『保身・発進・タイムマシン』


ヒサマツ 博士
 過去のヒサマツ 過去の博士
ナリタ  助手1
 未来のナリタ 未来の助手1
カセ   助手2
 過去のカセ 過去の助手2
ジンボ  助手3
 未来のジンボ 未来の助手3
ナゴミ  現在のナリタの彼女
恐竜1 小型の恐竜
恐竜2 中型の恐竜
恐竜3 大型の恐竜
マサヒロ 過去のナリタの父
ミツヨ  過去のナリタの母
アカネ  未来のナリタの妻
アヤメ  カセの初恋の相手


   現在のヒサマツの研究所。タイムマシンの完成披露会見の前に予行練習を行っている。

壇上にはヒサマツが立ちその後ろに幕に覆われたタイムマシンがある。壇の下にはナリタ、カセ、ジンボが並び、ナゴミが遠くからその様子を見ている。

 

 

ヒサマツ  え~本日はお忙しい中、私ヒサマツの研究所にお集まりいただき誠にありがとうございます。私が長年研究を重ね、またここに並んでいる助手たちと一緒に作り上げてきたタイムマシンがこの度、遂に完成いたしました。そのタイムマシンがこちらです。

 

   ヒサマツがタイムマシンに覆われている布を取る。

 

ヒサマツ  いかがですか。この近未来感あふれるメタリックな外装。ん?なんだこの傷。おい誰だこんなところに傷をつけたのは。あ~あ~あ~あ~。なんでこんなところにひっかかれた傷があるんだ?しかもなんかひっかき傷にしては大きくないか?まあいいや。え~続きましてこちらのモニターをご覧ください。ここに表示されている数字はタイムトラベルができる残りの回数です。タイムトラベルには莫大なエネルギーが必要なため現時点では何度でも時間を移動できるわけではありません。今現在はこの通り6回になっていますが・・・ん?なんで5回になってるんだ?昨日エネルギーを補給したときは6回になっていたはずなんだが・・・。まあそういうこともあるか。そしてなんと言ってもこちらが操縦席です。ここにあるパネルに移動したい時間と場所を入力するとその時間まで移動できるのです。ん?こんなところにドリンクホルダーなんかつけたかなぁ。まあ以上が私と助手が作り上げたタイムマシンの説明になります。こんな感じでどうかな?

ナリタ   いいと思います!

カセ    めっちゃよかったです!

ジンボ   ばっちりだったと思いますよ。本番も今の感じで行きましょう。

ヒサマツ  ありがとう。

 

   遠くで見ていたナゴミが近づく。

 

ナゴミ   いや~ほんとうにすごい良かったぁ~!!ナリくんもお疲れ様ぁ~!

ナリタ   ありがとうナゴみん~!ナゴみんの応援があったからここまで頑張れたんだよ~

ナゴミ   違うよ違うよぉ~!ナリくんが頑張ったから完成したんだお~

ナリタ   違うよ~!ナゴみんのおかげ!

ナゴミ   違う!ナリくんの頑張り!

ナリタ   ナゴみん!

ナゴミ   ナリくん!

ナリタ   ナゴみん!

ナゴミ   ナリくん!

カセ    おい職場に彼女連れてくんな。

ナリタ   え?

カセ    職場に彼女連れてくんな。聞いたことないよ研究所に彼女連れてくる研究員。

ナゴミ   え~いいじゃないですかぁ。

カセ    よくないですよ。こんな簡単に部外者が研究所に入れていいの?

ナゴミ   部外者じゃないですぅ~。ナゴみんとナリくんは運命の人なんです~

カセ    部外者じゃないですか。え、まだ結婚してないですよね?

ナリタ   まだね。

カセ    じゃあ他人じゃん。

ナリタ   いや今はまだしてないけど絶対将来結婚するもんねぇ~

ナゴミ   ねぇ♡

ジンボ   はぁ。というかどタイムマシン完成したのナゴみんのおかげでもナリくんの頑張りでもないからね。完全にヒサマツ博士の研究の成果だから。

ヒサマツ  いやいや、君たちのおかげでもあるよ。君たちが手伝ってくれたおかげで今日の完成がある。特にジンボくん。君がエネルギーについて発見してくれなければタイムトラベルは不可能だったと言っても過言ではないだろう。本当にどうもありがとう。

