【社長】事業に懸ける想い
会社が成長する原動力となる要素、「成長ドライバ」について一つ一つ見ていきましょう。
まず「社長」です。これはとても深く、語っても語りつくせないという気がいたしますが、これまで数多くの中小企業経営者の方々とお話をさせていただいて、私がもっとも重要だと思うポイントに絞って整理してみたいと思います。
まず、経営の原動力として「社長の想い」が決定的に重要だと感じています。事業、経営を推し進めていくためには、社長自身の中に確固たる想いが必要であると。
例えば、別所温泉の上松屋旅館さん。一人旅のお客さんにターゲットを絞って、大変な人気を得ました。それは、ご自身がヨーロッパを旅行した時の経験として、一人旅だったにもかかわらず全く嫌な思いをしなかったし、すごく楽しかったということがあったそうです。翻って自分が経営している上松屋旅館や一般的な日本の旅館を見ると、やはり、一人旅の旅館利用者というのはあまり歓迎されないということがあって、そこにターゲットを絞って一人旅のお客さんが喜んでもらえるような旅館にしたいと考えられたわけです。
その想いを持って、これを実現するためにはどうすればいいのか、どうやって旅館の運営に必要な利益を上げていくのか。一部屋をたった一人のお客さんが使用するというようになると、普通に考えれば効率ががた落ちです。そういう状況にあっても利益を上手に上げていくためにはどうすればいいのかということを徹底的に考え抜かれたのです。
また、一人一人のお客さんに満足してもらうためには従業員一人一人がお客さんを楽しませるという気持ちになってもらわなければならない。どうやれば従業員の人たちがそういうふうに前向きにお客さんに接して喜んでもらいたいと気持ちになるのか。
つまり、上松屋旅館さんの成長プロセスの一番ベースの部分には、社長による「一人旅のお客さんに満足してもらえていない」という、現状に対する強い反省があったのです。それが一人旅のお客さん、一人旅部門のランキング1位にまで成長する原動力になっているわけです。
同じような例はいくつもありまして、例えば新潟の着物ブレインさんも好事例と言えます。
着物は需要が縮減して、市場全体の売上高がどんどん下がってきています。10年ぐらいで市場規模が4分の1ぐらいにまで縮小したそうです。
どうしてそんなことが起きてしまったのか。結局、それは着物業者の努力不足であると。つまり、着物って着るのが大変だとか、着た後のクリーニングも非常に大変。ちょっとシミとか傷がついた時に直すのが大変だとか。
これは着物業者がそのように「着にくい着物」にしてしまったのではないかと強く反省されたのです。そこで、その反省から、人々が気軽に着物を着れるような仕組みを作って着物ブレインさんは急成長されました。今もその成長は継続しているかと思いますが、これらの事例のように経営者の想いの部分が非常に重要ですよね。こうした強い想いが原動力にならないと、安定的に成長していくような会社ってなかなか作れないのではないかなと思います。