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【ビジネスモデル】ターゲット顧客が重視する価値に合わせて自社の提供価値を磨いていく

【提供価値】
お客さまが求める価値。商品・製品やサービスに対して求める価値というのは、一つの商品・サービスに対して複数のものがあるはずです。「品質」であったり「安全性」であったり「イメージ」であったり。例えば、コンビニや自動販売機などで手軽に手に入れることのできるミネラルウォーターにしても、「手軽にのどをうるおせる」とか「相手の嗜好を気にせず無難におもてなしができる」、「安全」などというように、いろいろな価値を有していますよね。

提供価値を考える際、そもそも「低価格」というものはビジネスモデルにおいて「提供価値」とは言えないということを認識しておく必要があります。低価格で勝負しようとすると、従業員とか取引先(仕入先や外注先)に必ずしわ寄せがいきますので、こうした人たちが幸せにはなれません。非価格競争にしなければなりません。

ここで、全ての価値を高める必要はないということがポイントです。

かなり古い事例なのですが、『日経ロジスティクス』1992年1月号に掲載されていた事例がとても分かりやすいので、いまだにこの事例をご紹介させていただいています。

どのような事例かと言うと、製造業の企業における仕入担当者を対象とした運送会社の評価に関するアンケート結果です。

仕入れ担当者ですから、原材料や資材等の納品時にお願いしている運送会社の評価ですね。20項目ぐらいの質問があって、そのうちの18項目はヤマト運輸さんがもっとも高評価でした。「料金」とか「仕事の丁寧さ」だとか。ところが、「今後、あるいは、今後も、もっとも付き合いたい運送会社はどこか?」という設問においては佐川急便さんがもっとも評価されていたのです。しかも、ダントツで。

意外ですよね?

18項目もの評価項目においてもっとも高い評価を得ているヤマト運輸さんではなく、佐川急便さんにお願いしたいという結果になっているのですから。

どういうことなのかというと、これが正に「提供価値」の問題なのです。

画像に示した「属性マップ」を参照してください。
縦軸は「顧客が求める価値」です。その商品・サービスに求める価値について、もっとも重視するものから順に、上から下へ並べたものです。そして、横軸はその会社が提供価値それぞれについて力を入れる程度です。

例えばウォルマートがターゲットとする顧客について属性マップを描くとすると、顧客が重視する価値は、上から順に、「低価格」「幅広いジャンルの品ぞろえ」「地方での利便性」「価格の安定性」・・・と続き、「同種商品の選択肢の多さ」「買い物の手伝い」「店の雰囲気」などは、さほど重視されず下の方にプロットされるでしょう。

これに対して、ウォルマートが力を入れる程度は、顧客が重視する程度が上がれば上がるほど、その提供価値に対してウォルマートは力を入れているというように、折れ線グラフは右肩上がりになっているはずです。

お客さまが求めている価値を提供することに力を入れていくというのが、筋の良いビジネスモデルだと言えるです。お客さまが求める価値を下から上へ順に並べて、それに合わせて、力を入れる程度を上げていくということです。

この属性マップの考え方からすると、上述のメーカーの仕入れ担当者が今後もっともお付き合いしたい運送会社というアンケート調査の場合、(これは25年以上も前の事例なので、現在では状況が全く変わっているものと思いますが)ターゲット顧客である向上の仕入れ担当者が調査対象だというところがポイントとなります。

工場の仕入れ担当者が最も求める価値というのは、「料金」とか「仕事の丁寧さ」ということよりも、「絶対に時間に遅れない」「約束した時間には何があっても届けてくれる」「嵐が来ようが、槍が降ろうが(笑)、絶対に届けてくれる」という安心感なのです。ラインが止まってしまいますから。

佐川急便さんは、これに対して、(少なくとも当時は他社よりも)時間に遅れずに届けるという点を重視して、これを最大の提供価値として提供しようという戦略だったのでしょう。それを実現できる「価値を生む方法」も考えていたし、徹底していたことでしょう。

だから、他の18もの要素でヤマト運輸さんよりも低い評価に甘んじていても、メーカーの工場の仕入れ担当者というターゲット顧客からは強く支持されたということです。

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