『ベルを鳴らさなきゃ!』

イワガキ 先輩
ナミキ  新人
ホリ   新人
アカニシ 新人
オオタニ カップル
リカ   カップル
マツカワ 新婚
ヒカリ  新婚
ウチヤマ 父
ツバキ  母
レン   娘
ウガ   クレーマー
ヒラマ  お客様
クマノ  お客様
ヒラセ  お客様

波の音。次第に海鳥の声も聞こえてくる。それらが止むと南国チックな音楽が流れる。ホテルファ・ブリーズのCM。ナレーションに合わせてCMの中の人々が動く。

CMでは仕掛けのあるパネルや絵が使われている。

 

ナレ   繰り返される日常生活。お仕事やお勉強などで、日々時間に追われていませんか。たまにはそんな日常を離れ、非日常の空間で時間を忘れてゆっくりと羽を伸ばしてみませんか。ホテルファ・ブリーズでは都会の喧騒から離れ、鳥の声や波の音を聴きながらゆったりとしたひとときを過ごすことができます。お部屋でまったり過ごすもよし、プールで思いっきり遊ぶもよし。また、自然に囲まれたこの場所では、お部屋からは青い海を一望することができ、近くには雄大な滝がそびえたちます。都心からのアクセスは、専用のシャトルバスが便利です。お困りのことがあればホテルスタッフまでなんなりとお申し付けください。親切なスタッフが皆さまを心からおもてなし致します。最高の体験をあなたへ。ホテルファ・ブリーズ。

 

ホテルファ・ブリーズのフロント。ナミキとアカニシが会話をしていてそれをイワガキが横目に見ている。そこへホリが遅れてやってくる。

 

ホリ   頼まれていたやつ終わりました。

イワガキ あ、ごめんねありがとう。じゃあこれで全員揃いましたかね。改めまして、みなさんのフロント業務の指導を担当しますイワガキです。よろしくお願いします。じゃあまずは皆さんに簡単に自己紹介してもらおうかな。それぞれのお名前と、そうだな、じゃあ、どうしてこのホテルで働こうと思ったのかを教えてください。それじゃあ、君からお願いします。

ナミキ  はい。ナミキと言います。えっと、小さい時にこのホテルに泊まったことがあるんですけど、その時、フロントの方がとても優しく接してくださって。当時嫌なこととか結構あったんですけど、その方と接していたら気づいたら笑顔になってて。私もこんな人になりたいなと思って、このホテルで働こうと思いました。あの、このホテルで働くのがずっと夢でした。よろしくお願いします。

イワガキ そうなんですね。よろしくお願いします。じゃあ次は君、お願いします。

ホリ   はい。ホリと言います。最近よく流れているCMを観てこのホテルで働こうと思いました。

イワガキ 最近流れているCM?

ホリ   はい。最高の体験をあなたへっていうやつです。

イワガキ あ~はいはい。流れてますね。

ホリ   なんかここなら最高の体験ができるかなと思ってきました。

イワガキ あ、あれお客さんに向けてのやつですからね。ホリさんがここで働いたからといって最高の体験ができるわけではないですよ。

ホリ   あ、そうなんですか。

イワガキ はい。どっちかっていうと最高の体験をお届けする側ですね。

ホリ   あ、そうなんですね。あ、あと、名前がいいなと思ってこのホテルに決めました。

イワガキ 名前?

ホリ   はい。ホテルファブリーズってなんかいいなって。

イワガキ あ、ホテルファ・ブリーズだから。点忘れないでください。

ホリ   はい?

イワガキ いや、ホテルファブリーズだとちょっとにおい消すのかなっていうイメージが強くなっちゃうから。正式名称はホテルファ・ブリーズなので。ちゃんと点入れるようにしてください。

ホリ   あ、もしかしてファブリーズ関係ない感じですか?

イワガキ はい。全然関係ない感じのやつですね。

ホリ   たまたまな感じのやつですかね?

イワガキ たまたまな感じのやつですね。

ホリ   そうなんですね。まあ頑張ります。

イワガキ なんでそんなへこんじゃうんですか。まあ一緒に頑張りましょう。じゃあ最後。お願いします。

アカニシ はい。アカニシです。家が近いのでこのホテルで働こうと思いました。

イワガキ あ、そんな理由なんですね。

アカニシ ダメですか?

イワガキ いや、全然。立派な理由だと思いますよ。

アカニシ ホテルマンとして精一杯頑張ります。よろしくお願いします。

イワガキ よろしくお願いします。あ、ちなみになんですけど、最近はあんまりホテルマンって言わないんですよ。

アカニシ そうなんですか。

イワガキ はい。最近はホテリエって呼ばれているんですよ。

アカニシ あ~そうなんですね。じゃあホテリエとして精一杯頑張ります。

イワガキ はい、ありがとうございます。え~と、ナミキさんと、ホリさんと、アカニシさんですね。フロント業務初日で緊張すると思いますけど、何より大切にしてほしいのはお客様に最高の体験をお届けしようという気持ちですね。これを忘れないようにしてください。

三人   はい。

イワガキ あ、そうだ。皆さんはこのホテルにまつわる噂ってもう聞きましたか?

ナミキ  このホテルにまつわる噂?

アカニシ 聞いてないです。

ホリ   どんな噂なんですか?

イワガキ このホテルでは、新人がちゃんと育っているかを見極めるために、オーナーがお客様に扮して偵察しにくる抜き打ちの研修があるっていう噂です。

ホリ   そんな噂があるんですか。

ナミキ  初めて聞きました。

イワガキ なんでも、無理難題を突き付けてきたお客様が実はオーナーで、それはできませんって言ったスタッフがクビになったこともあるそうな。

ホリ   うわ大変だ。

ナミキ  そんなこと聞いたら緊張しちゃいますよ。

イワガキ まあ、ただの噂だし、私もここで勤務して5年になりますけど、そんな研修経験したことないんですけどね。とにかく、どんなお客様に対しても真摯に向き合うことが大事だっていうことです。

ナミキ  なるほど。

イワガキ えっと、じゃあまずはチェックインの作業について教えようかな。基本的にやることは次の4つです。お名前の確認、プランの確認、お部屋の番号を確認してルームキーをお渡しする、で、チェックアウトの時間をお伝えする。

ナミキ  あの、メモ取ってもいいですか?

イワガキ もちろんもちろん。あ、さっそくお客様いらっしゃったみたいなので、私が対応しますね。で、皆さんはそれを見ていてください。たぶん口で説明するより目で見てもらった方が早いと思うので。

ナミキ  わかりました。

 

クマノ入り

 

イワガキ いらっしゃいませ。本日のご用件はいかがなさいましたか。

クマノ  えっと、チェックインです。

イワガキ はい。かしこまりました。ではお名前お伺いできますでしょうか。

クマノ  えっと、予約したクマノです。

イワガキ はい。一名でご予約の、クマノ様でいらっしゃいますね。お待ちしておりました。クマノ様、本日より一泊のプランで承っておりますがお間違いないでしょうか。

クマノ  あ、はい。

イワガキ はい。ありがとうございます。え~と、こちらがルームキーでございます。本日のお部屋は5階でご用意しております。あちらにございますエレベーターをご利用くださいませ。あ、明日のチェックアウトは午前11時でございます。なにかご質問やご不明な点などございますでしょうか。

クマノ  あ、あの、シャンプー忘れちゃったんですけど、借りられたりしますかね。

イワガキ あ、はい、そうですね。あの、お部屋のシャワールームにアメニティをご用意させていただいておりますのでそちらをお使いいただければと思います。

クマノ  アメニティ?

イワガキ あ、えっと、箱に入った小さめのシャンプーやコンディショナー、ボディーソープがそれぞれのお部屋にご用意ございますのでそちらをお使いください。

クマノ  へ~、すごい。

イワガキ 他にも歯ブラシやスリッパなどもアメニティとしてご用意させていただいております。こちら当ホテルオリジナルのデザインとなっておりますので、もしよろしければ記念にお持ち帰りください。

クマノ  え!持って帰っちゃっていいんですか!

