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SALEをしないということ

夏や冬のSALEと言えば、特に洋服を扱うお店では恒例の一大イベントです。ぼくもお客様から「いつからお安くなるんですか?」とか「何がお安くなるの?」とSALEを楽しみにしているお声をよく耳にしてきました。ぼくも以前はSALEとなれば、あちこちのお店を回って数多くの戦利品をゲットした想い出があります。

最近は夏が6月、冬は12月からとSALEも早くなっています。6月なんてやっと暑くなってきて、そろそろ夏物を買いにいきたいなというタイミングでスタートするのですから、お客様からすれば嬉しくないはずありません。
前から気になっていたけど、ちょっと高くて手が出ないなと思っていたあの商品が割引になっている!とか普段は選ばないけど試着してみると悪くないしSALEだから買っちゃおう!など、新しい扉を開くきっかけにもなってくれます。お店も普段からお世話になっている顧客の方々に感謝の気持ちを表す数少ない機会ですから、普段あまり見たことがないようなプライスがとび出すことも多くなります。まるで宝探しのようなワクワク感があって、ついつい両手いっぱいに買い物をしてしまう楽しいイベントです。

ぼくが店をオープンする前に、お越しになるお一人お一人とじっくりお話しながら、お客様はもちろん自分たちも一緒に楽しみたい、という想いを妻と確認しました。
そのときにも、SALEについてはかなりの時間をかけて話し合いました。
大勢の方々が、SALEだからとたくさんの商品を買ってくれるのはもちろん嬉しいことです。でも、本当に気に入った一つの品物を時間をかけてゆっくりと吟味してお買い上げ頂く、そして買ったあとも、こんな場所に行く時に着てみましたとか、友達に褒められましたとか、タンスの肥やしになってたあれと相性良かったので助かりましたといったいろんな会話や人間関係が一つの品物から広がっていく、そんなお買い物もぼくにとっては価値があることのように思えます。

yoinでお取り扱いのある作り手の方々とお話していると、聞かなければ知ることもなかったこだわりや想い、エピソードが、一つ一つの作品に丁寧に表現されているということが伝わってきます。そこには、お店が考えるSALEだからといった考えは入り込む余地もありません。構想から実際のデザインやパターン、サンプル作成そして生産、納品と一つの品物が店にならび、お客様の手に渡っていくことは、奇跡のようなことです。その品物の良さを接客販売という形でぼくたちがお手伝いできることは、誇りでもあり、楽しみでもあります。
ぼくも作り手の方からいろいろなお話をききながら、そんな想いを持って作成された品物を、お店の都合で割引販売してしまっては作り手の方の想いまで割引してしまうようでやはり気が引けてしまいます。
可愛い子どもたちを信頼してあずけていだだいている身としては、SALEをせずに、この子達の良さを理解して可愛がってくれる嫁ぎ先に送り出すという気持ちで日々、店を営むようにしています。

ちょっと不便な田舎にあるyoinでは、ぼくたちのそんな考えを実現するためSALEをしていません。その代わり建部町の素朴な自然のように、永く愛着を持っていただける品物を、ゆったりとした時間と空間の中で思う存分お選びいただけるよう、お手伝いさせてもらえたらと思っています。

作り手やデザイナーの方々が、自分の子どものように愛情と手間をかけて生み出した作品たち。
ぼくたちは、作品たちがどんな方に連れて帰ってもらったか、どんな風に使ってもらっているか、を作り手の方にお伝えするとき、とても楽しい気持ちになります。
それを嬉しそうに聞いてくれる作り手の方々の顔を見ていると、作った人、売った人、買った人みんなが幸せな気持ちになっていることにふと気付きました。
この幸せの循環を少しずつ広げ、深めながら繋いでいくことが、ぼくたちの喜びです。

タブチヨシタケ
















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