話題のA・フリードマン(ドジャース編成本部長)とダルビッシュ有に学ぶ新しいセンスメイキングの極意
はじめに)
科学的データ(AIやDX)と経験則との接合点、その接合点には何が必要なのかを考えてみたい。
6月9日TV朝日の番組"栗山の新たな使命に密着、日本野球未来への道"は、野球だけでなく、ビジネス、人間のこれからの生き方に様々なヒントがあったように思います。
この番組の中で、栗山監督を支えた59歳の清水雅治コーチが語った、未来への道標。
コーチの目的は、"最良の選手を創造する"こと。その為には、"(更に)勉強しなければならない"
▶️「昔の感覚で選手を教えていたら、選手からの【信頼】はなくなる。」と発しています。
(企業に置き換えたら、今や、経営陣やミドルマネジメントは、何を勉強したらよいのだろう!と問うています。)
野球人のいう【時代の転換】は、我々が考えているビジネス界と同じではないでしょうか?
今回は、この番組の中で取り上げられていた、Aフリードマンとダルビッシュの言葉から様々なヒントを見つけたように思い、書いてみます。
・AIやDXに際して、いま何が必要なんでしょうか。
→データと感性を融合するには何が必要なんでしょうか。
・私達は、予定調和的に考えて、実は変化に対応できていないのでは
・昔からのやり方を踏襲して、実は変革を求めていないのでは
1."Information is King."よりも、新しいknowledge creationへ進化
話題のドジャース編成本部長Aフリードマンのコンセプトは、Information is King.と本人は言っていました。しかし、これはInformationではなく、野中郁次郎先生のいうknowledge creation、つまり新しい知を生み出す作業に進化しているように思います。
選手1人ひとりについて観察し、学び、選手の真の才能とは何かを理解し、解釈する。
本人に伝えながら、チーム全体の中でその力を生かす。
【A.フリートマンの新たな知を生み出す作業】
【人材の人間性の把握→真の才能の理解→明確な伝達】
1)データ、スカウト、選手の【人間性に関する背景】などできるだけ多くの情報を入手する。
・若くて,才能ある選手を見つける。国内外、優秀なアマチュア選手獲得に取り組む。
→過小評価されている選手を見出す。
2)選手についてできる限り学び、選手の【真の才能】を理解しようとする。
3)育成部門を巻き込んで、選手の弱みと強みを【明確に伝える方法】を探りだす。
【具体的選手】
・A.フリードマンにより見いだされたレイズのアロザレーナ(ホームランキャッチで、WBCで有名になったメキシコ出身)
・現在のドジャースでは、センターを守る27歳アウトマン(ドラフト7順目の指名)
・今年5番打者として活躍したマンシー(マイナー契約であったにも関わらず)
活躍中のこの3人はまさにフリードマンに見出されて活性化した選手の代表である。
→何故、活性化したのであろうか。何故やる気になっていくのかは、極めて興味深いことです。
2.フリードマンの知的コンバット術
知的コンバットとは、徹底した対話であり、知識創造企業のキーワードであります。
まず人材における人間性の把握、才能を把握することから始まります。
この後に、異なる経歴と視点を持った多様な人々が適応する場を作っている。
少なくとも、アウトマンは、今年2年目の選手で、適応する場に置かれていることで、大谷翔平のスウィングに相当影響されている。
経営学や社会学では、ホモフィリーhomophilyの概念で、同じような自分に似た人と繋がりやすいが、変化やイノベーションに必要な多様性を失うという。
フリードマンがチーム内に重視したのは、「互いに意見をぶつけ合うことで,最善の答えにたどりつく。」ということです。
各選手の置かれた場が、知的コンバットの場であったのだろうと思います。
3.ダルビッシュ有1:【逸脱】の概念
ー数字は美しいが、【感覚】と照らし合わせなければ意味がない。
今や,大リーグだけでなく、日本の野球でも、トラックマンやラプソードという最先端機器を使って、数字を深く掘り下げるデータ重視傾向がある。
さらにクレッシー(cressey)スポーツパフォーマンスは、動作解析に基いたトレーニングを提示する。
常時30人のコーチが、8台の高性能カメラで、全ての関節の位置や角度、速度を捉え動作を解析する。