イワガキ はい。もしよろしければ是非。

クマノ  すごいなぁアメニティ。太っ腹ですね。

イワガキ ありがとうございます。他に何かご質問やご不明な点等ございますでしょうか。

クマノ  いや、大丈夫です。

イワガキ かしこまりました。それではごゆっくりお過ごしくださいませ。

クマノ  (3DSを取り出して)あ~、まだ誰ともすれ違ってないや。

 

クマノはけ。

 

イワガキ まあこんな感じですね。

ナミキ  うわぁ。本物だ。

ホリ   すご~い。

アカニシ こんなの覚えられないですよ。

イワガキ いやいやいや、流れさえ覚えてしまえばそんなに難しいことはないですから。まず本日のご用件はいかがなさいましたかと確認、まあこの時間に入口から来るお客様はだいたいチェックインだから。で、お客様のお名前を確認。そしたらここのパソコンにお客様のお名前を入力して、どのプランで予約しているかを調べる。で、それがあっているかをお客様に確認したらここに出てるお部屋の番号のルームキーをお渡しする。で、あっちにあるエレベーターをお使いくださいっていうのをお伝えしてチェックアウトの時間をお伝えする。あ、チェックアウトの時間は11時ね。で、最後にご質問やご不明な点はございますかってお客様に聞いたらおしまい。ほら、簡単でしょ?

アカニシ 全然簡単じゃないですよ。

ホリ   もう頭真っ白です。

ナミキ  本当にできるかなぁ。

イワガキ まあ流れを覚えることも大事だけど、何より大切なのはお客様に最高の体験をお届けしようという気持ちだから。

アカニシ 困ったらそればっかりですね。

イワガキ いや、本当に大事だから。あ、またお客様いらっしゃったみたいだね。じゃあ、ナミキさん、いってみようか。

ナミキ  え、いきなりですか!

イワガキ 何事も実践あるのみですよ。分からないところがあったらサポートしますから。いってみましょう。

ナミキ  わ、わかりました。

 

ウチヤマ、ツバキ、レン入り

 

レン   プール!プール!!

ツバキ  もうそんなプールばっかり言わないの。

レン   プール!

ウチヤマ わかったわかった。ちゃんと聞いてあげるからちょっと待ってて。

ナミキ  いらっしゃいませ。本日のご用件はいかがなさいましたか。

ウチヤマ チェックインお願いします。

ナミキ  かしこまりました。えっと、ではお客様のお名前お伺いできますでしょうか。

ウチヤマ ウチヤマです。

ナミキ  はい。えっと、ウチヤマ、ウチヤマ、あ、あった。はい。三名でご予約の、ウチヤマ様でいらっしゃいますね。お待ちしておりました。えっと、ウチヤマ様、本日より二泊のプランで承っておりますがお間違いないでしょうか。

ウチヤマ はい。

ナミキ  ありがとうございます。えっと、305、あ、こちらがルームキーでございます。本日のお部屋は3階でご用意しております。えっと、あ、あちらにございますエレベーターをご利用くださいませ。えっと、あ、そうだ。明後日のチェックアウトは午前11時でございます。なにかご質問やご不明な点などございますでしょうか。

ウチヤマ あの、子どもがプール使いたいんですけど、それって料金に含まれてますか?

ナミキ  あ、え~っと、

イワガキ すいません、プールは別料金になっておりまして。

ウチヤマ あ、そうなんですね。やっぱり事前に申し込んでおかないと使えない感じですかね?

イワガキ あ、いえ、全然ご利用いただけますよ。

ウチヤマ え、そうなんですか?

イワガキ はい。プールの入口にルームキーをかざすところがございまして、そちらにルームキーをかざしていただくと扉が開いてプールがご利用いただけるようになっております。チェックアウトの際にルームキーをお出しいただいてまとめてご精算という形になるので全然ご利用いただけますよ。

ウチヤマ あ、なるほど。じゃあこのルームキーをプールにもっていけば使えるってことですかね?

イワガキ 左様でございます。

ウチヤマ わぁ、よかったなレン、プール入れるって。

レン   ほんとに!やーたー!プール、プール!

ツバキ  この子サイトに載ってるプールの写真を見てからここいくここいくってずっと言ってて。でもこの人がプールは別料金って書いてあるの見つけて申し込んでないと入れないんじゃないかって昨日急に焦り始めてね。

ウチヤマ あはは、お恥ずかしい。

ナミキ  そうだったんですね。いっぱい楽しんでくださいね。

レン   ありがと~!

ナミキ  他に何かご質問やご不明な点等ございますでしょうか。

ウチヤマ いえ、大丈夫です。

ナミキ  かしこまりました。それではごゆっくりお過ごしくださいませ。

レン   ばいばーい!

 

ウチヤマ、ツバキ、レンはけ。

 

イワガキ ちょっとナミキさんすごいね。

ナミキ  すいません、プールのこと把握してなくて。

イワガキ いやいや、教えてないんだから知らなくて当然ですよ。それよりもその前の対応ほぼ完ぺきでしたよ。すごいね。

ナミキ  ほ、本当ですか。

イワガキ もっと自信もっていいよ。

ナミキ  ありがとうございます。いや、でもいいですね。こうしてお客様の笑顔に触れると自然と元気が出てきますね。

イワガキ そうなんだよ。やっぱりこれが何事にも代えられないやりがいだね。あ、次のお客様が来たみたい。じゃあ、ホリさん、いってみましょうか。

ホリ   え~あんなすごいの見せられた後だと緊張するなぁ。

イワガキ 大丈夫ですよ。ホリさんにもできますって。

 

半分泣きながらヒラマ入り。

 

ホリ   い、いらっしゃいませ。本日のご用件はいかがなさいましたか。

ヒラマ  チェックインで。

ホリ   か、かしこまりました。えっと、ではお客様のお名前お伺いできますでしょうか。

ヒラマ  ヒラマです。

ホリ   はい。えっと、ヒラマ様、あ、はい。一名でご予約の、ヒラマ様でいらっしゃいますね。

ヒラマ  一名、か。

ホリ   えっと、本日より一泊のプランで承っておりますがお間違いないでしょうか。

ヒラマ  (泣いている)

ホリ   ヒラマ様。あの、本日より一泊のプランで承っておりますが、お間違いないでしょうか。

ヒラマ  あ、すいません。はい。

ホリ   あ、ありがとうございます。えっと、405、こちらがルームキーでございます。本日のお部屋は4階でご用意しております。あちらにございますエレベーターをご利用くださいませ。明日のチェックアウトは午前11時でございます。なにかご質問やご不明な点などございますでしょうか。

ヒラマ  ちょっと私の話聞いてくれませんか!

ホリ   え、え~っと。

イワガキ 聞いて差し上げて。

ホリ   え、え~、は、はい。

ヒラマ  私には婚約者がいたんです。

ホリ   あ、そうなんですね。

ヒラマ  で、その婚約者と、このホテルに泊まりに来たんですけど。

ホリ   あ、はい。

ヒラマ  その婚約者、ここで出会った花屋の女に一目ぼれして浮気したんです。

ホリ   え、ひどいですねそれは。

ヒラマ  私それに耐えられなくて、結婚の話はなくなって、

ホリ   うわぁ。

ヒラマ  婚約者は私じゃなくてその花屋の女と結婚したんです。

ホリ   それはお気の毒に。

ヒラマ  どうしてあいつは知らない花屋の女と幸せになったのに私は今でもひとりぼっちなのよ!

ホリ   どうして、ですかね。

ヒラマ  私あの日から花が嫌いなんです。

ホリ   あ~、まあ花に罪はないとは思いますけど。

ヒラマ  それでね、今日はその婚約者とここに泊まりに来てからちょうど一年なんです。

ホリ   あ、そうなんですか。

ヒラマ  だから私もここでいい人見つけて、絶対に幸せになってやるんです!

ホリ   あ~そうなんですね。他に何かご質問やご不明な点等ございますでしょうか。

ヒラマ  ないです!

ホリ   かしこまりました。それではごゆっくりお過ごしくださいませ。

 

ヒラマ、はけ。

 

ナミキ  なんか、すごい人でしたね。

イワガキ まあホテルにはいろいろなお客様がいらっしゃるから。

アカニシ 今回の宿泊でいい人見つかると良いですね。

 

   ウチヤマ入り。

 

ウチヤマ あの、すいませんちょっと聞いてもいいですか?

