某日のブログから 2015年 動機付けのために
某日のブログから
あるところで、一般公開していないブログを書いています。週一くらいの更新です。昨年度のブログの中から、ある日の記事を再掲していきます。
動機付けのために
岡山洋一です。
今週は、月曜日(9月8日)に苫小牧近くの福祉施設で会議の手法研修、火曜日夜には大学でのプレゼンテーション研修です。水曜日から金曜日までは、研修のない日です。予定されていた研修が延期になり、今週は空き時間ができました。この時期の研修がない日は、とても貴重です。たまっている仕事を片付けていきたいと思います。
先週もある福祉施設で研修を行いました。職員の仕事へのモチベーションの話になり、どのようにするとモチベーションが向上できるかという話になりました。
動機付けの方法には、さまざまなものがあります。褒める、認めるなどの方法、認知行動療法、コーチングによる方法などです。
人間の欲求による動機付けで有名なものに、マズローの欲求5段階説があります。アブラハム・マズローは心理学者ですが、マネジメントの本も書いており、動機付けについても言及しています。
マズローは、人間は多様な欲求を持っており、それらの欲求は同時に存在しているのではなく、基本欲求からより高い欲求へと段階的になっていると主張しました。そして、ある段階の欲求が満たされたとき、初めて次の段階の欲求が顕在化してくると主張しました。
マズローの言う段階的な欲求とは、次の5段階です。生理的欲求から上へ行くにしたがって、より高次の欲求になっていきます。
・生理的欲求
空気、水、食べ物、休息、睡眠などの生命の維持に必要な欲求
・安全と安定の欲求
生活環境の中に存在する危険から自らを守るために、安全や安定を保ちたいとする欲求
・帰属と愛情の欲求
集団の中に仲間として受け入れてほしいとか、満足すべき密接関係を結びたいとする欲求
・自尊の欲求
自分が他の人にとって有用な存在であり、価値ある人と認められ、尊敬されたいという欲求
・自己実現の欲求
自分自身の能力を発揮し、自己啓発を続けて、自ら願う理想の自分に近づきたいとする欲求
生理的、安全と安定、帰属と愛情の三つの欲求は、欠乏に基づく不均衡を是正しようとする欠乏欲求(deficiency needs)です。これらの欲求が満たされると、その欲求はなくなります。お腹が一杯になると食欲がなくなる、十分睡眠をとると、それ以上寝たいとは思わなくなります。
自尊と自己実現の二つの欲求は、満たされても更に欲求が顕在化する成長欲求(growth needs)といいます。満たされても、更に出てくる欲求です。この成長欲求は無限に動機付けができる性格のものと主張しました。
つまりマズローによれば、自尊と自己実現の欲求が人間にとって高次な欲求であり、動機付けを行うには、価値ある人と認め、尊敬し、自己実現に結びつけることだということになります。
しかし、人間にとって最上位の欲求は、自己実現の欲求でしょうか。組織論で有名なチャールズ・ハンディは、以下のように述べています。
マズローが欲求には階層秩序があると仮定したのは正しかった。だが、彼の言う階梯なるものは、より高いところまでは達しなかった。自己実現を超えて、さらにその向こうに、そしてより上のほうにある段階が、我々の理想化とも呼べる段階が、すなわち自分自身以上のものである理想や大目的や大儀の追求する場が、我々の経験の多くに照らしてもありうるはずである。かなり、苦い後味のするマズローのテーゼの自己中心的な調子を贖い救うものは、このもう一つ上の特別の段階なのである。
チャールズ・ハンディ
ハンディは、自己実現の上に更に欲求があるはずだと述べています。それが何かとは、言葉として残してはいませんが、あえてその欲求に名前を付けると「貢献欲求」となるでしょうか。
生理的欲求から自己実現までの欲求は、全て自分自身のことです。確かに自己実現の欲求はより高次のものだとは思います。では、常に自己実現が人間の最高位の欲求なのでしょうか。
例えば、東日本大震災で多くのボランティアの方々が現地へ行き、さまざまな活動をしています。これらの方々は、自己実現のために行っているのでしょうか? 価値ある人と認められたいから、尊敬されたいから行っているのでしょうか?
そうではないでしょう。
多くの方は、純粋に他者への、自分自身以外の方々へ「貢献」するために行っているのでしょう。
この貢献欲求は、民間の方々よりも、公務員の方々の方が強くお持ちの欲求だと思います。地域のため、まちのために貢献しようとする欲求です。
職場のメンバーを動機付けるには、また、自分自身を動機付けるには、この貢献欲求に焦点をあてていきます。人は誰でも、他の人に貢献したいという欲求はあるはずです。自分の仕事が他の誰のための貢献になっているのか、どんな貢献になっているのかを示すことで、動機付けができます。他の人の何にも役立たない仕事ほど、やりがいのない仕事はないでしょう。
私は、この貢献欲求こそが、一番上の欲求だと考えています。