ゴシャール&バートレットによる人が育つ組織に共通して見られる職場の特徴
職場がどういう条件を満たしていれば社員は働くことを通じて成長することができるのか。どのような行動環境が備われば、社員が仕事を通じて学び、成長するのか。この重要性に初めて言及したクリストファー・A・バートレット及びスマントラ・ゴシャールによる研究結果を見てみましょう。
ゴシャールとバートレットが欧米の大企業20社(日本企業2社を含む)を対象に分析をし、社員が成長している職場の特徴としてまとめたのが画像の図です。
社員が仕事を通じて学習し成長する「個を活かす組織」の特徴を、そうではない従来型の「組織のなかの個」と位置付けられた職場との対比でまとめられています。
従来型の組織では社員に「責任と遂行」が厳に要求されます。「ストレッチ」に対して「制約」。「サポート」に対して「コントロール」。自分で自分を律する「自己規律」に対して「服従」。「信頼」に対して「契約」。
「ストレッチ」というのは、自分ができることよりも一段難易度の高いことに挑戦することです。「こんなことに挑戦してみたい!」というように社員一人一人が取り組んでいくということです。さらに、会社が「いや、あなたの仕事はここまでですよ」というように押さえつけるのではなく、社員が無理をしてでもちょっと背伸びをして、お客さまにより高い満足感を持ってもらえるように努力をする。そうした姿勢を奨励している。そういう組織風土を備えているということがストレッチです。
「サポート」は、上司の役割です。社員があまり育たない組織では、サポートではなくコントロールを強く効かせているということです。個を活かす組織において、上司は部下を管理することではなく、ストレッチや自律を支援して部下が成長するのをサポートするという役割が果たされています。
それから「規律」ですね。これは、正確には「自己規律」というものを指しています。「規律」と翻訳されていたのですが、英文の原著を確認すると自己規律とされていました。ですので、日本語では「自律」に近い概念だと思います。「規律」と言うと会社とか部署で決められたことを自分の意思とは関係なく守っていくというように捉えられますが、自己規律ということで、自分でこうすべきだという風に自分で決めてそれをしっかり守る。こういうことを意味しています。ただ、その自分でこうすべきだというのは組織や自分の価値判断基準に基づいているわけですが、組織と自分の価値判断基準が一致しているということが前提ではあります。その上で、自分で行動を決めることができるということですね。
そして「信頼」というのは、組織メンバー間の上下あるいは水平間での信頼を指しています。
以上の要素がある職場では学習と成長が起こり、社員が成長している。これがゴシャールとバートレットが1998年に著した書籍の中で述べていることです。