イワガキ はい。いかがなさいましたでしょうか。

ウチヤマ 明日この辺りで観光しようと思ってるんですけど、ガイドブックに載ってた商店街か遊園地のどっちかに行こうかなって思ってて、どっちがおすすめですかね?

イワガキ そうですね、あ、こちらの商店街なんですけど、結構地元の方向けというか、観光の方が行って楽しめるかって言われると正直微妙なんですね。

ウチヤマ あ、そうなんですか。

イワガキ はい。おせんべい食べるくらいしかすることないんですね。

ウチヤマ あ~、そうなんですね。

イワガキ はい、なので個人的にはお子様もいらっしゃるようなので遊園地の方がおすすめかなぁと。

ウチヤマ なるほど。

アカニシ あ、でも、こっちの遊園地もそんなにやることないですよ。

ウチヤマ え、あ、そうなんですか。

アカニシ はい。なんか結構コラボとかしてしのいでる感じの遊園地なので、特にこれと言って目玉はないと言いますか。まぁそのコラボに興味あれば楽しめるかもしれないんですけど、子どもというよりは廃課金勢をターゲットにしたアニメとかとよくコラボしてるのでお子さんに刺さる感じではないかなと思います。

ウチヤマ あ~、そういう感じなんですね。

アカニシ はい。お子さんがガチャで爆死したこととかあれば楽しめるかもしれないんですけどね。

ウチヤマ なるほど。う~ん、どうしようかな。

アカニシ ・・・。

イワガキ あ~、そうしましたら私からの提案にはなってしまうんですけど、こちらのアスレチックなんていかがでしょうか。ホテルからバスも出ていますし、こちらならお子様も思いっきり体を動かして遊んでいただけると思いますよ。

ウチヤマ へ~こんなところがあるんですね。このガイドブックには載ってなかったけどな。

アカニシ あ、多分ここ最近できたところだから載ってないんだと思います。

ウチヤマ なるほど。ありがとうございます。ちょっと妻と娘にも話してみますね。

イワガキ お役に立てていれば幸いです。ごゆっくりお過ごしくださいませ。

 

   ウチヤマはけ。

 

イワガキ アカニシさん詳しいね。

アカニシ まあこの辺住んでますからね。

イワガキ あ、そっか。言ってましたね。あ、アカニシさんさ、できたらでいいから、お客様に今できることのご提案をしてあげるっていうのを意識してみようか。

アカニシ はい?

イワガキ えっと、さっき商店街と遊園地には行かない方がいいみたいな流れになったじゃないですか。なんかこういうできないみたいな流れになったら、その後にこれならできますよっていうご提案までしてあげられるとばっちりかな。

アカニシ なるほど。

イワガキ やっぱりできないことよりもできることを考えた方が前向きな気持ちになれると思うからさ。

アカニシ わかりました。

イワガキ あ、次のお客様来ましたね。じゃあ次はアカニシさんがやってみましょうか。

アカニシ はい。

 

オオタニ、リカ、イチャイチャしながら入り。

 

リカ   ねぇもう歩けな~い。

オオタニ なんでだよ。歩こうって言ったのリカの方じゃん。

リカ   だってぇ~、歩いた方がシュウくんと二人っきりでいられる時間が長くなると思ったんだもん。

オオタニ ちょっとなんだし~!好きすぎるって俺のこと~!かわい!

アカニシ いらっしゃいませ。本日のご用件はいかがなさいましたか。

オオタニ あ、チェックインで。

アカニシ かしこまりました。えっと、ではお客様のお名前お伺いできますでしょうか。

オオタニ えっと、あ、コタニです。

リカ   ぷぷぷ!

アカニシ えっと、コタニ、コタニ、

リカ   ねぇちょっと~。

オオタニ あ、すいません間違えました。オオタニです。

アカニシ はい。えっと、オオタニ、オオタニ、

リカ   ねぇちょっとシュウくん面白すぎ~!

オオタニ 俺おもろい?やっぱおもろい?オオタニなのにコタニって言っちゃう感じおもろい?てか笑ってるリカ可愛すぎるんだが!かわい!

アカニシ はい。二名でご予約の、オオタニ様でいらっしゃいますね。本日より一泊のプ

ランで承っておりますがお間違いないでしょうか。

オオタニ あ、お間違いないで~す。

リカ   あはははははは!

アカニシ ありがとうございます。えっと、こちらがルームキーでございます。本日のお部屋は6階でご用意しております。あちらにございますエレベーターをご利用くださいませ。明日のチェックアウトは午前11時でございます。なにかご質問やご不明な点などございますでしょうか。

オオタニ あの、一個いいっすか?

アカニシ なんでしょうか?

オオタニ このホテルファブリーズって、やっぱあのファブリーズってことなんすか?なんかにおい消してこうぜみたいな?

リカ   ぷぷぷぷぷぷ!

アカニシ あ、えっと、

ホリ   あ、ホテルファ・ブリーズなので。点忘れないようにしてください。

イワガキ いい、いい、いい、いい。

ホリ   え?

イワガキ ホリさん、大丈夫だから。うん。そのファブリーズでございます。

オオタニ え、あ、そうなんすね!変な名前っすね。変えたほうがいいんじゃないですか?

イワガキ 貴重なご意見ありがとうございます。ですがこれでやらせていただいておりますので。他に何かご質問やご不明な点などございますでしょうか。

オオタニ いや、ないっす。

イワガキ かしこまりました。それではごゆっくりお過ごしくださいませ。

リカ   ねぇちょっと荷物もってよ~。

オオタニ なんでよ、こんくらい自分で持ってよ。

リカ   重くて持てない~疲れて歩けない~。

オオタニ え~じゃあ、お姫様抱っこしてあげよっか?

リカ   あ、それはマジで大丈夫。

オオタニ え、ちょいちょいちょいちょ~い!なんでなんで~!

リカ   困ってるシュウ君もかわいい

オオタニ ちょまじなんだし~!

 

オオタニ、リカ、イチャイチャしながらはけ。

 

アカニシ あ~イライラした。

イワガキ ちょっと、口に出さないでください。大事なお客様ですよ。

アカニシ 私ああいうの見るとイライラしちゃうんですよね。

イワガキ そう言うこと言わないの。

アカニシ どうせすぐ喧嘩して別れますよ。あんなのうわべだけの関係なんだから。

イワガキ アカニシさん!どんな人だろうとお客様であればきちんと対応する、それが私たちホテリエのあるべき姿ですよ。

アカニシ は~い。

ホリ   っていうかイワガキさん、あの人ホテルファブリーズって言ってましたよ。なんで訂正しないんですか。

イワガキ いや、お客様だから。

ホリ   は?

イワガキ お客様が、ホテルファブリーズって言ったらもうそれはホテルファブリーズだから。もうファブリーズでいいの。

ホリ   え?でも、正式名称・・・

イワガキ 確かに正式名称はホテルファ・ブリーズなんだけど、お客様がホテルファブリーズって言ったらお客様にとってはホテルファブリーズでいいの。もうそれがお客様にとっての正解だから。でも私たちは誰が何と言おうとホテルファ・ブリーズなんだって強く思おう。ね。それが一番大事だから。

ホリ   それ大事マンブラザーズバンドの歌詞ですか?

イワガキ 大事マンブラザーズバンドの歌詞じゃないですよ。大事マンブラザーズバンドは負けないこと、投げ出さないこと、逃げ出さないこと、信じぬくこことだから。大事マンブラザーズバンドはファブリーズの話なんかしないんですよ・・・

 

   クマノ入り。

 

クマノ  あの、すいません。私って何号室でしたっけ?

イワガキ あ、えっと、お客様のお名前お伺いしてもよろしいでしょうか。

クマノ  えっと、クマノです。

イワガキ クマノ様ですね。(パソコンを確認)えっと、501号室になります。あちらにございますエレベーターで5階まで上がっていただいてまっすぐ進んだところにございますよ。

クマノ  なるほど。ありがとうございます。

イワガキ ごゆっくりお過ごしくださいませ。

クマノ  (3DSを取り出して)お、すれ違ってる。あ~、この人メトロイドのピースしか持ってないや。あとピクミンの真ん中のピース来ればコンプリートなのにな。

 

   クマノはけ。

 

ホリ   あの人絶対すれ違い通信やってますよね。

アカニシ 懐かしいよねすれ違い通信。

ナミキ  赤いピースは公式のMiiからしかもらえないんだよね。

ホリ   あとなんかわかんないけど珍しい帽子かぶってる人はピースいっぱい持ってるよね。

アカニシ あ~それわかる!

