100%子会社がグループ全体の「良い会社づくり」を牽引。わずか2年で大きな成果を上げるブリヂストンBRMの挑戦
一般社団法人豊島いい会社づくり推進会の7月度企業視察会では、同会法人会員でもあるブリヂストンBRM株式会社様を訪問しました。
リトレッドタイヤ製造専業の株式会社ブリヂストンの100%子会社です;
https://bs-brm.jp/
(なお、ブリヂストングループによるリトレッドタイヤのマーケットシェアは約50%で、ブリヂストンBRMはその約8割(マーケットシェア約40%に相当)の生産を担っています)
私が初めてブリヂストンBRMの皆さんとお会いしたのは、2017年7月。同年4月に株式会社ブリヂストンから転籍し、BRM社の代表取締役社長に就任された須藤克己さんを中心に、これから「良い会社づくり」に取り組まれようとされていた頃でした。
大手事業会社のグループ会社(しかも「100%子会社」)で、単一事業会社で、親会社から割り当てられた生産計画にしたがって生産管理をし、親会社のみに製品を販売する。トップは親会社から派遣され数年ごとに交替するため、子会社独自の経営方針が立てられるわけでもなく、社員もそれを期待していないという、ブリヂストンBRM社もそうした典型的な「子会社」、「関連会社」の一社として粛々と生産活動に取り組まれていた会社でした。
しかし、58歳でブリヂストンBRM社へ転籍された須藤克己さんはその状態に甘んじることはありませんでした。社員がもっと生き生きと高いモチベーションを持って仕事に取組み、成長を実感し、家族とともに幸せな人生を送ることができる。そんな会社を作りたいという意欲を持って代表取締役社長に就任されました。
その思いの原点は、数年前に書店でたまたま手に取った『日本でいちばん大切にしたい会社』(坂本光司著。あさ出版)。読後に上司と「グローバルマーケットで躍進を続けるリーディングカンパニーでも、こうした会社づくりの視点があってもいいのではないか」と話したという須藤さん。子会社へ来て、「まずは、ここから」と、「良い会社づくり」をご自身の最大の経営テーマとされたのです。
須藤社長はさっそく、総務・管理部長の吉松茂さんらとともに、『日本でいちばん大切にしたい会社』シリーズに登場するようなお手本となる全国のいい会社や、良い会社づくりに関連する各種セミナーや講演会に足繁く通うことから着手されました。
ブリヂストンBRM社と一般社団法人豊島いい会社づくり推進会との出逢いも、広島で開催されていた「人を大切にする経営学会」中国支部設立記念企業視察会・講演会がきっかけでした。当会の理事も参加していたこのイベントに、須藤社長と吉松さんがわざわざ埼玉から出張で参加されていたのです。
このように精力的なリサーチ、勉強を重ねられてはいましたが、親会社からの出向・転籍者は「代表取締役社長」のみ、それ以外は全員がプロパー社員で、人事交流はいっさいなし。数年ごとに社長も交替するという状況が長年続いていた同社ですから、社内での反応は「いまいち」だったそうです。私が初めて須藤社長や吉松さんらにお会いしたのは、これから社内でどのようにして「良い会社づくり」への共感を拡げていこうかと思いあぐねておられたころのことでした。
それからわずか2年しか経過していないこのタイミングで開催されたのが、今回の一般社団法人豊島いい会社づくり推進会による企業視察会です。
吉松さんからの「まだ道半ばなものですから、これからこうしたことに取り組んでいきたいという途中経過のご報告として位置づけてください」という事前のお言葉を真に受けて臨んだ視察会でしたが、その期待を完全に裏切る驚愕の視察会となりました!
・・・わずか2年で、ここまで「良い会社づくり」を進められたのか。
「良い会社づくり」に必ずしも共感が得られていたわけではない状況からスタートして、わずか2年で、社員の皆さんの言動、事務所や工場のゆきとどいた整備、整理・整頓は、「日本でいちばん大切にしたい会社」たちとまったく同様のレベルにまで達していたのです。
須藤社長の強力なリーダーシップ、そして吉松さんを中心に組織された「活きいきプロジェクト」によるポイントを押さえた合理的で効果的な改善施策、また、須藤社長と活き生きプロジェクトメンバーの強い想いが300名の社員の心を動かしたのでしょう。
「活きいきプロジェクト」の活動は、企業理念の浸透と実践により社員のベクトル合わせと成長を目指すという根本的なところからスタートして、①マネジメント、②人財育成、③風土・文化、④コミュニケーション、⑤人事・福利厚生、⑥黒字化・顧客満足の6大分野に及びました。
「社員の人間力向上のための取り組み」
「社員の働きがい・モチベーションアップの取り組み」
「感動する工場見学受け入れづくり」
「感動する3S」から「まねできない3S」へ
「環境経営」・「健康経営」・「ダイバーシティ」+「良い会社づくり」の柱で「企業価値」・「BRMブランド」を向上させる
「社員が活きいきと働き、成長する会社にするための人事労務戦略」
SDGs
「定着率向上に向けた従業員満足度アップへの取り組み」
・・・等々の多岐に渡るテーマについて、それぞれ診断、アンケート調査などを基に現状把握するところから着手し、目標を設定し、効果的・効率的な施策を選定し取り組む。
効果測定をしながら施策の改善に継続的に取り組むとともに、理解・共感を拡げるためのさまざまな発信も欠かさない。プロジェクトメンバーの皆さんの貢献は極めて大きなものがありました。
わずか2年で「良い会社づくり」をこれだけ進めることができるのか。大企業のグループ会社、100%子会社でもこれだけのモチベーションをもって組織変革を実現することができるのかと、大いに勇気づけられる事例発表、企業視察会でした。(高橋)