非日常的な朝
朝起きたら、ホテルのベッドの上。
カーテンの隙間から差し込む光は明るかった。
ケータイを見ると、AM6:34
隣には私を抱いたまま寝ている君の寝顔があった。
夢のような懐かしい夜から朝になったことを思い知らされる。
君の頭をそっと撫でた。すると、君はそっと目を開けた。
「おはよう。」
君とふざけ合ったあの夜は、夢のようだった。
曖昧な記憶を脳裏に巡らした。
君は優しく抱きしめてくれた。
眠りにつく前に君が言ってくれたあの言葉を思い出した。
「一人から愛されたいのか、全員から愛されたいのか、どっち?できるならば、俺だけをみてほしい。」
夜を懐かしむように君はキスを落としてきた。
私は夜と同じように君を拒んだ。
君自体が嫌な訳では無い。
ただキスは少し苦手なだけなんだ。
君は困ったような顔をした。
「嫌なことしてごめんね」と言って、また抱きしめてくれた。
そんな朝だった。
朝だからか、いつもより声が小さくなってしまう私の声に耳を傾けるようにそっと耳を近づけてくる。
そんな君が少し愛おしく感じた。
夜よりも少しだけ熱い朝を過ごした。
初めてなことも経験した。でも君を満足させる前に私は痛みに勝てない。最後なんて言葉は程遠い。
そんな私でもそっと優しく抱きしめてくれた。
そのあとは時間が流れていくのを感じながら、ずっと抱きしめてくれた。気がついたら、意識を飛ばすように二度寝をしていた。学校のクラスの同級生が出てくる不思議な夢を見た。
ホテルを出る準備をする時間になった。
何もなかったかのようにシャワーを浴びた。
ドライヤーで髪を乾かしてもらった。
荷物を整理して、コートとマフラーを巻いた。
2人は手を繋いで部屋を出た。
彼氏でも彼女でもない浮ついた関係のお話。
セフレでもない、ソフレでもない、友達以上恋人未満のお話。
非日常的な朝のお話。