サブスクリプションで考える企業 概要 4/X
さて、サブスクリプションモデルがいかなるものかということは、前回まででおおよそ把握できたはずです。
なお、今までは(引用)と記載しておりませんが、インタビュー内容などは引用させていただいておりました。ここからは完全に私の頭の中にあるもので書き起こさせていただきます。
今まで見てきた通りサブスクリプションは、定額制に近いサービスなのですが、実態は違います。いままでの定額制といえば、定額なだけではなく定格なサービスを提供しているのです。
ダメなサブスクリプション
例えば、最初のほうで説明したラーメンのサブスクリプションもどきがそれにあたります。しかし、これでは1か月間利用して飽きてしまえばそれまでで、拡張性がありませんし、他社に切り替えるスイッチングコストも大きくありません。
昔からある本当のサブスクリプション
一方で、サブスクリプションと呼ばれるものは実は昔からあります。これは、例えばピアノや水泳などのレッスンです。基本的には月謝制となっており、定額制に見えますが、受講者のレベルが上がれば教本のレベルが上がったり、コースが特選になったりします。
こうなってくると、講師と紐づいて自分自身のピアノの弾き方や泳法が身についているので、講師を変えることに大きなスイッチングコストが発生します。結果として、継続的に続けていくことになるのです。
違い
さて、両者の違いが判りましたでしょうか?簡単に言えば、使っている人にカスタマイズして選択できるのがサブスクリプション、プリフィックスしてしまってユーザーに選択肢を与えないのが定額制です。
したがって、サブスクリプションでは企業側でカスタマイズして、ユーザービリティを常に上げ続けることが重要になるのです。
ユーザー視点で見てみよう
ユーザーが使いやすくなるためには何をすればよいのか?
今までの話を総合すれば
1. 複雑ではない
2. ユーザーに選択の余地がある
3. スイッチングコストを上げる
ことが重要になります。
まず、1と2は相反しているのでバランスが重要になります。
例えば、下はWordPressの選択となりますが、4つ(無料も含めれば5つ)の選択をユーザーに与えています。ところが、実際には個人で利用するのであれば価格面を考えると「パーソナル」か「プレミアム」までの利用にとどまり、逆に企業であれば「ビジネス」や「eコマース」を利用せざるを得ないように誘導しているのです。
併せて、3のスイッチングコストを考えれば、
個人の場合、「独自ドメイン」「サポート」「SNSとの連携」などをされてしまうと、後からWordPressを抜け出すには相当高いコストを支払う必要があるため、一度使い始めるとサイトの利用をやめようと思うまで使い続ける(=支払い続ける)必要が発生します。
一方で、ビジネス利用の場合も同じで「個別のサポート」や「プラグイン」は重要ですし、特にeコマースの場合など「海外での利用可能」「配送業者とのインテグレーション」をしてしまえば、よっぽど大きな変革をするまではWordPressから出ていくことは無理になります。
このようにみていくと、WordPressがほかのCMSを圧倒している理由が見えてきます。
一度使い始めると逃げられない。しかも使い勝手が良い。こうなってくるとWordPressを利用し続けるようになるのです。
企業側の視点では?
一方で、企業としてはどのようなことを気にかければよいのでしょうか?
まず、ビジネスとして考えたときにやらなければならないことは、少なくとも月次レベルでのユーザーの解約数(チャーン)と新規加入数を確認していかなければなりません(下は、年間での例です)。
ちょっと考えていたければ、解約率がユーザー視点と結びついていることがわかっていただけると思います。なぜなら、一度ユーザーになってしまえば、「解約するか」、「継続するか」という選択しかないので、継続させるためには、ユーザー視点の使い勝手(ユーザビリティ)を上げていくしかないのです。
一方で、新規加入者に関しては全く別です。一度使ってみなければ、ユーザーは、解約するという選択肢を持つことはできません。ところが、たいていの場合サブスクリプションは(当たり前ですが)有料なので、使ってみるまでのハードルを越える必要があるのです。
新規加入者
WordPressのように誰でも知っているようなサービスであれば、新規加入者に事欠くことはありません。新しくブログをはじめてみようと思えば、まず第1に候補になるのがWordPressなので、世の中にブログやその他のサイトを始めてみようと思う人がいれば、当然半分くらいは何もしなくても流入してくる状態になってします。
ところが、動画配信のようなサブスクリプションはどうでしょうか?
U-NEXT
Amazon Prime
d-TV
Netflixは2019年12月3日に無料トライアルは終了してしまいました。
こうしてみると、1か月間の無料キャンペーンが多そうです。一回使ってみるという点ではハードルを一番下げるのが、初月の料金の無償化となるのでしょう。このようにして初回利用のハードルを下げているのです。
いずれにしてもサブスクリプションは意外に単純な計算式
でできていて、
前期からの継続者 + 新規加入者 ー 今期解約者
継続者の数は変わらないので、解約者を以下に減らして加入者を増やすかということになります。
なので、サブスクリプションモデルで始めた企業は長期間赤字になりやすい!
のです。新規加入を増やすためには当然(無料も含めた)マーケティングコストが嵩むわけで、継続者がほとんどいない状態ですから、収入はほぼないがペイアウトだけが嵩む状態になるのです。
サブスクリプションモデルで始まっていて、赤字のまま上場している会社などもありますが(例:Freee)、本当に継続的に企業が続いていくのかは、ユーザビリティを正しく評価する必要があります。
いくら上場していようがユーザビリティが低い会社は早晩立ち行かなくなるのです
一番危ないのは、解約すること自体を難しくしている企業です。
上の例で挙げたFreeeですが、個人的に危ないと感じていて、解約のハードルを高くすることで見かけ上の継続者を多く見せかけているように感じています。
Freeeを解約するためには電話で行う必要があるためです。電話でしか解約ができない会社は大体怪しいです。
・契約はWebで
・解約は電話で(10時-17時)
電話をかけて人間と話すという行為は、ハードルが跳ね上がります。このようにハードルを上げておいて、ユーザービリティには目をつぶり、見かけ上のユーザー数を増やしているのです。
あまり、1つの企業を攻撃するとまずいのでこれくらいにしておきますが。。。
4回目はここまでにしておいて、次がラストになると思いますが今日本にあるサブスクリプションと呼ばれているサービスを従来の定額制とサブスクリプションに分けて分析してみたいと思います。
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