”幸せな会社”の社長が大切にしていること
「就業規則の神様」と呼ばれる社会保険労務士、下田直人さんの近著『"幸せな会社"の社長が大切にしていること』。「幸せな会社」と、ここでも近時注目されているキーワードが登場しています。
著者の下田直人さんは2002年に社会保険労務士として開業され、2005年には『なぜ、就業規則を変えると会社は儲かるのか?』(大和出版)を上梓しています。就業規則を単に労働基準法を守るため形式的に作成するのではなく、中小企業の社長の「会社や従業員に対する想い」や、「社内を活性化する仕組み」を規定として就業規則に落とし込むことによって、社長の想いが伝わり、社員のモチベーションにも影響を及ぼすことができると説く書籍で、「この一冊で会社も従業員も”ハッピー”になる」と、2005年当時から経営者と社員の関係を「労使」ではなく「幸せを実現するためのパートナー」と位置付けた、斬新な内容となっていました。
就業規則をこのように捉える下田直人さんのアプローチは、単に労働関連諸法規の手続に終始する社会保険労務士とは一線を画し、全国の中小企業経営者の「経営」支援へと展開していきました。コーチングのスキル、ファシリテーションのスキル、陽明学の知恵、社会保険労務士としての知識と経験をフルに活用して、社長の頭の中をクリア化することを自身のミッションとし、仕事を通して見てきた社長の数、実際に話を聞きに行った社長の数は優に1,000人を超えているといいます。
このように、全国の中小企業経営者と深く関わることを通じて下田直人さんが見出したのが、「”幸せな会社”とは、どのような会社か」、そして、「”幸せな会社”の社長の7つの共通項」でした。
読者は本書を通じて、なぜ「幸せな会社」を志向することが大切なことなのか、また、「幸せな会社」とするために何をなすべきかをクリアに理解し、行動に移すことができるようになります。
「"幸せな会社"の社長は〇〇〇をしている」という7つの共通項を、それぞれ関連する事例やエピソードとともに読み進めていくと、7つの項目がそれぞれ独立したものではなく、社長という一つの人格の中に統合されていてこそ効果を発現するものだということが感じられます。本書に掲げられていることのどれか一つでも取り入れることによって改善を図るというようなものではなく、社長の人間力を高めること、その遠大な道のりの羅針盤となるものがこの一冊なのでしょう。
”幸せな会社”の社長は、「損得」より「自分の感覚」を大事にしている
”幸せな会社”の社長は、経営理念を「良心」と「天命」で決めている
”幸せな会社”の社長は、「自分磨き」への投資を惜しまない
”幸せな会社”の社長は、「周りは味方だらけ」と思っている
”幸せな会社”の社長は、従業員に「プラスの感情」をたくさん与えている
”幸せな会社”の社長は、「共に」という言葉を大切にしている
”幸せな会社”の社長は、「幸福」を届ける範囲を広げていく
これら7つの要素を先天的に備えている社長、あるいは、人間力を高めるため不断の努力を重ねた結果これらの要素を備えた社長はともかくとして、これから「幸せな会社」を目指す社長にとっては、通常のノウハウ本のように一度読めば終わりというものではなく、常に座右に備えて日々を振り返るために活用することが望ましいでしょう。
「ある程度できている」という社長にとっても、ハッとさせられるエピソードや事例があるはずです。
「社長」を高めるために極めて有用な一冊。強くお薦めします。(高橋)
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