社員が育つ会社を作るシンプルな考え方
前回まで、社員の自律性を育むものは何か、また逆に、自律性を阻害するものは何かということを整理しました。
社員の自律性が高まると、社員は会社における自らの果たすべき役割をしっかりと認識し高いパフォーマンスを上げていくことはもちろん、会社の経営を自分ゴトとして捉え、さまざまな環境変化や課題に対して適切な対応をはかろうと積極的に取り組む姿勢を持つようになります。そして、会社のことだけではなく、自身のキャリアについても責任を持つようになり、自分を育てるのはほかでもない自分自身だという意識が強くなります。自律した社員は会社が直面する企業環境変化に敏感になり、適時、的確な対応を図るよう自ら積極的に考え、行動するのですが、それはもちろん会社のためにということもありますが、それ以前に一個の自律した人間として、自身のキャリアに責任をもっているからこそ自ら主体的にそうした対応をはかろうとするものなのです。
こうした観点から見てみると、長期安定的に「社員と会社が共に成長する会社」を作るために、やはり自律というものが重要な要素となっていることがよく分かります。社員の自律性を育むと、社員が自らの意思で勝手に成長するようになり、そして、会社も成長するということです。
最近は「ワークエンゲージメント」「モチベーション」といった概念が注目されていますが、いまだ多くの会社で「社員満足」の如何を気にされているようです。
しかし、社員満足に関連する(であろうと会社側が想定する)個々別々の項目について社員の評価を吸い上げ、評価の低い項目への対応に右往左往することなどよりも、もっと大局的な視点を持って、社員の自律性、そして成長意欲を育むことの方がずっと効果的だと言えるでしょう。
「社員の成長を支援する」と言うと、「人を育てるということに割く時間がない」「外部研修に行かせることくらいしか思いつかないが、社員自身が業務で忙しいと言って行ってくれない」「業績次第で研修にかけられる予算が大きく変化し、継続的な教育ができない」・・・などといった反応が多く見られます。
でも、ほんとうにそうでしょうか?
そんなことよりも、成長ドライバ理論のフレームワークを脳裏に描いて日々経営していれば、また、幹部、上司も成長ドライバ理論のフレームワークをしっかりと理解して日々の仕事に取り組んでいれば、なにも特別なことをせずとも、社員が勝手に育っていきます。いくはずです。
そのメカニズムは、前々回、前回のnoteでまとめた通りですので、そちらを参照していただければと思います。
重要なことは、「社員を育てること」を特別なことと位置付けないことです。
上司・部下間、マネジャー・チームメンバー間の日常的なコミュニケーションにおいて、ほんのわずかな時間、ほんのわずか2,3の会話でも、上司、マネジャーが社員の自律性を育むこと、社員が育つことを支援することを常に意識していさえすれば、社員が勝手に育っていくものです。 (東渕)