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ローストビーフ丼とざるそば

何だかもやもやして、有休をもらいちょっと遠くまでご飯を食べに行ってきた。

【何だか】の原因は読んで下さる方には些細なことかもしれない。
でも自分にとってはとても不愉快な出来事だった。

開店と同時に入ったお店の窓際に座る。
目の前で水車がぐるぐると回っている。
インスタグラムでこのお店見つけて、食べたいと思っていたローストビーフ丼のセットを注文する。再び視線を戻し窓際の水車を眺める。
ぐるぐるぐるぐるーー…。

同僚の結婚式が近々ある。
我々仕事関係者も招待したいという話があった。
しかし、土日祝も関係ないサービス業…全員参加はできない。

「なので、酔狸さん1人で仕事してもらえませんか??」
「あ、いいよ…ってえ??」
「この日は1人残ってもらえればじゅうぶんだと思うので」
新郎新婦側からのお願いだった。

強がりに聞こえるかもだが、(失礼ながら)その同僚の結婚式など微塵も出席したくはない。
仕事関係者全員が参加できるはずもないのは誰でもわかるので、辞退する旨を伝えるつもりでいたのだが。
何かそれはそれで違うのかなー、と思う。

「遠方ですし、帰ってくるのも遅くなりますし…」
とにかく辞退してほしい。いや、本当は来て欲しいんですよーという建前の壁を遥か高く飛び越えて『出席しないって言って、私達のために仕事して!!!』というミサイルが頭上に落ちてきた。

お店のお姉さんが私の前に料理が並べられたお膳を置く。
なんというボリューム。
蕎麦からいただくが箸で掴むと伸びて伸びてなかなか切れない。
一口啜ると、モヤモヤした胃の中がちょっとすっきりする。

「わかった。大丈夫残るから」
失礼じゃない?無礼じゃない??そんな言葉が頭に浮かんだが言葉にせず呑み込んだ。
もしかしたら自分の心が狭いだけかもだし…。
言った本人はほっとして「よろしくお願いします」と去っていった。
これでこの話を終わりにしてくれれば良かったものを。

ローストビーフ丼て今までご飯が赤くなるイメージだったけど、これはなっていない。
お肉も牛特有の嫌な臭いがしなくて食べやすい。

その日の夜遅くにDMで同僚から「言い方が悪かった」と謝罪のメッセージを貰ったが、この文章もなかなかのものだった。
燻っていたものを再び発火させる程度には。
でもお祝い事だしな、と無難な返信をして眠りについた。それでもまだ同僚のターンは終わらない。

米の炊き加減が絶妙で、肉と一緒にかき込む。
味変で卵黄を崩す。プチッ、トロ~~。さらに味が濃く滑らかになる。美味い。

それから数日、その同僚とは仕事で会うこともなく(電話の取り次ぎくらいはした)経過したが、またもや私のもとに現われ、直接謝罪をされた。

『何だよー!蒸し返してくんなよっっ!!!もういいから!!!!』

心の声は大きくなる。
「もし式に来たいって強い気持ちがあれば調整しますよ」
「……………あ、大丈夫ナンデオキニナサラズ」
もうまともに取り合いたくなかった。

多分その子は惨めな気持ちにさせてしまった私を何とかしたいと思っているんだろうけど思いっきり逆効果だよーって冷静に考えている自分もいた。
うん、極力この子とは今後関わらないようにしよう。

悶々とした気持ちも美味しい物を食べれば晴れてゆく。
米粒一つ残さず、お膳は空になった。
お会計をする ¥1600  安!!!
数年前ローストビーフ丼が流行った頃、単品でもこのお値段以上のローストビーフ丼を食べたが今日のはその100倍以上美味しかった。

嫌な気持ちを引き摺らないように美味しいご飯で上書きをする。
これだから美味しいもの探しはやめられない。

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