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日記・ポリフォニー・門:ジッド『狭き門』からモノローグ・オペラ「新しい時代」へ(4)

4.

献辞の問題。というのもこの作品の被献呈者はアルファベットで示されるばかりで、決して名前が明らかにされることはない。にも関わらず、 誰に宛てられたかについて翻訳者も解説者も無頓着にさえ窺える。あたかも翻訳者にとって、そして多くは翻訳者であると同時に文学研究者で あることを考えてみれば、研究者にとっては自明のことで、今更言及にするまでもないかの如くである。そればかりか、献辞が略されている翻訳すら 存在する。淀野訳、中村訳、新庄訳、須藤・松崎訳および1960年の世界文学全集版の山内訳においては献辞は訳されていないのである。 例えば中村訳の場合、併録されている「田園交響楽」でもそうであるから、出版側の方針ともとれるが、淀野訳、新庄訳、須藤・松崎訳、 および1960年の世界文学全集版はそうとは言えない。「田園交響楽」では、献辞を端折っているのは圧倒的な少数派で、堀・神西訳、神西訳 くらいなものだろう。

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