VOL.14寄稿者&作品紹介05 オルタナ旧市街さん
第14号では誰に、新たに寄稿依頼してみようか。そんなことを考えながら昨年の秋ごろ、私は都内の個性派書店をまわっていました。いや、じつは拙宅から数十メートルのところにも書店はあるのです。でもそこで扱われている本、なかなか私が「読みたいな」と思うものが見つからなくて。今号が初寄稿となるオルタナ旧市街さん(以後「オルタナさん」)の「一般」は、文京区本郷の機械書房さんの平台で発見。店主様から「めずらしいサイン入りですよ」とも薦められてゲットしました。収められている《レヴェンワースの光。タイムズ・スクエアの花嫁》という一篇で描かれた生活感覚...すごくきちんとしているなぁ、と思いました。その後も書店めぐりは続き、今度は世田谷区祖師谷のBOOKSHOP TRAVELLERさんにて「ハーフ・フィクション」をゲット(「オルタナさんは、良いです!」と推す店主様を介して連絡が取れることになり、寄稿依頼も)。依頼先は小誌の存在を知らない、がデフォルトなので「見本誌を送付させていただけませんか?」と尋ねたら、オルタナさん、第13号をどこかで見かけ、表紙に惹かれて購入してくださっていた、とのこと。なんと、読者様でもあられましたか! 発行人として、とても嬉しい瞬間でした。
「長い長いお医者さんの話」はエッセイのようでもあり、でも小説のような風合いも感じさせる、身辺雑記的な作品。内容は闘病記、とも言える辛いものですのに、読後感はなんだかふわふわほのぼのしているの、なぜ? おそらく、↑のほうで書いたオルタナさんの「きちんとしている」感が、体調不良であっても貫かれているからではないか、なんて思いつつ、その細やかな観察眼と艶っぽい筆力に感服致しました。スイマセン、具合の悪い方の話をおもしろく読んでしまって...。
“3ヶ月の間に3回も同じ病院にかかってしまった”オルタナさん。そのたびに診てくれた“めがねをかけた中年の男性医師”の所作を、3回とも独特な言い回しで描写していて楽しいです。1度目は“新人役者に稽古をつける演出家”のよう、と。2度目は“子どもをあやす ...おっとっと、この先は(3度目も含めて)ぜひ小誌を手に取ってお確かめいただければ幸いです。
今からコロナウイルスの検査をします。この細長あい綿棒の、さきっぽ、そうですね3、4センチくらいでしょうか、ここのあたりをお鼻の両側にさしこんでぐーりぐりと3回転させていきます。ちょっとね、苦しいなあ痛いなあなーんて感じると思うんですが、すこうし我慢してください。お口で息をして。終えたらこちらのティッシュで、しっかり鼻をかんでもらって結構ですよ。1枚といわず何枚でもご自由に。ええ。では始めてもよろしいですか?
日頃どんな患者を相手にしているんだと言いたくなるほど嚙んで含めるような物言いだったが、こちらをばかにしているようなそぶりではなく、ただ丁寧であることを究極に突き詰めた結果そうなった、というタイプの口ぶりにこちらも失笑してしまった。ティッシュを使う枚数までにも気を配ってご自由にと言われたのは初めてだ。
~ウィッチンケア第14号掲載〈長い長いお医者さんの話〉より引用~
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