社長は変われない? 自己観照、自省のススメ

社長は往々にして「自分が正しい」「自分がルールだ」というように見える行動をしています。でも、ご本人はそれに気付けていない。そして、「自分は正しい」「自分がいちばん頑張っている」「社員の努力が足りない」・・・という考え方を持っているがためにうまくいかないことがよくあります。

社長は、人から叱られるなどということはおろか、欠点を指摘されることなどなかなかありません。自らが自己の限界や問題点に気付き、学び、努力して改善しようと思わなければ、そのままの姿で、一生、成長もせずに終わってしまう。もちろん、そんな社長が率いる会社ですから、鳴かず飛ばずということにもなってしまいかねません。

社長自身が変化していくというのは、かなり難しいことだと思います。

かと言って、諦めるわけにもいきません。そこで有効なのが、社長の自己観照、自省です。

実際に取り組んでいただき、成果がありました。

どうしたかと言うと、社長自身に自分の行動を振り返ってもらうための70~100問くらいの設問を作りまして、それについて自分で振り返ってもらう。できているか、できていないか。

「個人としての夢はありますか? あえて言うと何ですか?」

「あなたの経営者としての想い、実現したい企業経営とはどんなものですか?」

「あなたは社員のことをよく理解していると思いますか?」

「社員はあなたのことをよく理解していると思いますか?」

「できない社員に対して、どのように対応していますか?」

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私との間で一対一で実施するよりも、経営者仲間5、6人くらい集まっていただき、皆さんで話し合っていただく。自分の経験談をそれぞれ話していただく。そういう取り組みがかなり効果を上げていましたね。

経営者同士で集まってグループで話し合いをすることによって、経営者としてのあるべき姿ができている人とできていない人の両方いることが分かって、できていない人は「あぁ、やっぱりこういうことが必要なんだな」ということを他の人から学ぶし、できてる人は「自分はできているんだ」と、そして他の人に伝えていくことができます。

社長は自分の考えを上から叩かれて再考するという機会があまりありません。そのため、悪くすると、独りよがりで硬直的な思考のままで、経営改善を図る際、しばしば現場の改善意欲をそぐような逆機能的な行動をとりがちです。そのようにならないために、社長に謙虚に自らを振り返ってもらい、自分で自分を評価せず、どういう思考と行動をすべきか自分で気付いて頂くようにします。

社長の出す回答に対して、私のようなファシリテータがさらに質問をすることで、より深く自ら考えることになります。このようなことを通して、自分の世界観や知らずに掛けてみている色メガネのくせについて、理解するようになります。この段階で社長に変わってもらうことができなければ、これ以降の経営改善の努力は労多くして益少なしになります。

この自省のプロセスで経営者は大きく2つに分かれます。気付きを得て変わる経営者とそうでない経営者です。変わる経営者は、自らの考えの癖や、場合によっては間違いに謙虚に向き合い、それまでの行為を反省し、変わろうします。私のようなファシリテータとの会話も深くなっていきます。もちろん、行動が急に変わるとは言えませんが、気付きは得られるので、その後の経営改善は進みやすくなります。

一方、変わらない経営者は、自分の考えの枠から出ることなく、新たな考えも否定してかかります。多くの場合、自分が正しいと思い込んでいるので、どうしてもこのようになりがちです。いったん自分の考えを手放しして、客観的に相手の言うことを素直に聴き続けることが求められます。

自省するテーマは、上記に示したように、多面にわたります。そこで、素直に自省することによって、自らの経営に想いや志、「経営理念・ビジョン」「ビジネスモデル」「システム化・型決め」「行動環境」などのあり方、それらがいかに関わり合っているかなどに思いを持って頂けるようになります。この段階で十分に自省できることが、それ以降の経営改善に適格さと深さをもたらすのです。

社長の自省を促すために社長のコーチ役をする人には、十分に留意していただかなければならないことがあります。コーチ役をする人はできるだけ質問を中心にすべきで、主観的な見方を押しつけるようなコーチはいい結果を出さないようです。あくまでも、適切な質問をすることに徹して、社長自らに気付いてもらうということです。社長を相手に一対一で自省を促すということは、極めて難易度の高い取り組みです。したがって、複数の社長に集まってもらい、グループに対して質問し、それぞれの考えをシェアする方法が上手くいくことが多いように感じています。

社長の自己観照、自省というのはとても効果があります。素直な心でこれに取り組むことによって、自ら、そして会社が成長する大きなきっかけをつかむことができることでしょう。

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