ジンボ   そんな風に言っていただけて光栄です。しかしこのエネルギーにはまだまだ研究の余地があります。私がこれからも研究を続けていずれは回数制限なしのタイムトラベルを実現して見せます。

ヒサマツ  ああ。頼もしいよ。しかし君たちだけではない。今日まで支えてくれたすべての人たちのおかげでタイムマシンは完成したんだ。忘れもしない出来事があってな。私がまだ若かったころ、誰もがタイムトラベルなんて不可能だと言って私をバカにしていた時、強く励ましの言葉をかけてくれた青年がいた。あの青年の言葉のおかげで私は立ち上がり、夢を追いかけ続けることができた。感謝してもしきれんよ。あの青年は今どうしているんだろうか。

ジンボ   きっとタイムマシンの完成を喜んでくれていますよ。

ヒサマツ  そうだと嬉しいな。

ナゴミ   それでも私はナリくんのおかげで完成したと思うけどねぇ~。

カセ    はぁ。これだからイチャイチャカップルは。

ナリタ   そういうカセはさ、良い人とかいないの?

カセ    え?う~ん、恋愛とか結婚とか興味ないわけではないんだけど、どうしても初恋の人が忘れられないんだよね。

ナゴミ   うわ、過去の恋愛引きずってるタイプだ。

カセ    うるさいな。

ナリタ   え、それはなに?好きだったけど振られたみたいなこと?

カセ    ううん、こっちから振ったの。

ナリタ   え、カセから振ったのに未練タラタラなの?

カセ    いやね、学生時代に付き合ってた人がいてすごい大好きだったんだけど、知らない男の人に「絶対別れるべきだ」ってめちゃくちゃ責められて。それが怖くて振ったんだよね。

ナゴミ   え、なにそれ。

ナリタ   知らない人に絶対別れるべきだってめちゃくちゃ責められるってどういう状況?

カセ    意味わかんないだろ?

ナリタ   それでも別れたんだ。

カセ    まあなんか別れないとその人に殺されそうだったし。

ナゴミ   すごいねその人。

ヒサマツ  さて、そろそろ関係者の方々が研究所に来る時間だ。私は会見に向けての支度を整えるとするよ。君たちも少し休憩を取って会見の準備に取り掛かりなさい。

助手たち  はい。

ヒサマツ  すまないがナゴミさんはここでお引き取り願えるかな?

ナゴミ   えぁ~なんでですかぁ~

ヒサマツ  さすがに会見の場に助手の彼女がいるのはまずいだろ。すまないが今日のところはこのくらいで。

ナゴミ   わかりました。じゃあまた後でねナリくん~!

ナリタ   うんまたあとで~!

 

   ナゴミはけ。

 

ヒサマツ  さて、衣装の白衣はどこやったっけかな。あれを着ていると研究者感がぐっと増すんだよな。

 

   ヒサマツはけ。

 

ジンボ   さ、コーヒー取りに行こっと。

 

   ジンボはけ。

   ナリタ、あたりを見回して誰もいないことを確認する。

 

ナリタ   なあカセ。カセ!

カセ    なんだよ。

ナリタ   タイムマシン乗っちゃわない?

カセ    馬鹿、お前何言ってんの?

ナリタ   いいじゃん。今このタイムマシンに乗ったら世界で初めてタイムトラベルした人になれるんだぞ。そんなチャンスを逃していいのか?

カセ    チャンスって。バレたらどうすんだよ。博士はまだしもジンボにばれたら絶対に怒られるぞ。

ナリタ   だから今が絶好のチャンスなんだろ。ヒサマツ博士もジンボもいない。もうこんなチャンスは二度と訪れないぞ。歴史に名を刻みたくないのか?

カセ    う~ん。

ナリタ   大丈夫だって。タイムトラベルして、この時間に戻ってくる。そうしたら誰にもばれないよ。

カセ    いやでもさ、

ナリタ   何お前ビビってんの?

カセ    は、何が?全然ビビってないけど。

ナリタ   じゃあ行こうぜ。タイムトラベル。

カセ    ああいいよ、行ってやるよタイムトラベル。

 

   ナリタとカセ、タイムマシンに乗り込む。

 

カセ    って言ってもどの時代に行くの?

ナリタ   う~んそうだな・・・。あ、俺生きてる恐竜を生で見てみたい!

カセ    おおいいじゃん!それ面白そう!

