言葉の宝箱 0149【愛しているからこそ、まちがってしまう。踏みにじってしまう。押しつけてしまう】
ハセ32歳は陰気な男。相棒の沖は30歳だけど可愛い。
コンビを組む二人は違法カジノで働いていたが、
どんくさい沖はバカラのルールが覚えられず失敗ばかり。
ついに200万の損失を返済するよう迫られ、偽宝石売りを始めた。
漸く200万というところで、騙した女に騙され無一文に。
切羽詰まったハセは商店街にたむろする老人たちを見て閃いた。
32歳と30歳の崖っぷち男二人が騙すのは年寄り。寂しさは利用できる。
歪んだ愛を抱え、ジタバタする悪党コンビの切なく泣ける詐欺師小説。
・どんなに良い人でも、今更他人と暮らすのは気づまり P116
・関係ない。その言葉に、鼓膜の奥がきんと鳴った。
誰に殴られた時より強く、大きく P132
・認められたいという感情は、俺にも理解できる。
誰だって持ってる、ごくあたりまえの感情だ P157
・子どもを愛していない親なんていないとか、
親に愛されたくない子供なんていないとか、
そんなのはたわごとだと思ってきた。
けれども、それもまた違ったかもしれない。
愛しているからこそ、まちがってしまう。
踏みにじってしまう。押しつけてしまう。
俺もまた美しく崇高なものこそが愛だと勘違いしていた(略)
すべての愛は正しくない。正しい愛などというものは存在しない。
この世のどこにも P162
・感情をあらわにしている人間を目の前にすると、
かえって冷静になれるものだ P181
・『お年寄り』なんていう生きものはいない。
それぞれ違う心をもって、
それぞれに違う長い年月を生きてきた人たちがそこにいるだけだ P207
・思いやりだとか親切だとか愛だとか、
そんなあやふやなものに寄りかからずに生きていけるんなら、
私はそのほうがいい。シンプルでしょ? P223