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バンクシーに学ぶ - 豊かさとは何か?-

まもなく閉幕となる「バンクシーって誰?展」に、訪れました。

天才的とも反逆児とも言われているバンクシーのアート作品は発想に"ゆらぎ"を与えてくれます。"ゆらぎ"とは、すなわち違和感のことです。しかしこの違和感はどこから来ているのでしょうか。私には、彼が作品制作の段階で頭の中で「右脳→左脳→右脳→左脳→・・・」といった活動、すなわち「センスメイキング理論」を無意識に行っているのではないかと思えてなりません。

Trolley Hunters(トローリーハンター)

今回の展覧会作品の中に、原始的な姿の狩猟民族がショッピングカートを狩ろうとする様子を描いた“Trolley Hunters”があります。過去にカナダ・トロントで盗難にあったことでも有名な作品です。

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私自身がこれまで実施したプロジェクトの中に、GMS(総合スーパーマーケット)17店舗を開発したり、小売の在り方を論議したり、店舗周辺エリアをフィールドワークし地域に合った商品を揃えたりなどといったものもありました。そんな背景もあって、この作品にとても衝撃を受けたのです。

スーパーマーケット業界のDX動向

スーパーマーケットやGMSがこの世界に現れたのは1960年代頃。アメリカ型消費の象徴的存在だと言えるでしょう。。基本コンセプトは"誰でも利便性があり、いつでも気軽にショッピングできること"、"豊かな生活が実現できる"というようなものでした。

現在、このスーパーマーケット業界においてもDX(デジタルトランスフォーメーション)流行りでもありますが、デジタル化によって、人の省力化や合理性を実現しながらも、最も大切な"人間性や豊かな生活"については革新することはできているのか、私は疑問でなりません。

例えば、DXのD(デジタル)の例として「料理宅配、商品配属に参入。ネット通販サイト、最短15分(日経朝刊第一面トップ 11月23日)」という記事がありました。この料理宅配の最短15分は化粧品や衣類も配送するそうです。一方で、DXのX(トランスフォーメーション:変革)とは、具体的にはどんな動きがあるのでしょうか。正直私はまだ見つけられずにいます。

バンクシーが伝えたかったメッセージとは

話を“Trolley Hunters”に戻しましょう。私はこの狩猟民族がショッピングカートを狩ろうとする様子が、効率化を求めた結果、現代人が失いつつある豊かな生活を揶揄していると思えてなりません。また貧富の生み出し、自然の尊さや生態系を壊す行動について、バンクシーは痛切に表現しているとも感じます。

つまり、この作品を通してバンクシーがマーケティングに携わる私たちに訴えているメッセージは以下のようなものではないでしょうか。
「あなたの活動は、D(デジタル)の推進に偏重しているのではないですか?X(トランスフォーメーション:変革)をもっともっと考えないといけないのではないですか?」

まとめのかわりに

私たちは、大好きな人や家族と会話しながら時間を過ごすことが変え難い価値であることを知っています。そしてまた日々の生活の「食」を支えてくれるスーパーマーケットという存在もまた心豊かに食を楽しみたい、という重要な視点を支えるものであることを体感してきました。でも現実はどこに向かっているのでしょうか。前述した"ネット通販最短15分"を追求するだけで良いのでしょうか。

アートは時にいろいろな示唆を私たちに与えてくれます。それは言葉ではなく右脳への刺激から「考える」アプローチが有効に機能しているのかもしれません。

次回はここら辺の手法についてもう少し深ぼって考えてみたいと思います。

(完)