ナリタ   それじゃあ時代と場所をこのパネルにセットして・・・。よし、準備は良いか。

カセ    おう。いつでもいいぞ。

ナリタ   よしそれじゃあいくぞ。えい!

 

   ナリタとカセ、恐竜時代へタイムトラベル。

   タイムマシンの残り回数は4回になっている。

 

カセ    タイムトラベル、した?

ナリタ   なんかもっと時計がグルグルしてる空間とか通るんだと思ってたけどそういうのはないんだね。

カセ    な。全然実感わかないけど・・・うわ!ナリタ見てよ!周りの景色が変わってる!

ナリタ   うわ本当だ!緑が生い茂る雄大な自然、人工物が何一つない広大な大地。間違いない!ここは恐竜時代だ!

カセ    うわぁすごい!俺たち本当にタイムトラベルしたんだよ!

 

   ナリタとカセ、タイムマシンから降りてあたりを探索する。

   恐竜1登場。

 

恐竜1   ぴ~?

ナリタ   うわ!なんだこのちっこいの。

カセ    本物の恐竜だよ!うわぁかわいいな。

恐竜1   ぴい!ぴい!

ナリタ   子どもの恐竜かな?

 

   恐竜2登場。

 

恐竜2   わぁ~わ!わぁ~わ!

カセ    うわ!ちょっと大きい恐竜きた!

恐竜1   ぴい!ぴい!

恐竜2   わぁ~わ!

恐竜1   ぴい!

ナリタ   このちっこいのこの恐竜にすごく懐いてるみたいだね。

カセ    兄弟の恐竜なのかな?かわいいねぇ。

恐竜2   わるるわ!

ナリタ   こういう可愛い生き物見るといたずらしたくなるよな。

カセ    おいやめとけって。

ナリタ   大丈夫だよ。いないいな~い、うわぁ~!

恐竜1   ぴぃ~!!!

ナリタ   あはは、面白い。いないいな~い、うわぁ~!

恐竜1   ぴぴぴっぴぃ~!

ナリタ   あはははは。

 

   大きな足音を立てて恐竜3登場。

 

カセ    なんだなんだ?

恐竜3   ぐるるるるるるるるがぁああああああああ!

カセ    うわぁ!!!めっちゃでかいの来た!しかもなんか怒ってない?

恐竜2   わぁ~わ!わわわ!わぁ~

恐竜3   ぐるるるる。

ナリタ   あ、こいつチクりやがった!

カセ    絶対お父さん恐竜だよ!自分の子どもにいたずらされたから怒ってる!

ナリタ   まあまあまあ、お父さん落ち着いて。

恐竜3   ・・・ぐわぁあああああああああああああああ!

カセ    うわぁぁあああ!

ナリタ   逃げろぉ~!!!!!

 

   ナリタとカセ、タイムマシンに乗り込む。

 

カセ    おいめちゃくちゃおいかけてきてるぞどうするんだ?

ナリタ   とにかく急いで別の時間に逃げるしかないだろ!

恐竜3   ぐらう!!!!

 

   恐竜3、タイムマシンにひっかき攻撃。タイムマシンに大きな傷がつく。

 

カセ    うわぁやばい攻撃してきた!

ナリタ   ああもうどこでもいい!タイムトラベルだ!

 

   ナリタとカセ、博士の若い頃へタイムトラベル。

   タイムマシンの残り回数は3回になっている。

 

カセ    あ、また景色が変わった。

ナリタ   なんとか助かったみたいだな。

カセ    ここはどんな時代なんだろう。

ナリタ   えっとパネルの表示によると・・・俺たちが生まれるちょっと前、ちょうど博士がタイムマシンの研究を始めたころじゃないかな。

 

   過去のヒサマツ登場。

 

過ヒサマツ はぁ。やっぱり私の夢なんか叶うはずがないのか・・・。

カセ    ん、あれって。

過ヒサマツ みんなが私の夢をバカにする。それはそうか。時間を超えるなんてできっこないんだ。

ナリタ   若い頃のヒサマツ博士だ。うわぁ、若いなぁ。

カセ    でもなんか元気なさそうじゃない?

