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言葉の宝箱 1124【不幸癖、か。そんなものがあってたまるものかと思う。だが、人間には生まれつき、抗えない何かを背負っている者がいる】

『結婚詐欺師(下)』乃南アサ(新潮文庫2004/2/1)

練習場で橋口に声をかけられた江本美和子はその強引な誘い方に驚くが、
結局デートに応じる。
一方、阿久津らの捜査から松川と橋口が同一人物であることが判明したが
被害者の中にかつての恋人、美和子がいるのを知り、阿久津は愕然とする。あの確り者の彼女がなぜ?
橋口と被害女性、そして阿久津の心模様を丹念に追う。
現代の結婚観を浮き彫りにしたサスペンス後編。


・金でけりがつく関係だからこそ、何とかなっている P17

・話ってえのはなあ、
誰かから誰かに伝わる度に、少しずつ尾ひれがつくものなんだよ P41

・孤独な女性に真心のサービスをし、ばら色の夢を売っている。
いわば人助けの商売なのだ。
詐欺師などという呼び方と、
こちらの仕事の邪魔する野暮な警察の存在さえなければ、
何の問題もない P55

・会ったからって、昔には戻れないさ。
大抵の場合は、会わなきゃ良かったと思うものらしい。
思い出は、現実には勝てない P92

・自分の家庭に求めてきたものは、
自分の選択は間違ってはいなかったと思えるだけの、
平和と安定、退屈なほどの無風状態 P93

・不幸癖、か。そんなものがあってたまるものかと思う。
だが、人間には生まれつき、
抗えない何かを背負っている者がいるという気もする。
自分で望んでいるわけではないのに、
何故か、ある方向へばかり曲がっていく者は、犯罪者などにも珍しくない。
何とかして軌道を変えようと、もがき、足搔いても、
小さなつまずきで、すぐにまた元通りになってしまう P205

・女たちはどうして、
「結婚」というひと言に、冷静さを失うのだろうかと思う。
――夢は、いつか覚める P211

・真実を知ることで、何か得することがあるのだろうか(略)
知らない方が幸せだったのに P221


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