City A has more job opportunities than City B.
c) City A has experienced more immigration than City B.
d) The population of City A will always be greater than City B.

Explain your choice.

Model Answer:

The most likely true statement is (c) City A has experienced more immigration than City B.

Explanation:

The graph shows a faster population increase in City A. While options (a) and (b) could be factors, they are not directly supported by the graph. Option (d) makes an assumption beyond the timeframe of the data. Increased immigration is a common cause of rapid population growth and is the most likely explanation based on the information given.

Example 3: Problem-Solving

Question:

Imagine you are designing a new public park for your city. What factors would you consider to make the park accessible and enjoyable for people of all ages and abilities? Provide at least three specific examples.

Model Answer:

To create an inclusive park, I would consider the following:

Accessibility:

Wide, paved pathways to accommodate wheelchairs and strollers.
Ramps for easy access to different areas.
Sensory gardens with diverse textures and scents for people with visual impairments.
Age-Appropriate Features:

Separate play areas for different age groups (toddlers, children, teenagers).
Quiet zones with benches for relaxation and socializing.
Exercise equipment suitable for older adults.
Inclusive Design:

Swings and play structures that can be used by children with disabilities.
Accessible restrooms with changing tables.
Signage with clear and simple language, and Braille options.
These features would ensure that the park is a welcoming and enjoyable space for everyone in the community.

Important Notes:

Clarity is key: Express your ideas in a clear and concise manner.
Provide reasoning: Don't just state answers; explain your thought process and justify your choices.
Think broadly: Consider different perspectives and potential implications in your responses.
Remember, these are just examples. Minerva's assessment will present a variety of unique challenges designed to assess your thinking skills and how you approach problems. Good luck!

代表的な批判

ミネルバ大学は革新的な教育機関として注目されていますが、一方で批判的な意見も存在します。主な批判点をまとめると以下のようになります。

  1. 教育内容に対する批判

オンライン中心の教育: オンライン授業だけでは、学生同士の深い交流や、対面授業ならではの学びが得られないという意見があります。
実践重視のカリキュラム: 基礎学力がおろそかになり、専門知識が身につかないという懸念の声も上がっています。
コア能力に偏った教育: 「批判的思考」などのコア能力育成に重点を置くあまり、人文科学や芸術分野の教育が不足しているという指摘があります。
2. 教育環境に対する批判

キャンパスがない: 帰属意識や共同体意識が育ちにくいという意見があります。また、学生生活のサポート体制が十分でないという指摘も。
都市移動の負担: 頻繁な都市移動は、学生にとって身体的・精神的な負担が大きいという懸念があります。
学費が高い: 学費が高額であるため、経済的な事情で進学を諦める学生もいるという指摘があります。
3. その他の批判

建学理念と現実の乖離: 理念としては多様性を重視しているものの、実際には裕福な家庭の学生が多いという指摘があります。
卒業生の進路: まだ歴史が浅いため、卒業生の進路や活躍の実績が少ないという点も批判の対象となっています。
これらの批判に対して、ミネルバ大学は様々な改善策を講じています。例えば、オンライン授業の質向上、学生サポート体制の強化、奨学金制度の拡充などに取り組んでいます。

今後の展開

ミネルバ大学は、まだ新しい教育機関であり、試行錯誤を繰り返しながら進化していく段階にあります。批判的な意見も参考にしながら、教育内容や環境を改善していくことが重要です。

具体的には、

オンライン授業の質向上
学生サポート体制の強化
奨学金制度の拡充
などに取り組んでいます。

今後も、ミネルバ大学がどのように進化していくのか、注目していく必要があります。

参考となるサイト、本

ミネルバ大学についてより深く理解するために、参考となるサイトと本をいくつかご紹介します。

ウェブサイト

ミネルバ大学公式サイト: 大学の基本情報、カリキュラム、入学案内など、公式の情報が網羅されています。

日本財団ウェブサイト: ミネルバ大学と包括連携協定を締結している日本財団のウェブサイトです。ミネルバ大学に関する記事やイベント情報が掲載されています。
https://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2024/20240423-101162.html

STUDY HACKER: 日本の教育系メディアです。ミネルバ大学に関する記事や、日本人学生のインタビュー記事などが掲載されています。

A-STAR: 海外大学進学に関する情報を提供するサイトです。ミネルバ大学のメリット・デメリット、卒業後の進路などが解説されています。

書籍

『ミネルバ大学 世界を変革する未来の教育』: ミネルバ大学の創設者であるケン・バウアー氏による著書です。ミネルバ大学の理念や教育内容、設立の背景などが詳しく解説されています。

www.nissan-zaidan.or.jp
ミネルバ大学 世界を変革する未来の教育
『世界を変える思考法 ミネルバ大学で学んだ考え方』: ミネルバ大学を卒業した日本人学生、片山晴菜氏による著書です。ミネルバ大学での学びや経験を通して得た考え方や、グローバル社会で活躍するためのヒントなどが書かれています。

note.com
世界を変える思考法 ミネルバ大学で学んだ考え方

映像で見る

  • A Day in the Life of a Minerva Student: ミネルバ大学の学生の一日の生活を追った動画です。授業風景や学生同士の交流、都市での生活の様子などが紹介されています。

  • Minerva University Student Experiences: ミネルバ大学の学生が、自身の経験や学びについて語る動画です。

  • Inside Minerva Classrooms: ミネルバ大学のオンライン授業の様子を紹介する動画です。教授と学生のインタラクションや、活発な議論の様子などが分かります。

日本でもミネルバ大学に刺激を受けて、各地を移動しながら学ぶというスタイルの学校ができてきているようです。ミネルバ大学について多角的に理解を深めていただければと思います。



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五味洋治 Yoji Gomi
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