ホリ   ワドルディの帽子とかね。

アカニシ あったあった!あとさ、まだすれ違ったことない地域の人とすれ違うと異常に嬉しかったよね。

ナミキ  嬉しかった!え、名前英語じゃん!みたいなね!

アカニシ 別になんかもらえるわけではないのにね。

ホリ   え、じゃああれ覚える?花の種もらってくやつとか、すれ違った人の勢力引き連れて城に乗り込んでくやつとか。

ナミキ  え、なにそれ?

アカニシ なんかあれだよね?課金しなきゃできなかったやつだよね?

ホリ   あ、そうそうそう。

イワガキ ちょっとホテルのフロントですれ違い通信の話で盛り上がらないでください。ていうか三人とも詳しいね。

アカニシ まあ世代なので。

ホリ   そういえば知ってる?任天堂ってもともとは花札作ってた会社なんだよ。

ナミキ  へ~そうなんだ。

イワガキ なんで急に花札の話してるんですか。

ホリ   いや、すれ違い通信の話、任天堂の話、花札の話ですよ。僕花札好きなんで。

アカニシ へ~珍しいね。

ホリ   あ、花札やります?今裏にありますけど。

イワガキ やりません。仕事中だしルール分からないし。

 

   ヒラセ入り。

 

ヒラセ  あの~、すいません。

ホリ   はい、なんでしょうか。

ヒラセ  レストランってどっちですかね?

ホリ   あ、え~っと、

イワガキ 当ホテルのレストランでお間違いないでしょうか。

ヒラセ  あ、はい。

イワガキ でしたらあちらまっすぐ行っていただいた突き当りにございます。

ヒラセ  あ、なるほど。ありがとうございます。

イワガキ ごゆっくりお過ごしくださいませ。

 

   ヒラセはけ。

 

ホリ   すいませんまだどこになにがあるか把握してなくて。

イワガキ フロント立つの初日なんだから無理ないですよ。

ナミキ  でも今みたいに聞かれることあるから覚えておかないとですよね。

イワガキ そうですね。じゃあ今のうちになんとなく覚えちゃいましょうか。あっちがレストランで、あっちがプール、で、あっちが客室です。

ホリ   なるほどなるほど。えっと、あっちがレストランで、あっちがプールで、あっちが客室。あっちがレストランで、あっちがプールで、あっちが客室。

 

   レン登場。

 

レン   すいません、おしょんしょんってどっちですか?

ホリ   ん?おしょんしょん?あ~、おしょんしょんですね。えっと、おしょんしょんは、あっちがレストランで、あっちが客室で、あっちがプールだから・・・すいませんおしょんしょんってどっちですか?

イワガキ お手洗いはあっちですね。

ホリ   あ、ありがとうございます。おしょんしょんあっちだって。

レン   ありがとう~!

 

   レンはけ。

 

ホリ   おしょんしょんはあっちなんですね。

イワガキ おしょんしょんって言うのいったんやめましょうか。

ホリ   え?

イワガキ いや、ちょっと、ホテルには似合わないかなと思ったので。

ホリ   あ、そうですよねすいません。あ、でもおしょんしょんって言わないってなったらなんて言えばいいですか?

イワガキ まあ、お手洗いかお化粧室が無難ですかね。

ホリ   あ~なるほど、なんか覚えることがいっぱいだな。

イワガキ ちょっとおさらいしておきましょうか。

ホリ   そうですね。えっと、あっちがお手洗いで、あっちがトイレで、あっちがおしょんしょん。

イワガキ 全部お手洗いになっちゃってますよ。

ホリ   ああ、す、すいません。

イワガキ いいですか、あっちがレストランで、あっちがプールで、あっちがお手洗い、で、あっちが客室です。

ホリ   え、えっと、あっちがレストランで・・・

 

   ウガ入り。

 

ウガ   ちょっといいですか?

イワガキ はい。どうなさいましたでしょうか。

ウガ   私の部屋のシャワーの温度が熱すぎるんだけど、どうしてくれるの?

イワガキ はい?

ウガ   いやだから、私の部屋のシャワーが熱すぎるんだけど、どうしてくれるのって聞いてるの。

イワガキ えっと、そうですね、一応レバーを回すと温度調節できるようになっていると思うのですが。

ウガ   いや、そんなことわかってるんですよ。それにしても熱いからここにきてるんですよ。え、見たことあります?温度調節のレバー回さない人?温度調節のレバー回さずにアチチ!アチチって言ってフロントに来る人。見たことないですよね?

イワガキ ・・・。

ウガ   え、返事してください?見たことないですよね?

イワガキ あ、はい。そうですね、見たことないです。

ウガ   そうでしょ?温度調節のレバー回さないでアチチアチチってする人いないですよね?ただのバカじゃないですかそんなの。温度調節のレバーも回さずにただシャワー浴びてアチチ!アチチって。え、なんですかバカにしてるんですか私のこと?温度調節のレバーも回せないバカだと思ってるんですか私のこと?

イワガキ 思っておりません。

ウガ   こういう時だけは返事早いんだ。

イワガキ 申し訳ございません。

ウガ   まったく、使えないスタッフだなぁ。

 

   ウガはけ。

 

ナミキ  なんですか今の。イワガキさん何にも悪くないじゃないですか。

イワガキ たまにいるんですよ。ただ文句言いたいだけのお客様。いわゆるクレーマーって言うやつ。

アカニシ なんかテンション下がりますね。

イワガキ そうだね。もちろんすべてのお客様に真摯に向き合わないといけないし、意見はきちんと聞くべきだけど、理不尽な言葉はあんまり気にしすぎなくていいからね。みんなが考えすぎてつぶれちゃうのが一番よくないから。

 

   レン登場。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

   レンはけ。

 

ナミキ  子どもは無邪気でいいですね。

 

   クマノ入り。

 

クマノ  あの、すいません。私って何号室でしたっけ?

イワガキ あ、えっと、クマノ様でいらっしゃいますよね?(パソコンで確認)

クマノ  はい、そうです。

ナミキ  501号室だったと思いますよ。

イワガキ そうですね。501号室でございます。

クマノ  あ、そうだそうだ。すいません。ありがとうございます。

イワガキ ごゆっくりお過ごしくださいませ。

クマノ  (3DSを取り出して)お、ワドルディの帽子じゃん。これは期待が膨らみますなぁ。

 

   クマノはけ。

 

ナミキ  あの人さっきも来てましたよね。

イワガキ ね。ルームキーに部屋番号書いてあるはずなんだけどな。

 

   ツバキ入り。

 

ツバキ  あの、すいません。トイレってどっちですかね。

ホリ   お手洗いはあっちですね。

ツバキ  ありがとうございます。

 

   ツバキはけ。

 

イワガキ 今度はスムーズに言えましたね。

ホリ   さすがに覚えましたよ。

アカニシ あそこのトイレって宿泊者の方も使うんですね。

イワガキ 言われてみればそうですね。お部屋にトイレあるのになんでわざわざ一階まで降りてくるんだろうね。

ナミキ  あ、お客様来ましたよ。

イワガキ あ、本当だ。じゃあ次は、

ナミキ  あの、次、私にやらせてもらえせんか?

イワガキ え、いいですけどどうして?

ナミキ  さっきのリベンジがしたいんです。

イワガキ リベンジ?

