ベッドと照明のスイッチ ~ドイツ将校的な、怠け者の真骨頂
寝床に入って、電気を消そうとするとき、皆さんはこれまでの人生でどんな工夫をしてきただろうか。
たとえば、天井にぶら下がる引き紐付きのペンダント照明なら、布団から出ないで操作できるように、紐をながーく延ばしてガチャガチャやってみたりしたのではないだろうか。輪ゴムをつなげたやつなんかでやると、離したときに勢い余って先端のオモリがサークル蛍光灯にバチーンとあたって肝を冷やしたり。
同意された皆さん、たぶんアラなんとかと呼ばれる世代より上だと思いますが、親近感しかありません。
ここ数年では、照明器具をLEDにしましょうね、という政策が大々的に繰り広げられている。あまり言われていないが、以前の天井照明に使われていた蛍光灯に廃番品が増えてきたり、そうでなくても数が出なくなったことで交換用のものが高価になってきた。なので古い器具を維持するのも大変なのだ。
これ、水俣条約というのがあって、拡散すると健康に被害を及ぼす、水銀を使った製品を順次製造中止にしているのだが、蛍光灯も2027年までに製造中止にしましょうね、と締結国会議で決めたことも背景にある。そんなこんなで、否応なく替え時になってしまったということである。
でも、シーリングライト(天井にくっつける平たいやつですね)などの照明器具は、LED化が進んだことで、調光などの機能もついてくる。なので、電池式の手元リモコンが当たり前についてくるようになった。
これが、高齢独居の皆様にも重宝されている。皆様、夜間になると身体が動きにくくなったりして、転倒リスクも増える。なので、ベッドの廻りで一通りの寝支度ができると有り難いのだが、その最後の仕上げに消灯が必要になる。また、夜間の排泄などの際には照明をつけてから移動したいですし。
なので、介護のために寝室を階下に移動したときなどに、就寝時スイッチ問題が発生したときには、まず照明器具をLEDシーリングライト(リモコン付き)に交換してしまうのが手っ取り早い。天井に引っ掛けシーリングコンセント(丸でも角でも)がついていれば、大抵はなんとかなる。
これ、そこまで頑張らずとも自分でできます。レッツチャレンジ。
参考まで、ちょっと事務所の照明器具をつけ外ししてみましたよ。
ここに、照明器具に付属のアダプターを取り付けます。
そして照明器具(ドーナツ状の穴があいている)をそこに差し込む。
で、ひょろっとでている電線を端子に突っ込む。
主電源は切ってからやりましょう(悪い例でした)。これにカバーをつけて完成です。
ドライバーとかなんにも要りません。背丈と天井高を計算し、足場だけしっかり整えてチャレンジだ。
ゼークトの組織論と呼ばれるものがある。ワイマール共和国時代の軍人であるゼークトさんが述べた、人の利口さと怠け心という2方面からの、ざっくりとした分類である、と言われている。
念の為ウィキペディアさんに確認したら、これハンス・フォン・ゼークトさんではなく、同時代のクルト・フォン・ハンマーシュタイン=エクヴォルトさんの言らしい。本当はハンマーシュタインの組織論であった。
話を戻して。
この話のポジティブなところを取り出すと、利口な怠け者の存在がクローズアップされたことにあると思う。出木杉くんのような、利口で勤勉な人だけが組織には大事ではないどころか、利口な怠け者は上級将校向きだ、面倒くさがりだから頭を使い、人に指示を出すことが得意になるので、と言ったとのこと。参謀総長まで上り詰めたハンマーシュタインさんの言ですから、彼もかなりの怠け者であったに違いない。
金槌石というごっつい苗字だけはある。きっと動かざること山のごとし。
さて、そんな有能な怠け者の皆さまが、最近いろいろつくってくださっているものに、スマートハウスとか呼ばれる概念の製品群がある。住宅の電気関係の制御をみんなスマートフォンなどと連動してしまえ、みたいな概念である。
まあ便利なんだろうけど、みんな買い替えが必要になるんだろ、商売上手だなあ、みたいな生暖かい目で自分は見ていたのだが、SwitchBotという会社のコレを見た時、こいつは!と思ったのだ。
スイッチ本体を通信対応品に交換するのでなく、電池式のデバイスで、既存のスイッチに物理攻撃を加える。こんな目からウロコのアイデアが!
たまたま、天井が高くて照明交換が難しそう、そして夜間の歩行がしんどくなってきた、iPadを使いこなしているご利用者さんがいらっしゃったので、早速これをお勧めしたところ、ご家族はちょっと取り付けに苦労はしたそうだが、なんとか使えているよ、とのこと。そこで撮らせていただいたのが、トップの画像です。
そしてこの会社の製品群、上に述べた照明器具やら、カーテンの開閉やら、電気錠やら、加湿器やら、掃除機やら、いろいろやってます。そして見守りカメラ系も超充実。
個人的に、機会があったら使ってみたいと思うのがコレ。
まさか、E26のレセップがここで復権するとは。白熱電球を使った照明器具デザインなどをやっていた設計事務所での経験は無駄ではなかった。
ただし、これらの製品群、室内にwi-fiを導入していることが利用のための条件になる(先のスイッチの奴など、一部はBluetooth接続もできるけれど)。
なので、要介護予備軍の皆様、まずはwi-fiを入れましょう。ネットジャンキーになるかも知れないが、テレビばっかり見ているよりは良いのでは、と思います。そして、それが真価を発揮するのは、みなさんがいろいろ不自由なことが増えたときです。
でも、日本のメーカーからこういう製品が出てこなかったのは、ぐうたらとか怠惰を伸ばす教育をしなかったからなのかも知れないですね。
勤勉ばかり推奨した結果が今なのね、などとも思ったりするのでした。