ナリタ   あ、あれだよ。ほら、博士が研究を始めたときにはみんなに馬鹿にされてたって。

カセ    そういえば言ってたね。でもヒサマツ博士はすごい人だよ。

ナリタ   そりゃ俺たちの時代ではそうだけど、この時代ではタイムトラベルできるなんて誰も信じてない。馬鹿にされるのも仕方ないよ。

カセ    なんだよそれ。そんなことでくよくよしてるヒサマツ博士なんて俺見たくないよ。ちょっと俺行ってくる。

ナリタ   え、あ、ちょっと!

 

   カセ、タイムマシンを降りて過去のヒサマツの元へ。

 

カセ    ちょっとあなた!

過ヒサマツ 私?

カセ    あのね、自分の力を小さく見積もっちゃダメ!周りの意見なんか気にするな!

過ヒサマツ はい?

カセ    あなたはタイムトラベルしたいんでしょ?絶対できるから!諦めないで研究しなよ!あなたはすごい人だよ!俺ならわかる!だから自分を信じて!ね?

過ヒサマツ ・・・あ、ありがとうございます!おかげで目が覚めました!

カセ    うん。

過ヒサマツ そうだよな。よし、誰になんて言われてもタイムマシンの研究を続けるぞ!

 

   過去のヒサマツはけ。

   ナリタ、タイムマシンに戻る。

 

ナリタ   カセ、熱いね。

カセ    まさかヒサマツ博士も未来の助手に励まされてるとは思わないだろうね。

 

   マサヒロ、ミツヨ登場。

 

マサヒロ  みっちゃん~!みっちゃんは今日も素敵だねぇ~。

ミツヨ   んも~!でも、ま~くんの方が素敵だよ。

マサヒロ  いやいやいや、みっちゃんの方が素敵!

ミツヨ   いやいやいや、ま~くんの方が素敵!

マサヒロ  みっちゃん!

ミツヨ   まーくん!

マサヒロ  みっちゃん!

ミツヨ   まーくん!

カセ    なんかあのカップル、お前に似てない?

ナリタ   え、なに、イチャイチャ具合がってこと?

カセ    それもそうなんだけど、なんていうか、顔も?

ナリタ   え?確かに。言われてみれば実家であの顔の写真見たことあるかも。

マサヒロ  ねえみっちゃん。みっちゃんももうすぐ苗字ナリタになるんだよ。

ミツヨ   ね。なんか変な感じだわ。でも、すごく楽しみ!

二人    うふふふふ~♡

 

   マサヒロ、ミツヨはけ。

 

カセ    苗字ナリタになるんだって。間違いなくナリタのご両親じゃん。

ナリタ   自分の親のイチャイチャってマジで恥ずかしいな。

カセ    ていうかナリタのイチャイチャって遺伝子レベルで刻まれてるのな。

ナリタ   なあ、次未来行かない?

カセ    え、いいけどどうして?

ナリタ   未来がどうなってるか気になるだろ。それにさ、俺とナゴみんのいちゃいちゃ新婚ライフがどんなもんか見たくなってきた。

カセ    あ~、なるほどね。

ナリタ   よし、そうと決まれば、未来へ、出発~!

 

  ナリタとカセ、未来へタイムトラベル。

   タイムマシンの残り回数は2回になっている。

 

ナリタ   ここが未来か。

カセ    建物の感じとかは今とあんまり変わってないね。

ナリタ   まあものすごい先の未来ってわけじゃないからね。

カセ    あ、あれじゃない?

 

   未来のナリタ登場。

 

ナリタ   あれが未来の俺か・・・。

カセ    あんまり変わらないね。あ、でも薬指に指輪してる!やっぱり結婚してるんだ。

 

   アカネ登場。

 

アカネ   ちょっとナリくん待ってよ~!

ナリタ   ・・・あれが未来のナゴみん?

カセ    だいぶ雰囲気変わったね。

未ナリタ  アカネんが遅いんだろ~!

ナリタ   アカネん!?

カセ    誰よその女!!

アカネ   もぉ、置いてかないでよ。

未ナリタ  ごめんごめん。もう置いていかないからさ。

アカネ   ほんとに?

未ナリタ  ほんとにほんと。

アカネ   ちゃんと私の目見て言える?

未ナリタ  言えるよ。

アカネ   じゃあ許す。

未ナリタ  ありがとうアカネん~!今日も可愛いよ!

 

   未来のナリタ、アカネはけ。

 

ナリタ   ナゴみんが、アカネんに改名したってことでいいんだよな?

