成功するビジネスモデルの「集客」→「提供価値」→「課金」
会社が成長する原動力となる要素、「成長ドライバ」の一つ、「ビジネスモデル」について続けます。
「顧客」→「提供価値」→「価値を生み出す方法」の順番で考えることが大切だというご説明をしましたが、成功するビジネスモデルのカギとしてもう一つ、「集客」→「提供価値」→「課金」という流れで考えることも重要です。
「集客」、すなわち、どうやって見込み客と出会うか。また、見込み客に自分の会社の商品やサービスの価値をどうやって知ってもらうかということです。
そして、価値を提供して課金します。課金方法は多様です。売り切りであったり、サブスクリプションと言って継続使用してもらい、継続的にお金を払ってもらうとか。こうした様々な課金方法を踏まえて、顧客と提供価値にフィットした課金方法を工夫するということが高収益化につながります。
ここでのポイントは、「顧客」→「提供価値」→「価値を生み出す方法」という3つのパーツを考えるということと、「提供価値」と「課金」は独立に考えてよいということです。
これからのビジネスを考えていく上で極めて重要なことなのですが、通常は商品を売る。そうして、その対価としてお金をもらう。商品の価値とその見返りにお金をもらうというように、商品の流れとお金の流れが対応しているわけです。ところが、必ずしもそうなっていないビジネスがいろいろと存在しているのです。
例えば、小料理屋の女将さんについて考えてみましょう。
この例がとても分かりやすいのではないかと思い、よくお話ししています。
「小料理屋さんで一杯やる」・・・というのは、なかなか魅力的なことですよね。そうして一日の疲れを癒やされるという方も多くいらっしゃることと思います。何が魅力で行くかと言うと、女将さん(あるいは大将)とお話をすることでストレスが解消できたり、いろいろと相談に乗ってもらえたり、また、人と人とのふれあい、関わり合いみたいなものに価値を認めて出かけるというケースが結構多いのではないでしょうか。
女将さんの立場から言うと、話し相手になったり、お客さんのお話を聞いて自分の考えを少しお話ししてあげたりと、ちょっとしたカウンセリングのようなことを提供していますよね。そうすると、女将さんが提供している価値というのは、ひょっとしたら、お料理とかお酒ではなくて、カウンセリングという価値を提供しているのかもしれません。
でも、「カウンセリング代として、3000円」・・・というようには、なかなか請求しづらい。それに、そんな請求をしていたら、なんだか占い屋さんみたいで、小料理屋という業態からかけ離れていってしまう。
だから、実際に提供している価値は「人としての 癒し」であったり「カウンセリング」であったりするのだけれども、お金はその名目でいただくのではなく、お料理代とかお酒代としてもらっているのです。つまり、提供している価値と課金している対象が違うということですね。
ある意識調査で、日本人は1980年以降「物よりも心の豊かさが大事だ」と回答する人の方が、逆に答えた人を上回るようになりました。その傾向は2011年の東日本大震災以降さらに強くなっていると思います。
物の豊かさよりも心、感性、絆、そういうものが求められる時代になってきていて、今後ますますこの傾向が強くなっていくのでしょう。ところが、そのことを前面に打ち出したのでは、なかなかビジネスにしづらい、しにくいということがあります。それは物とかサービスのようにすぐに課金できるようなものではないと考えがちだからです。
でも、小料理屋の女将さんは既にそれをうまく実現していらっしゃるのです。だから人間的なものを価値として提供していくということができれば、必ずビジネスにできる。課金対象を別に持っておけばいいということです。
小料理屋の女将さんのビジネスモデルというのは、今後のビジネスを考える上に非常に有望なものであるということがお分かりいただけたかと思います。
同様に、「紙芝居のおじいちゃんのビジネスモデル」というお話もよくさせていただいています(笑)。
最近はあまり見かけないかもしれませんね。私が幼少の頃は紙芝居屋さんがいらっしゃって、紙芝居を見せてもらってお金を払うんですけども、おじいちゃんは「紙芝居代」としてはお金を受け取らないのです。水飴であったりおせんべいだったり、そうした駄菓子を売るわけです。子どもたちはお菓子を食べながら紙芝居を見る。
紙芝居屋のおじいちゃんからすると、紙芝居を見せてお金を取るっていうのは、特に小さい子どもたち相手ですから、なんとなくやりにくいじゃないですか。でも、駄菓子で課金するというようにすれば、売上自体は立つわけですから、ビジネスとして成り立つと、こういうわけです。
今後のビジネスを考えていく上で提供価値と課金というのを独立で考えれば、今必要とされるような価値、これでもっともっと多様なビジネスができるのではないかと考えています。