「成長ドライバ」間の動的な関係性
成長ドライバ理論のフレームワークを用いて、中小企業の成長を駆動する要素として5つのメインドライバ(「社長」「経営理念・ビジョン」「ビジネスモデル」「システム化・型決め」)、行動環境の内訳としてのサブドライバ(「ストレッチ」「サポート」「自律」「規律」「信頼」)があると説明し、それにとどまらず、ドライバ間の整合性や、ドライバが他のドライバへ影響を及ぼす影響の伝播を考慮することの重要性について言及しています。
しかし、いざ実践ということで、自社の目の前にある課題に取り組む際には、どうしても、個別のドライバ、アンケート設問項目へ注目してしまう経営者の方が多くおられます。
成長ドライバ理論のフレームワークから「経営の有効なモデル」を表現すると、各ドライバがそれぞれ高レベルにあることに加え、ドライバ同士が整合性を保ちながらダイナミックに刺激し合い、相互に引き上げ合って上昇スパイラルを描いていくということになります。
しかし、これから「良い会社づくり」に一歩踏み出そうという会社は、大部分がそこまでのレベルには到達しておらず、むしろ、ドライバ間の整合性が保たれていない、あるドライバが他のドライバへネガティブな影響を及ぼしているという状態にあることが多く見受けられます。
そのような状態にある会社では、各ドライバを個別に捉えて改善を図ることの効果よりも、他のドライバへネガティブな影響を及ぼしているドライバがあれば、そのネガティブな影響を小さくしていく取り組みの効果や、他のドライバと整合性がとれていないドライバの改善を図ることの効果の方がずっと大きいということが言えます。
「良い会社づくり」の第一歩は、自社の現状を的確に把握するということですが、その後に続く改善工程は、何からどのように取り組んでいくのかという優先順位、プロセス・工程を適切に設定することが肝要なのです。
「必ずしも良いとは言えない、ごく一般に多く見受けられるような会社」が「良い会社づくり」に取り組むというのは「パラダイムシフト」であり、これまで/現状の「ありきたりの姿」からの「延長線」上で捉えるべきものではありません。
したがって、現状の診断結果から改善工程を構築する場合、「良い会社づくりの望ましいステップ、フロー」に沿ってこれを行うべきなのです。
「良い会社づくりの望ましいステップ、フロー」というのは、おおよそ下記の通りです;
① 社長が、社長自身の個人理念を見つめ直すこと、会社や事業を通じて何を成し遂げたいのかを再考すること、それを踏まえて経営理念・ビジョンを明らかにすること、経営理念・ビジョンに基づく短・中・長期の経営方針の骨格を策定すること・・・が、まず重要。
② 次にこの社長の諸方針を幹部に伝え、理解してもらい、これを実現するための「一枚岩となった経営陣」を構築すること。これが第2ステップ
③ ①の前提として、社長と幹部、社長と一般社員、幹部と一般社員の認識・評価のギャップについて、その要因を明らかにしておくことは重要。
④ ①・②が不十分な状態でいくら「良い会社づくり」のための施策を講じたところで、その効果は限定的なものにとどまるということを認識した上で、
・幹部による「経営力」の改善を目指すため
・具体的な施策を実行することを通じて「良い会社づくり」へ舵を切ったことを一般社員に認識してもらうため
という目的を持って、個別・細目テーマについて改善の取り組みに着手する。
⑤ 一定の期間を経て、2回目の診断を実施する。なんらかの変化が起きているはずです。その変化は①②において想定した通りのものとなっているのか検討します。想定した通りであれば、そのまま個別・細目テーマについての改善の取り組みを継続しますし、想定した通りでなければ、個別・細目テーマの選定やその改善手法に誤りがあるはず。再検討、再構築をした上で、新たな個別・細目テーマについての改善の取り組みに着手する。
以上が良い会社づくりの望ましいステップです。
①・②は継続課題。その上で、④→⑤を繰り返していく。
この改善・成長ループを回り、上昇する過程で、取り組みの内容も進化・深化し、社員のレベル(「人間力」や「社員の個人理念」、さらに「実務能力」)が向上していくこととなるのです。