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寄稿者&作品紹介21中野純さん

前号での原稿打ち合わせのころの中野純さんは「いま人生最大に忙しい」(前作紹介文ご参照)の渦中でした。今回、世の中はこんな感じですが「短くでもリアルでお目にかかって打ち合わせするべき」と判断して決行。小田急多摩線某駅改札で待ち合わせてあらかじめネットで調べていたパスタ店にいくと、なぜか開いておらず。そのときは「まあコロナ禍だからこんなこともあるか」と急遽他店を探したのですが、あれはいったい何故(閉店ではなくいまも営業している)? ...そういえば、あの日も地図なしでけっこう歩きましたが、中野さんの今号寄稿作〈東男は斜めに生きる〉も東京を歩き回っています。向島、吉祥寺、八王子。このなかで私が迷子になったことあるのは、吉祥寺かな。「せっかく中央線がほぼ東西に気持ちいいくらいまっすぐ走っているのに、吉祥寺あたりはほとんどの道が線路に平行・直交せず斜めになっているから、中央線の線路に沿って歩くことは難しく、吉祥寺南町の北に吉祥寺東町があったりして迷いやすい」...はい、中央線を道標に、と舐めて歩いて「ここはどこ?」状態に。しかもさすが、JR。私鉄感覚で歩いたら、けっこう遠かった。

中野さんは「江戸城の外濠もラティス的に斜めに巡っていて、それは東京湾や隅田川の斜めに合わせたと思われ、だから江戸の町はかなり斜め」と書いていて、最近ラジオを聞いていて、そのことを思い出させる会話が耳に入ってきました。「東京の人って東西南北をふだんあまり意識してないですよね」と、関西出身の女性(...っうか、兵庫県明石市出身の赤江珠緒さん)。うろおぼえだけれど、関西の人はつねに山と海で自分の位置を確認しているので、それができない東京では道に迷いやすくて困る、みたいなことを。言われてみれば、たしかに東京の地名に東西南北が付いていても、それは「新」とあまり違いがないようにしか思えないし、と納得しかけつつ、いやアカエさん、あなたが方向音痴なだけなのでは? とも。

東男・中野さんの「たくさん道に迷って暮らすべきなのだ」という至言を、ぜひ赤江さんに伝えたいです。そういえば、いまうちのクルマに付いているカーナビは古くて、最近はアイフォーンがあるので事足りるがたまの遠出で使用してみると、困惑具合が伝わってきてけっこうスリリング(マネしないでください!)。とくに圏央道近辺はここ数年でずいぶん道が新しくなったんだなぁ、と実感。

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房総半島は北東から南西に延びている。三浦半島は逆に北西から南東へ斜めに突き出ていて、利根川、荒川、多摩川という主要河川はみんな北西から南東に流れ、東京湾も斜めに奥まっていて、水の流れも地の高まりも、やたら斜めにできている。それがフィリピン海プレートの移動方向と直接関係あるのか知らないし、迂闊に関連づけてはいけないが、プレートの話はさておき、とにかく東京らへんの地理は妙にいろいろ斜めなのだ。とくに主要河川の斜めっぷりに、なにか強い力を感じずにはいられない。

〜ウィッチンケア第11号〈東男は斜めに生きる〉(P134〜P139)より引用〜

中野純さん小誌バックナンバー掲載作品:〈十五年前のつぶやき〉(第2号)/〈美しく暗い未来のために〉(第3号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈天の蛇腹(部分)〉(第4号)/〈自宅ミュージアムのすゝめ〉(第5号)/〈つぶやかなかったこと〉(第6号)/〈金の骨とナイトスキップ〉(第7号)/〈すぐそこにある遠い世界、ハテ句入門〉(第8号)/〈全力闇─闇スポーツの世界〉(第9号)/〈夢で落ちましょう〉(第10号)

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