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VOL.14寄稿者&作品紹介33 吉田亮人さん

「ウィッチンケア」には第5号からご寄稿くださっている写真家の吉田亮人さん。コロナ禍が明けて、また世界を股に掛けての仕事に奔走なさっているようです。思い返せば、第11号(2021年4月刊行)への掲載作〈対象〉のような、写真についてある意味哲学的に論考した吉田さんの文章もおもしろいのですが、今作〈そこに立つ〉は取材旅行の躍動感とそこでのエピソードが、「ステイホーム」を推奨されていたあの頃じゃ決して経験できないもので、ああ時代がまた変わったのだな、と実感しながら拝読しました。韓国...近年はショッピングビルなどを覗くと、ワンフロア丸々韓流グッズの売り場だったりすることもあって驚いちゃうし、私(←発行人)もBTSの「Dynamite」とNewJeansの「OMG」「Ditto」はApple MusicでDLして聴いていたりするのですが...いやそういう話ではなくて...吉田さんの作品で取り上げられているのはザ・フォーク・クルセダーズの楽曲として世に知られている「イムジン河」です。フォークルは、リアルタイムに「帰って来たヨッパライ」が流行っていたころの記憶がかろうじてあって、同じころにザ・ダーツの「ケメ子の歌」というのも流行ってて、両曲とも〝おもしろい歌〟だとしか思っていなかった(小学校低学年ですから)。でっ、そのフォークルなんですが、Wikipedeiaには“1967年、アルバム『ハレンチ』を音源として、フォークルの歌がラジオでさかんに取り上げられるようになった。京都では『イムジン河』、神戸では『帰って来たヨッパライ』が頻繁にラジオで流されるようになった”との記述があり...そうか、京都では初期からよくオンエアされていたのか。。私の認識では、「平凡」「明星」(芸能本)の付録の歌本には載っているけど、テレビラジオでは聞けない曲、だったな。



韓国の非武装地帯に赴いた吉田さんは、本物のイムジン河を見て、ふと「イムジン河 水清く とうとうと流る♪」というメロディが口をついた、と語ります。すると、その旅でのガイドさんが“「その曲は何ですか?」と尋ねてきた”のだと。それに対する吉田さんの説明...私は映画「パッチギ!」を未見だし、マスメディアで同曲が流れているのを聞いたこともなかったので、むしろ吉田さんのように、私より若い世代のほうがよく知っているのかもしれない、と不思議な感覚でした。

作品終盤に登場する北朝鮮の監視塔、そして白い花と蝶の話。“書いてしまえばそれまでだが、決してそういうことでもない”という、吉田さんの胸中を覆った言葉にできない感情が印象的です。タイトルの〈そこに立つ〉は「現場に立ってみる」という意味と「その現場でこそ沸き立つものがある」のダブルミーニングかな。ぜひ小誌を手にして、吉田さんの現場での思いに寄り添ってみてください。


ウィッチンケア第14号(Witchenkare VOL.14)発行日:2024年4月1日
出版者(not「社」):yoichijerry(よいちじぇりー/発行人の屋号)
A5 判:248ページ/定価(本体1,800円+税)
ISBN::978-4-86538-161-0  C0095 ¥1800E 


 我々取材チームを案内してくれる現地ガイドの方が、車窓越しの眼下に広がる大河を指差して説明してくれた。我々はどうやらイムジン河を渡る巨大な橋の上を走っているようだった。
 陽光が川面に反射してキラキラ光っている。その両岸を黄金色に染まった稲穂畑が埋めつくしている。
 つい70年程前この場所が焦土と化していたなどとは想像もつかないほどその光景はとても美しく、平和そのものだった。
 

 ~ウィッチンケア第14号掲載〈そこに立つ〉より引用~
 
 

 
吉田亮人さん小誌バックナンバー掲載作品:〈始まりの旅〉(第5号&《note版ウィッチンケア文庫》)/〈写真で食っていくということ〉(第6号)/〈写真家の存在〉(第7号)/〈写真集を作ること〉(第8号)/〈荒木さんのこと〉(第9号)/〈カメラと眼〉(第10号)/〈対象〉(第11号)/〈撮ることも書くことも〉(第12号)/〈写真集をつくる〉(第13号)
 
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