ナミキ  はい。さっきは完璧にできなかったので。

イワガキ 完璧って。さっきも十分できてたけどなぁ。

ナミキ  お願いします。今度は完璧にやるので。

イワガキ そんな完璧にこだわるもんじゃないですよ。わかりました。じゃあナミキさん、お願いします。

ナミキ  はい。

 

マツカワ、ヒカリ入り。

 

マツカワ 思ったよりいいホテルだね。

ヒカリ  そうね。

ナミキ  いらっしゃいませ。本日のご用件はいかがなさいましたか。

マツカワ チェックインで。

ナミキ  かしこまりました。えっと、ではお客様のお名前お伺いできますでしょうか。

マツカワ マツカワです。

ナミキ  はい。えっと、はい。マツカワ様・・・

ヒカリ  もう私もマツカワなんだもんね。

マツカワ なんか変な感じするよね。

ナミキ  二名でご予約の、マツカワ様でいらっしゃいますね。本日より二泊のプランで承っておりますがお間違いないでしょうか。

マツカワ はい。

ナミキ  ありがとうございます。こちらがルームキーでございます。本日のお部屋は4階でご用意しております。あちらにございますエレベーターをご利用くださいませ。明後日のチェックアウトは午前11時でございます。なにかご質問やご不明な点などございますでしょうか。

マツカワ いや、大丈夫です。

ナミキ  かしこまりました。それではごゆっくりお過ごしくださいませ。

マツカワ あ、ごめん。車のカギ閉めるの忘れたかも。ちょっと見てくるから先行ってて。

ヒカリ  え、一緒に行くよ?

マツカワ ううん。確認するだけだから一人で大丈夫だよ。

ヒカリ  そう。わかった。

 

ヒカリはけ。

 

マツカワ すいません、例のやつってもう準備できてる感じですかね?

ナミキ  例のやつ?

イワガキ あ、もちろん。すでにお部屋にご用意させていただいております。

マツカワ あ、そうですか。ありがとうございます。

イワガキ サプライズ、成功すると良いですね。

マツカワ あ、はい。ありがとうございます。

イワガキ ごゆっくりお過ごしくださいませ。

 

   マツカワはけ。

 

ナミキ  例のやつってなんですか?

イワガキ ああ、マツカワ様からサプライズのお手伝いをお願いされていてね。奥様お花が大好きだから部屋を花でいっぱいにしてくれって頼まれたんだよ。なんでも、ハネムーンだから二人の思い出に残るように奥様を驚かせたいんだって。

ナミキ  へぇ。そうだったんですね。

ホリ   あ、さっきの花これ用だったんですね。

イワガキ そうそう。ちゃんとやってくれた?

ホリ   はい。ばっちりだと思いますよ。

アカニシ え、お花はホリくんが設置したの?

ホリ   そう。なんか朝来たらイワガキさんに大量の花渡されて。これを406号室に置いてきてくれって頼まれたの。いやほんと引く量の花渡されたからびっくりしたよ。

ナミキ  あ~だからさっき遅れてきたのか。

ホリ   そういうこと。

アカニシ にしても素敵な旦那さんだなぁ。私ああいう人と結婚したいです。

ナミキ  それ、めっちゃわかる~!

 

   ツバキ入り。

 

ツバキ  (3DS見ながら)えっ!この人めちゃくちゃピース持ってるんだけど!すご!

 

   ツバキはけ。

 

アカニシ なんでこんなみんな3DSやってんの。

ホリ   まあホテルは人が集まる場所だからね。

 

   ウガ入り。

 

ウガ   ちょっといいですか?

アカニシ うわ、また来たよ。

ウガ   あのね、全然欲しいピースが出てこないんだけど、これどうしてくれるの?

イワガキ なんでょうか?

ウガ   いやだから、このファイアーエムブレムのね、ここのピースが欲しいのにすれ違うやつらみんなここのピースもってないのよ。これどうしてくれるのって言ってるの。

ナミキ  え、この人も3DSの話してる?

ウガ   心傷みません?お客さんがこんな悲しい目に合ってて。

ホリ   お気持ちお察しいたします。

ウガ   いや察されてもね。

 

   レン入り。

 

レン   すいません!おしょんしょんってどっちでしたっけ!

イワガキ なんでこの家族そんなにトイレ行きたがるの。ごめんね。お部屋にトイレありますよ。

レン   お部屋のトイレお父さんがずっと入ってて使えないの。

ホリ   あ~。お父さんウンコマンだね。

レン   ウンコマン?

ウガ   ウンコマン?

イワガキ ウンコマンって言うのいったんやめましょうか。

ホリ   あ!そっか。ホテルには似合わないですもんね。

イワガキ いや、そもそも言わなくていいんですよ。

レン   ねえおしょんしょんどっち!

ホリ   あ、おしょんしょんはあっちです。

レン   ありがとう!

 

   レンはけ。

 

イワガキ ホリさん、おしょんしょん戻っちゃってますよ。

ホリ   ああ、すいません。やっぱり向こうがおしょんしょんって言ってると口がついついおしょんしょんの口になっちゃいますね。

イワガキ もう気を付けてくださいよ。

ウガ   ちょっと人の話遮っておしょんしょんの話しないでもらっていい?なんですかおしょんしょんの口ってきいたことないですよ。きったない言葉。

イワガキ 申し訳ございません。

ウガ   で、もう埒明かないよ。このファイアーエムブレムのピースどうしてくれるの。

イワガキ どうしてくれるのと言われましても。

 

   ツバキ入り

 

ツバキ  あの、すいません、部屋に入ろうと思ったんですけどルームキー持ってないことに気づいて。これ、もしかして私、一生部屋に入れない感じのやつですかね?

ウガ   そんなわけねぇだろ。

イワガキ オートロックになっているのでルームキーをかざしていただくか、内側から開けていただくかしかないんですけど・・・

ナミキ  中に旦那さんとかいらっしゃらないんですか?

ツバキ  ドアをノックして呼んでみたんですけど返事がなくて。

ホリ   あ、そっか、ウンコマンだ。

イワガキ ホリさん。

ホリ   あ、すいません。

ツバキ  どうしよう。今日廊下で寝るかぁ。

イワガキ あ、あの、お部屋の番号とお客様のお名前おっしゃっていただければ別のルームキーお渡ししますよ。

ツバキ  え、本当ですか。

イワガキ はい。こういうお客様結構いらっしゃるので。

ツバキ  助かった~!えっと、305号室のウチヤマです。

イワガキ はい、305号室のウチヤマ様ですね。こちらスペアのルームキーになります。お帰りの際に既にお渡ししてあるルームキーと一緒にご返却いただければ大丈夫ですので。

ツバキ  すいません。ありがとうございます。

イワガキ ごゆっくりお過ごしくださいませ。

ウガ   話し終わった?ずいぶん待ったよ。ファイアーエムブレムのピースどうするか決まった?

イワガキ そういわれましても私共ただいま3DSを持ち合わせていなくてですね。ファイヤーエンブレムのピースをご用意することはできかねます。

ウガ   ファイアーエムブレムね。作ってる人に失礼だよそれ。

イワガキ 大変申し訳ございません。

アカニシ あの、多分なんですけど、501号室にいろんなピース持ってるお客様がいるので、501号室の前たくさん通ってみたらいいんじゃないですか。

ウガ   ・・・え?

アカニシ 501号室に泊まってるお客様がなんかピースいっぱい持ってるみたいなそぶりを見せてたので、その前をいっぱい通ったらファイアーエムブレムのピースも手に入ると思いますよ。

ウガ   あ、そうなの。え、何号室って言った?

アカニシ 501号室です。

ウガ   501号室ね。うん、これは、ありがとう。ちょっと行ってくるね。

ツバキ  え、ピースってもしかしてすれ違い通信の話ですか?

ウガ   そうですけど。

ツバキ  え、私も行きたい!行きましょう行きましょう!

ウガ   え、僕ら初めましてですよね?

 

   ウガ、ツバキはけ。

 

イワガキ はぁ、助かった。アカニシさん本当にありがとう。

アカニシ 前向きなご提案してみました。

イワガキ いや、完璧でしたよ。

ホリ   なんであのお母さんルームキーは持って部屋出ないのに3DS持って部屋出たんですかね。

アカニシ トイレで誰かとすれ違うかもしれないって思ったんじゃない?

ホリ   え~やだぁトイレですれ違い通信とかしたら便座のピースとか送られてきそう。

アカニシ 青い鳥が便座の丸い部分のピースだけ運んでくるの嫌だな。

ホリ   3DSだからウォシュレットの水とか飛び出してきそう。

アカニシ ビデ押すとね。

ナミキ  ねえ汚い。

ホリ   水なんだから綺麗でしょ。

イワガキ 3DSの話とお手洗いの話同時にするのやめてください。なんかイレギュラーな対応ばっかりだな今日。とりあえず一旦お客様の流れ止まったみたいだね。どう、ここまでやってみて。

ナミキ  いや、もちろん大変ですけど、お客様の笑顔を見ていたらなんとか頑張れそうです。

イワガキ うんうん。さっきのお客様の対応もよくできていましたよ。

ナミキ  ありがとうございます。でも、クレーマーの対応とかアカニシさんすごかったし私いる意味ないですよね。

イワガキ え?