ダルビッシュはスイーパー(横に大きく曲がる変化球)の投げ方を解析する。
何インチ曲がるかというその数値は美しいというが、ここで問題提起をしている。
「大きく曲がる正解な数字が出るけど、バッターがどう見えるかは、全く別物である。数字とバッターの反応、空振り率が、昨年しっくり来なかった。」
↓
よい数値なのに、バッターはボールについてくる。
↓
(ダルビッシュ:今年の改善点)
ボールを握った時、バッターから横に見えるのではなく、斜めに握りを変化させると、よりスイーパーが生きる。
(空振り率はより高まる)
横により曲がるという概念を【逸脱】する握りにより空振り率はアップする。
【ダルビッシュ有の結論】
・数字を否定してもだめ、数値が全てだと思ってもダメ
・科学的根拠と自分の感覚の融合から生まれる
4.ダルビッシュ有2:自分の秩序にあわない【逸脱】ー
データで分析するアナリストと、経験に基づく技術指導との最適な関係をつくる
左脳と右脳との交互作用、データと人間の感性は、両方相互依存する時に最大限の力が発揮される。
日本の場合、企業の野球チームでも、経験だけで教えるとギャップが生まれて、信頼関係が崩れる。
5.ダルビッシュ有3: 【脱】意味的アプローチー常に情報に関してオープンであり続ける
野球経験のない子供達が、見たことのないような握りを見せてくれる。
自分の子供のスローモーション映像に学ぶ。回転力のある面白い球を野球を知らない子供から学ぶことができる。
【脱意味的】とは、目的や意味から離れて、ものそれ自体として、面白がり、リズムを楽しむかのようになること。
6.まとめとして センスメイキングがリズムアプローチへ
これまで、センスメイキング理論の日本市場でのアプローチを構築してきました。
まずセンスとは何か、感覚であり、意味であり、判断力であり理性であります。
感知すること、データを鵜呑みにしない、自らの観察力によって直観的で総合的な判断力であります。
まさに、【感覚】と【思考】を繋ぐ。
それは、Aフリードマンやダルビッシュ有が語り、栗山英樹が学んだ内容と同一でしょう。
意味を持ってデータを集めることに我々は、重点が置かれる。
しかしダルビッシュ有は、意味が生じる前のただ材料を集める作業、つまりは、「意味が生まれる前段階」に力を注いでいた。
まさに暗黙知の高質化作業であります。
「無意識こそがセンスを豊かにする」のではないか。
極めて禅的な発想ですね。
私は、基軸を変える 自分なりの基準にすることが、新しいマーケットを創造する、イノベーションに繋がると考えています。
例えば、商品開発で自然の再現性をするという再現性から降りること、引き算にして、抽象化すること
これは意味が抜ける状態になることだと考えられます。
絵画で言えば
印象派と出会い、そこから逸脱し、キュビズムに影響与えたポール・セザンヌの表現がそうだと思います。
ピカソやマティスに影響を与えた画風、
作品では、セザンヌがいう、毎日リンゴを見ながら考える。置く場所と、見る場所を変える、見る時間を変えると、【リンゴが私のリンゴに変化する】
この言葉が、写実でなく、個性、エネルギーになり、基準を変えることになるのかと思います。
「サント・ヴィクトワール山」の色彩による堅固な造形
セザンヌの言葉を引用します。
「自らの絵画を、自然を円筒・球・円錐によって扱って、全てを遠近法の中にいれ、各側面が一つの中心点に向かって集中する。」
ものを作る時の意味が生まれる前の状態をつくる状態。
これが、リズムの流れの新しいアプローチ例になるのではないでしょうか!
【まとめの中の結論ですが】
AI・大量のデータを学習した新しい野球、新しい経営、新しいマーケティングにおいて、新たなものを生成するには、一旦抽象化する力が必要になるのかもしれません。
忘却と省略と誇張の繰り返しではないか、と。
つまり脱意味化を図る戦略こそ、人間らしいアプローチになるとも思います。
このあたりが、ダルビッシュの逸脱、脱意味的なリズムに繋がると考えます。
詳しくは,次回また論議いたします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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