カセ    いや、ナゴみんに別れを告げ、アカネんと再出発したってことだろ。

ナリタ   嘘だろ!なんでだよ!だって俺とナゴみんこんなに仲良しなんだぞ!

カセ    人生何があるかわからんもんよ。

ナリタ   いやマジで信じられない。

カセ    まあいいじゃん。未来のナリタすごく幸せそうだったぞ。それが人生だって。

ナリタ   ナゴみん・・・。

カセ    なあ、次さあ、俺の学生時代に行ってもいい?

ナリタ   え、いいけど。あ、さては人の恋愛見て、自分の初恋の人を思い出しちゃったか?

カセ    まあそんなとこ。

ナリタ   ひゅーひゅー!じゃあ早速行こうぜ!カセの学生時代へ!

 

   ナリタとカセ、過去へタイムトラベル。

   タイムマシンの残り回数は1回になっている。

 

ナリタ   ここがカセの学生時代か。

カセ    うわ、この駄菓子屋懐かしい!よくアヤメさんと来たなぁ。

 

   過去のカセ、アヤメ登場。

 

過カセ   今日も駄菓子屋寄ってこうよ。

アヤメ   え~なんでよ。昨日も寄ったじゃん。

過カセ   いいじゃん。楽しいし。

ナリタ   あれがカセの初恋の人?

カセ    そう。アヤメさん。

ナリタ   えぇ~、めっちゃいい感じの人じゃん。もったいないことしたな。

カセ    だろ?

 

   アヤメに電話がかかってくる。

 

アヤメ   あ、ごめん。私ちょっとお手洗い行ってくるね。

過カセ   え、ああ、うん。

アヤメ   もしもし、カズくん?え、今?今ねカセと一緒にいるよ。は?違う違うマジで違う。カセに本気なわけないじゃん。本当に好きなのはカズくんだけ。遊びだよ遊び。今どこにいるの?わかった。なるはやでそっち向かうわ。じゃあまた後でね。

 

   アヤメはけ。

 

ナリタ   なあ、今の電話って。

カセ    ・・・。

ナリタ   カセ?

カセ    なんだあのクソ女!!!!!

ナリタ   カセ!

カセ    俺とは遊びだ?冗談じゃない!人の初恋の純粋な心を弄びやがって!あ~マジで最悪。何十年間も無駄にしたわぁ!あんな女絶対にやめるべきだ。昔の俺を、救わなきゃ。

ナリタ   おいカセ!どこ行くんだよ!

 

   カセ、タイムマシンを降りて過去のカセの元へ。

 

カセ    おいお前。

過カセ   は、はい。

カセ    今一緒にいた女と早急に別れろ。

過カセ   はい?

カセ    だから!今お前と一緒にいた女と今すぐに別れろって言ってんだよ!

過カセ   え、嫌ですよ。

カセ    嫌ですよじゃねぇ!これはお前のためを思って言ってるんだ!どうしても別れねぇって言うんだったら、ここでお前もろともあの女を叩き切る!

過カセ   わわわわかった。わかった。わかりましたよ。

カセ    なにがわかったんだ?言ってみろ。

過カセ   ・・・アヤメさんと別れます。

カセ    よぉし、言ったからな。聞いたからな?絶対だからな!!!!

 

   カセ、タイムマシンに戻る。

   アヤメ登場。

 

アヤメ   ごめんお待たせ。

過カセ   あ、うん。行こっか。

アヤメ   あれ、駄菓子はもういいの?

過カセ   うん。ここからちょっと離れよう。

アヤメ   え、なんで?

 

   過去のカセ、アヤメはけ。

 

カセ    あ~すっきりした。

ナリタ   おい本当に良かったのか?

カセ    よかったに決まってんだろ。これでようやく初恋の呪縛から解放されたわ。じゃあ次はどの時代に行こうかって・・・あ~!まずい!

ナリタ   え、なにが?

カセ    おいこれ見てみろ!

 

   タイムマシンのモニターを見ると残り回数が1になっている。

 

ナリタ   あ、残り回数一回か。じゃあそろそろ元の時代に戻ろう。

カセ    そんなのんきなこと言ってる場合か!この状態で戻ってみろ。俺たちが元の時代に戻った時、この残り回数は0になる。つまり、会見にはタイムトラベルできない状態のタイムマシンがお披露目されることになるんだぞ!

ナリタ   ん?・・・あ~!!!そうじゃん!まずいじゃん!どうしよう!!