ナミキ  アカニシさんのとっさの対応完璧だったし、私なにもできてないなって。

イワガキ いやいやそれは違いますよナミキさん。いる意味のない人なんていないんですよ。そもそもいる意味のある人なんていないんですから。

ナミキ  う~ん。

イワガキ そんな深く考えるもんじゃないですよ。ね、気楽にいきましょう。どうですか。ここまでやってみてなにか質問ありますか?

ホリ   あの、チェックインのことじゃないんですけど、いいですか?

イワガキ もちろん。なんでも聞いてください。

ホリ   ずっと気になってたんですけど、このベルなんですか。

イワガキ あ~これね。もともとはフロントにスタッフがいない時にお客様が鳴らす用のベルだったんだけどそんなタイミング中々ないからさ、今はホテリエが困ったときにヘルプを呼ぶ用においてあるって感じ。

ホリ   へぇ~そうなんですね。

イワガキ そうそうそう。まあこれが鳴ることなんてそうそうないんだけどね。なんか困ったときに鳴らすんだなぁ~くらいの感覚?なんかベルおいてあるんだなぁ~くらいに思ってもらって大丈夫。

ヒラマ  (袖から)すいません。

 

花まみれになったヒラマ入り。ゆっくりとカウンターに近づいていく。

ヒラマと目が合うと、イワガキすかさずベルを鳴らす。

 

イワガキ 失礼ですがお客様、どういうことでしょうか?

ヒラマ  いや、あの、なんか部屋に入ったら部屋が大量の花で満たされてて。最初は幻覚かなって思ったんですけど幻覚じゃなくて。

イワガキ 私も幻覚だと思いたいです。ホリさん。お花406号室においてくれたんだよね?

ホリ   え、たぶんそうだと思うんですけど。

イワガキ 失礼ですがお客様、お部屋の番号って覚えていらっしゃいますか?

ヒラマ  えっと、405号室だったと思います。

イワガキ ホリさん!多分隣の部屋に置いちゃってますねこれ。

ヒラマ  あの、これって一体どういうことですか。

イワガキ え~っと、これは、そのぉ。

 

オオタニ、リカ入り。

 

リカ   ちょっとあんたいい加減にしてよ。

オオタニ はぁ?それはこっちの台詞なんだけど。

リカ   ほんと頭硬すぎ。意味わかんない。

オオタニ その言葉そっくりそのまま返すわ!

アカニシ ほらねほらねほらね!絶対すぐ喧嘩すると思った!私!

イワガキ ちょっと、お客様が喧嘩してワクワクするのやめてください。

 

マツカワ、ヒカリ入り。

 

ヒカリ  お前マジでふざけんなよ。

マツカワ はぁ?お前に言われる筋合いはないんだけど。

ヒカリ  なんで、なんで?これはマジであんたがおかしい。

マツカワ はぁ?ちゃんと考えてからもの言えよ。

アカニシ ちょっと待ってよ。なんであの仲良かった新婚さんも喧嘩してるの!?

ナミキ  もしかしたらあれじゃない。サプライズの花が無かったからそれでもめてるとか。

アカニシ うわぁ、絶対それじゃん。私とナミキさんで新婚さんの対応するので、イワガキさんとホリくんはこちらの方の対応お願い。いくよ。

ナミキ  うん。

イワガキ え、あ、ちょっと!

ヒラマ  あの、これって、どういうことですか。

イワガキ え、え~っと、ですね。ちょっとホリさん、なんとかして。

ホリ   え、ぼ、僕ですか!?

イワガキ だってホリさんが蒔いた種が花咲いてこうなってるんでしょ。

ホリ   い、いや、それはそうですけど。

ヒラマ  花、花屋、あいつは幸せになって、私は一人なんだぁ!!(泣き出す)

 

   ヒラセ入り。

 

ヒラセ  あの、すいません、トイレってどっちですか。

イワガキ トイレはあっちです。

ヒラセ  あ、ありがとうございます。

 

   ヒラセはけ。

レン入り。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

   レンはけ。

 

ヒカリ  絶対あなたが間違ってる!

マツカワ いいやお前が間違ってる!

アカニシ あの、すいません、すいません。なにかわたくし共に不手際がございましたでしょうか?

マツカワ は?

ナミキ  いや、その、とても先ほどのお二人からは想像できないほど喧嘩してらっしゃったので。なにが原因だったのかなと思いまして。

ヒカリ  この人が、今日は虹色の滝に行こうっていうんですよ!今日はホテルの近くの海でゆっくりしようって話だったのに!

アカニシ え?

マツカワ いやだから、そうだったけど、こんなにいい天気で、虹色の滝が綺麗にみられる絶好のチャンスだから、虹色の滝に行こうって言ってんの!

ナミキ  とりあえず花の件ではないみたいだね。

アカニシ そうね。

マツカワ 今日は絶対虹色の滝に行くべきだろ!

ヒカリ  いいや、絶対に近くの海に行くべき!

リカ   やっぱりそうですよね?

ナミキ  え?

リカ   今日は海に行くべきですよね?

オオタニ いいや、今日は虹色の滝に行くべきですよね?

アカニシ は?

リカ   そもそも海に行こうって話だったし、虹色の滝なんてここからまたバスに乗ってさらに歩いて行かないといけないんだから絶対疲れるだけですよね?

オオタニ いやだから、そうまでしてでも行く価値が虹色の滝にはあるって言ってるんだろ!今日しか見れないかもしれないんだぞ虹色に輝く滝!

アカニシ え、全くおんなじ題材でもめてるんだけど。

マツカワ だいたい今回の旅行費のほとんど俺が出してるんだぞ。普通俺の言うことに従うだろ!

オオタニ おお!そうだそうだ!

ヒカリ  はぁ?ここでお金の話出してくるのまじで違うんだけど。なんでどこに行くか決める話とどっちがお金多く出してるみたいな話をすぐに結びつけるの気持ち悪いよ?

リカ   ほんとそう。

ナミキ  しかもなんかめっちゃ共感してる。

 

  レン入り。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

レンはけ。

 

ヒラマ  私はいつまでたってもひとりぼっち。さみしい人間なのよぉ!

イワガキ ホリさん、ホリさん。いいですか、大切なのは、お客様に最高の体験をお届けすることですよ。

ホリ   え、そんなこと言われても。

 

   クマノ入り。

 

クマノ   あの、すいません。私の部屋って何号室でしたっけ?

イワガキ  501号室ですよ!もう私たちが覚えちゃいましたよ。

クマノ   すいません、いや、その。5階までは行けるようになったんですけど、5階についた途端何号室に入ればいいか忘れちゃうんですよね。

イワガキ  ルームキーにお部屋の番号書いてありますよ。

クマノ   え、あ!ほんとだ!

ホリ    あ、よかったらお部屋までご案内しましょうか?

クマノ   あ、それは本当に大丈夫です。ありがとうございます。

 

   クマノはけ。

 

イワガキ ちょっと、逃げようとしないでくださいよ。

ホリ   してないですよ、僕はただ最高の体験をお届けしようと・・・

ヒラマ  うわぁ~んわんわん!うわぁ~んわんわん!

イワガキ ほらホリさん!お客様がこんなことになっている!なんとかこう気分を変えるような、なんかなんかこう悲しさがまぎれるようなことしましょう!

ホリ   え、え~、あ~じゃあ、すいませんお客様、あの~、私と遊んだりします?

ヒラマ  はい?

ホリ   いや、なんか、遊んだら気分も晴れるかなと思いまして。

ヒラマ  へ?

ホリ   あの、僕向こうに花札あるんで良かったら一緒にやりませんか?新しい恋こいこい~!なんつって

ヒラマ  花札?花?花屋の女、浮気した男、ひとりぼっちの私!うわぁあああああああ!

イワガキ ホリさんなにしてんの!

ホリ   え、だってイワガキさんが気分を変えるようなこととか言うから

イワガキ 何それ故意でやってんの?

