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サブスクリプションで考える企業 概要 2/X

1/Xからの続きです。

では、Adobeはどのように売上を伸ばしたのでしょう???

当時の状況 -移行前の2011年の売上高は34億ドルで粗利率は97%-

アドビは2011年以前、「Photoshop」や「Illustrator」を単体、もしくはAdobe Creative Suiteのようなセットをボックス売りし、これが同社のビジネスを支えていた。これは、マイクロソフトオフィスなども同じような形態であったため、なじみのある人も多いと思います。

なぜアドビはサブスクリプション型に移行したのでしょう? その理由についてアドビ上級副社長 兼 デジタルメディア事業部門 事業本部長 ブライアン・ラムキン氏は、

「従来の永続型ライセンスでは、流通の関係などもあり18~24カ月に一度、新しいフラッグシップアプリを発売する開発サイクルになります。仮に新機能を開発して、ユーザーにいち早く提供したいと思っていても、そのサイクルに合わせてリリースする必要がありました。当時はこのタイミングで良かったのですが、今はイノベーションのスピードが加速しており、それでは十分ではありません」

と説明しています。

これは、ムーアの法則でも謳われている通り18~24か月でのイノベーション歴から考えても当然のように考えられます。しかしながら、iPhoneをはじめとしたスマートフォンの世界ではApp Storeを通じて下手をすれば日単位でのソフトウェアのアップデートが行われているわけです。

このイノベーションスピードについていくためには従来の18~24か月でのイノベーション(オフィスであればExcel 2007=>2010など)では間に合わない。そのためにサブスクリプションモデルにして、アップデートをタイムリーに行えるようにするということを意識していたのでしょう。

ただ、

企業の考え ≠ エンドユーザーの考え ≠ 株主の考えで

「なぜ好調なAdobe Creative Suiteを切り捨てるのか」「将来的に成長は見込めるのか」などの声も聞かれ、事実この発表の翌日にAdobeの株価は大暴落しました。

とラムキン氏は話していますが、当然社内からの反発もひどかったのだと思います。このあたりのチェンジマインドをしっかりと遂行することにアメリカ型企業の素晴らしさがあるとは感じますが、よくサブスクリプションモデルの企業スタイルに移行できたなと思います。Adobe内部のことを知っている人がいれば聞いてみたいと思っていますが、今は妄想しかできないため、とりあえず外部からわかることだけで考えていきたいと思います。

いずれにしてもiPhoneの誕生によりビジネスモデルが変わったのは、老舗といわれるソフトウェアメーカーも含まれており、Adobeに続いてMicrosoftもOffice365形態に移行するなど、サブスクリプションモデルに移行して負います。

実際の売上の推移

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サブスクリプションモデルに移行した企業は魚モデル(Fish Model)といわれるような形で、Revenue=収益 or 売上が減り、コストが一時的に増える状況になります。いかに、上記の図のTransformation Timeを超えるかが問題になるのですが、Adobeも当然この期間を耐える必要がありました。

2011年にサブスクリプションに移行し、2012年には年間35%も収入が下がりました。しかしその後Transformation Timeが完了し、2018年通期の決算では90億3000万ドルと過去最高の収益を達成しました。その70%以上が定額収益であるといわれています。

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実際に2013年からは、サブスクリプションモデルの大きな特徴が見え、売上が継続的に毎月計上されています(グラフの青色は前払収益。前払による売上が、大きくなっている)。

サブスクリプションモデルのビジネスに転換することで、ムーアの法則に合わせて数年に一度、新規ソフトウェアを製作して、売切型で売上を作っているのではなく、継続的な売上が積み上がっていくモデルにすることで、経営的に、キャッシュフロー的に、より安定した形にしていることがわかります。

しかしながら、実際に多くの企業がサブスクリプションモデルに移行して、またはサブスクリプションモデルの会社を立ち上げて、失敗しているという事実があります。

Key Success Factorは何なのか?ということを次回では見ていきたいと思います。

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