カセ    どうしようじゃねぇよ!やっぱりこんなの間違ってたんだよ!絶対怒られる!それでこの研究所もクビだよ、クビ!

ナリタ   落ち着け落ち着け!まだ何か方法があるはずだ!元の時代に戻っても俺たちがタイムトラベルしたってばれない方法が、何か・・・

カセ    そんなのないよ!だって残り回数が減ってるんだもん!絶対バレるって!

ナリタ   いやそうなんだけどさ・・・おい待て待て待て。ってことはさ、残り回数が元に戻っていればいいんだろ?

カセ    あ?

ナリタ   残り回数を、元に戻しちゃえばいいんじゃないか?

カセ    そりゃそうだけど、そんなの俺たちには無理だろ!

ナリタ   そう!俺たちには無理だ!でもいるだろ、エネルギーについて研究を進めている奴が!

カセ    あ!!!

 

   ナリタとカセ、未来へタイムトラベル。

   タイムマシンの残り回数は0回になっている。

 

ナリタ   ジンボはタイムマシンのエネルギーを発明したやつだ。これからもエネルギーについて研究を続けるって言ってた。きっと未来のジンボはタイムマシンのエネルギーを安定して供給することに成功してるはずだ。だから、未来のジンボにお願いしてタイムトラベルの回数を元に戻してもらえば!

カセ    俺たちがタイムマシンを勝手に使ったことはバレずに元の時代に戻ることが

できる!

ナリタ   そういうこと!

 

   未来のジンボ登場。

 

ナリタ   ということだ。ジンボ、頼む!

未ジンボ  え、つまり君たちはタイムマシン完成の会見前に勝手にタイムトラベルをしてエネルギーを使い切ってしまった。で、その補給を私にしてほしいと。そういうこと?

カセ    そういうことです。

未ジンボ  はあ。まさか最初にタイムトラベルをしたのがヒサマツ博士じゃなかったとはね。なかなかショックだよ。

ナリタ   それは本当にごめんなさい。

未ジンボ  まあいいよ。エネルギーを補給してあげる。

カセ    え、本当に?

未ジンボ  ああ。今の時代、研究が進んでエネルギーは当たり前に生産できる時代になっているからね。それに、昔の君たちに会えてなんだか懐かしい気持ちにもなれたし。

ナリタ   本当にありがとう。

カセ    恩に着るよ。

未ジンボ  で、何回分入れればいいの?

ナリタ   え~っと、最初のタイムトラベル残り回数は確か・・・

カセ    6回だったと思う!

ナリタ   ああそうだ6回だ!6回分でお願い!

未ジンボ  え、6回分でいいの?

ナリタ   え、うん。

未ジンボ  ふふ。なるほどね。

カセ    え、なに?

未ジンボ  ううん、なんでもない。じゃあお望み通り、6回分のエネルギーを入れておくね。

ナリタ   本当にありがとう。

未ジンボ  いえいえ。

 

   未来のジンボ、エネルギー補給の作業を進める。

 

未ジンボ  あ、せっかくだからもうちょっと快適な操縦席にしておこ~っと。

 

   未来のジンボがコーヒー用のドリンクホルダーを取り付ける。

 

未ジンボ  これでよしっと。

 

   タイムマシンの残り回数が6回になっている。

 

ナリタ   おお!

カセ    元に戻った!

未ジンボ  それじゃあ気を付けて。これに懲りたらもう余計なことをするんじゃないよ。

ナリタ   はい。

カセ    すいませんでした。

未ジンボ  よろしい。それじゃあ会見頑張って。

 

   ナリタとカセ、現代へタイムトラベル。

   タイムマシンの残り回数は5回になっている。

   ナリタとカセがタイムマシンから降りてタイムマシンに布をかける。

   現在のヒサマツの研究所。タイムマシンの完成披露会見の前に予行練習を行っている。

   壇上にはヒサマツが立ちその後ろに幕に覆われたタイムマシンがある。壇の下にはナリタ、カセ、ジンボが並び、ナゴミが遠くからその様子を見ている。

 

ヒサマツ  え~本日はお忙しい中、私ヒサマツの研究所にお集まりいただきまして誠にありがとうございます。長年私が研究を重ねここに並んでいる助手たちと一緒に作り上げてきたタイムマシンがこの度、遂に完成いたしました。そのタイムマシンがこちらです。

 

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