ホリ   あ~こいこいだけに?イワガキさんうまいですね。

イワガキ 笑ってる場合じゃないですよ!

 

   ヒラセ入り。

 

ヒラセ  あの、すいません。プールってどっちですか?

ホリ   プールはあっちです。

イワガキ そっちはトイレ。プールはあっち。

ヒラセ  ありがとうございます。

 

   ヒラセはけ。

レン入り。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

レンはけ。

 

マツカワ いやいやいやいや、お金多く出してる方が行き先の決定権握ってるっていうの

は間違ってないと思いますけどね。

ヒカリ  何その言い方。そもそも出したお金の量でああだこうだ言ってるのが小っちゃいって言ってんの。

オオタニ 小っちゃいとかじゃないですよ。そんなに言いたいならお金均等に出してから

言ってください。

リカ   だから今お金の話じゃないでしょ?どこ行くかの話してるんでしょ?なんですぐそうやって金の話に論点ずらすかな。お金でしか優位に立てないからすぐそうやってお金の話するんでしょ?気持ち悪いな。ていうか私まだこの前のこと許してないからね?

オオタニ は?なんだよこの前のことって

リカ   はぁ?じゃがバターはじゃがいもが主役でバターが脇役だってことに決まってるでしょ

オオタニ おいおいだからじゃがバターはバターが主役だっつってんだろ?

リカ   本当に頭おかしいどう考えてもじゃがバターはじゃがいもが主役でしょ

ナミキ  え、何で今じゃがバターの話してるの?

ヒカリ  ちょっと待って、じゃがバターはバターが主役でしょ?

リカ   は?

マツカワ いやいや、じゃがバターはじゃがいもが主役ですよね?

オオタニ え?

ヒカリ  じゃがいもだけ温めたってあんな魅力的にならないんだからバターが主役に決まってるでしょ

オオタニ そうですよね!

マツカワ おいおいおい、それはじゃがいもがあった上での話な。バターだけじゃなんにもできないんだからじゃがいもが主役に決まってんだろ!

リカ   ほんとそう。

アカニシ なんか構造変わってるんだけど。

 

レン入り。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

レンはけ。

 

イワガキ ほらホリさん。こんなんじゃこのお客様最高の体験できないまま帰ることになっちゃいますよ。

ホリ   え~いやそれはそうですけど・・・

 

   クマノ入り。

 

クマノ  あの、私の部屋の前に3DS持った知らない男の人と女の人が立ってたんですけど、あれってなんですか?

イワガキ え?!あ、それ、すれ違い通信のピースもらいに来てる人たちだと思います。

クマノ  ・・・え?

イワガキ いや、その、お客様がものすごくすれ違い通信のピースをお持ちのようだったので、その、ピース欲しそうにしてたお二人が、お客様のお部屋の前に行ったと言いますか。

クマノ  あ、そうなんですね。(3DSひらいて)あ、この人かな。あ、はじめての地域だ。それにしても、すれ違い通信っていいですよね。もう二度と出会うことはないかもしれないのに、データとしてはこのゲーム機に残り続けるっていう。一期一会っていうか、出会ったときのことを心のどこかでは覚えてるっていうか。演劇みたいですよね。

イワガキ そうですね。

クマノ  うふふ。

 

   クマノはけ。

 

ヒラマ  心のどこかでは覚えてる。そうよ、私は今の今ままであいつの顔を忘れたことはないわ。婚約者を奪ったあのにっくき花屋の女をね!

イワガキ ホリさん!まずい!なんとかして!

ホリ   え~だから無茶言わないでくださいよ

イワガキ 無茶とかじゃないですよ!最高の体験をお届けして!このお客様が笑顔で帰れるように!楽しませて!

ホリ   え、え~、あ、じゃあ、歌います。花屋の~店先に並~んだ

イワガキ ちょ待てよ!

 

   ヒラセ入り。

 

ヒラセ  あのすいません、AEDってどっちですかね。

イワガキ なんですかその避難訓練みたいな質問。なんかあったんですか?

ヒラセ  いや、ちょっと気になっただけです。

イワガキ え?なんで?

ヒラセ  で、AEDはどっちにあるんですか?

イワガキ AEDはあちらとあちらとあちらにございます。

ヒラセ  あ~、なるほど、ありがとうございます。

 

   ヒラセはけ。

 

ヒラマ  花屋の店先?そうよ、私はオンリーワンにもナンバーワンにもなれないまま死んでいくのよ!

イワガキ あ~もうこんなことになって、ホリさんは女心が分かってない。もっと女性に寄り添って、こう、あるでしょ!

ホリ   そんなこと言われても女心なんかわかんないですよ。

イワガキ え~もう、あ、そうだわかった。ちょっと待っててください。

ホリ   え、あ、ちょっと!

 

レン入り。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

レンはけ。

 

ヒカリ  いい、じゃがバターはじゃがいもを食べてるんじゃないの。バターを食べてんの。バターにじゃがいも添えて食べてんの。

リカ   あなた本当にバカなんじゃないですか。比率で考えてみなさいよ比率で。じゃがいもがどんってあってバターはちょこんってのってるだけ。なんなら解けますからねバターなんか。そんな形も残らないようなやつが主役なわけないでしょ。

オオタニ お前ほんと風情ねぇな。消えゆくものに心動くのが俺ら人間ってもんだろ。お前には心がないよ心が。心があったらバターが主役だって一発でわかるの。

 

   イワガキ下手側から上手側に移動してくる。

 

イワガキ え、なんでこの人たちじゃがバターでもめてるの。

ナミキ  私たちもわからないですよ。

アカニシ え、ていうかイワガキさんどうしたんですか?

イワガキ あ、そうだ。じゃあ、アカニシさんさ、女心わかったりする?

アカニシ え、いや、一応わかりますけど。

イワガキ じゃあさ、向こう行ってホリ君に女心教えてあげてもらってもいいですか?

アカニシ え、なんでですか。

イワガキ いや、行ったらわかると思うから。ホリ君に女心教えてあげて、向こうにいらっしゃるお客様に最高の体験をお届けしてあげて。

アカニシ わ、わかりました。

 

   アカニシ、上手側から下手側に移動。

 

マツカワ だいたいな、質量で考えてみな。じゃがいもは質量大きいけどバターなんかちっこいぞ。質量当たりの金額で考えてもじゃがいもが主役なの!

ヒカリ  まぁたお金の話してるわこの人、恥ずかしくないの?

マツカワ 恥ずかしくありませぇん!そもそもじゃがバターって名前からしてじゃがいもが主役だってわかるでしょ。前に来てる方が主役なの。じゃがいもとバター。じゃがいもが主役でバターが脇役。テツアンドトモだってテツが主役でトモが脇役だろ。

リカ   は?テツアンドトモはトモが主役でテツが脇役だろ?

オオタニ 何言ってんの?テツアンドトモはテツが主役だろ。トモなんか脇でギター弾いてるだけだぞ。

リカ   はいギター弾いてるだけじゃありませぇん。ハモリもしてますから。ていうかあんたらトモの重要性わかってる?トモがいなかったらてくるくる回しながら変顔してるだけだからねテツなんて。

イワガキ なんで今度はテツアンドトモで喧嘩してるの。

ヒカリ  ほらすぐそうやってテツアンドトモの話に論点ずらす。いまテツアンドトモの話してないでしょ、じゃがバターの話してるんでしょ?じゃがいもに勝ち目ないと思ったからテツアンドトモの話してるんでしょ。

マツカワ いやこれはマジで違うから。たとえで出しただけだから。全然じゃがいもに勝ち目あるから。

ヒカリ  いや、これはどう考えてもバターの勝ちだから。バターが主役だから。

リカ   いや、じゃがいもが主役!

オオタニ バターが主役!

マツカワ じゃがいも!

ヒカリ  バター!

リカ   じゃがいも!

オオタニ バター!

マツカワ じゃがいも!

ヒカリ  バター!

ナミキ  じゃがバターはじゃがいもとバター両方が主役だと思います!

全員   ・・・。

オオタニ は?

ナミキ  じゃがバターはじゃがいもとバター両方が主役だと思います。あつあつでほくほくで、口にいれたら思わずはふはふってなっちゃうじゃがいも、じゃがいもの上でとろけて見ているだけで食欲を誘う香ばしいバター、その両方が合わさってじゃがバターなんですよ。どっちもかけちゃいけないんですよ。だから私は、じゃがバターはじゃがいもとバター、両方が主役だと思います!・・・あと、テツアンドトモもテツとトモ両方主役だと思います。

ヒカリ  ・・・確かにね。

マツカワ じゃがいもとバター、その二つが合わさって初めてじゃがバターになるもんね。

リカ   じゃがバターに主役も脇役もないですね。

イワガキ 一件落着・・・ですかね?

ナミキ  そうですね。

イワガキ 素晴らしかったと思いますよ。あ、ちょっと向こうの様子見てきますね。

ナミキ  はい。

 

  イワガキ、上手側から下手側に移動。

 

マツカワ テツアンドトモも言うだろうね。じゃがバターがこんなにうまいのなんでだろう~って。

リカ   じゃがいもとバター、両方が主役だからですね。

オオタニ それで言ったらテツアンドトモも言うと思うよ、こんな日に海に行くやつなんでだろ~って。

リカ   ちょっと待ってあんたまだ言ってんの?今日は海に行くべきだって言ってるでしょ

ナミキ  え、ちょっとちょっとなんか戻ってきたんだけど。

リカ   現実的に考えな。私今ものすごく疲れてんのね。虹色の滝まで行って元気に振舞える体力もう残ってないかんね?

オオタニ 知ったこっちゃねぇよ。お前の機嫌が悪いことよりもこんな天気よくてベストコンディションで虹見えるかもしれないのに行かない方が俺やだわ。

ヒカリ  ちょっと待ってそれはさすがにかわいそうじゃない?

オオタニ かわいそうじゃないですよ勝手に歩こうって言って歩いて疲れて虹色の滝行きたくないって意味わかんないっすよ。とにかく今日は虹色の滝に行くからな。

ナミキ  もう勘弁してよ~。

 

レン入り。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

レンはけ。

 

ヒラマ  いつまでたっても私だけひとりぼっちなんだわ。花に囲まれて、みじめで、いや~!

アカニシ いい?今教えた通りに行けば、絶対大丈夫だから。

ホリ   え、え~、それ本当ですか。

アカニシ ほら、男でしょ、覚悟決めなさい。

ホリ   う、う~、・・・ヒ、ヒラマ様。あ、あの花は、わ、私からのサプライズでございます。

ヒラマ  え?

ホリ   いや、その、ね、素敵な出会いをお探しとのことだったので、私なんてどうですか?という、その。ね。

ヒラマ  う、うう。

 

   イワガキ、下手側に移動。

 

イワガキ え、どういう状況?

アカニシ プロポーズです。

イワガキ は?

ホリ   このホテルで感じてしまった花の苦い記憶を、私との新しい花の思い出で塗り変えてみませんか。

イワガキ ・・・そんなんじゃ無理でしょ。

ヒラマ  まぁ、そうだったのね。

イワガキ いけた!?

ヒラマ  そういうことならそうと初めから言ってちょうだいよ!なんなら私、入ってきたときからちょっとかわいい顔してるなぁと思ってたのよ。あなたのこと。うふふ。え、今のって私に気があるってこと?そういうことよね?そう解釈していいってことよね?

 

   ホリ、イワガキの方を見る。イワガキは全力で目を見開いている。

 

ホリ   そういうこと、です

ヒラマ  まぁ!なんか照れちゃうわね。まさかこんな素敵な出会いがあるとは。あ、ちょっと待ってて、今スマホもって来るから。連絡先交換しましょう。

 

ヒラマはけ。

 

イワガキ ホリさん、本当にありがとう。

ホリ   いやちょっと待ってくださいよ。

 

   クマノ入り。

 

クマノ  あの、部屋にテレビが置いてあったんですけど、あれも持って帰っていいんですか?

イワガキ いやだめですよ。

クマノ  え、でも、アメニティ。

イワガキ テレビはアメニティじゃないですよ。

クマノ  テレビはアメニティじゃないんですか。

イワガキ テレビはアメニティじゃないです。

オオタニ (声だけ)とにかく今日は虹色の滝に行くからな。

イワガキ あれ、またなんかもめてる?

アカニシ 私ちょっと行ってきますね。

 

   アカニシ、下手側から上手側に移動。

 

イワガキ え、ああ、うん。

 

   ヒラセ入り

 

ヒラセ  あの、すいません。部屋にね、リセッシュがあったんですけど、そこはファブリーズじゃないんかいっていうね。いや、なんかその、ホテルファブリーズって名前ならせっかくだったらファブリーズ置けばいいのになって思いました。

 

   ヒラセ、一礼してはけ。

 

イワガキ だからなにぃ!!!!

 

   レン入り。

 

レン   プール!プール!プール!プール!

 

   レンはけ。

 

ヒカリ  もともと海に行くって話だったでしょ?こっちはもう海の気持ちになってんの。

ほら海行くよ海。

マツカワ だから、海なんていつ行ったって一緒だろ?虹色の滝は今日しか見られないっつってんの。この状況だったら虹色の滝いくだろ普通。

リカ   そんな疲れてまでみたってしょうがないでしょ虹なんか。心にゆとりある時にみたいわ虹。もうとにかく今日は海に行くべき!

オオタニ 壮大な滝見たら疲れなんかふっとぶから。見たでしょ?雑誌に載ってたベストコンディションの虹色の滝の写真。あれが肉眼で見られるかもしんないんだぞ?写真であんだけ綺麗なら肉眼で見たらもうとんでもないぞ多分。ほらな。虹色の滝いくぞ虹色の滝。

ヒカリ  そんなね、写真なんかいくらでも加工できんだよ今の時代。海は裏切らないぞ~。もう海は海でしかないんだから。ほら海が呼んでるよ。今日は海に行くべき!

オオタニ いや、虹色の滝に行くべき!

ヒカリ  いや、海!

マツカワ いや虹色の滝!

リカ   海!

オオタニ 滝!

ヒカリ  海!

マツカワ 滝!

リカ   海!

アカニシ ちょっといいですか!

ヒカリ  ・・・なんですか。

アカニシ あの、私、この辺住んでるからわかるんですけど、虹色の滝、思っているよりもしょぼいですよ。

マツカワ ・・・え。

アカニシ なんか雑誌とかネットとか、結構壮大な感じで載ってますけど、結構しょぼいですよ。

オオタニ ・・・そう、なの。

アカニシ はい。

リカ   ほらね。じゃあ、海で決まりね。

アカニシ いや、確かにしょぼいんですけど、今、虹色の滝、夜にライトアップしてて、それはすごくきれいなんですよ。

ヒカリ  ライトアップ?

アカニシ はい。なんか、プロジェクションマッピングみたいなこととかしてて。なので、大変おこがましいのは承知の上で、私から提案なんですけど、お昼は海でのんびり過ごしていただいて、夜に虹色の滝に行くというのはいかがでしょうか。

ヒカリ  ・・・いいですね、それ。

マツカワ 確かに。それならどっちも行けるしね。

リカ   プロジェクションマッピングなら、興味あるかも。

オオタニ 昼海でゆっくりできれば、体力も回復するしね。

ナミキ  ・・・ってことは?

マツカワ 今提案してもらったプランで行こうかなって思います。

アカニシ やった。ありがとうございます。なんか嬉しいな。

ヒカリ  いえいえ、こちらこそありがとうございます。

マツカワ よかったら一緒に行く?

オオタニ え、いいんですか?

マツカワ うん。僕たち車で来てるから、一緒に乗っていった方が楽でしょ。

リカ   え~じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな。

オオタニ 本当にありがとうございます。

 

   ウチヤマ、ツバキ入り

 

ウチヤマ レン~!どこだ~?

ツバキ  レン~!いるなら出て来て!

イワガキ どうしたんですか。

ウチヤマ うちの娘がどこか行ってしまいまして。

ツバキ  トイレ行ってくるって言ったまま部屋に戻って来なくて。

イワガキ それは心配ですね。一緒に探しますよ。皆さんも、お願いします。

ナミキ  はい。

ホリ   わかりました。

アカニシ 了解です。

イワガキ レンちゃん~!

 

   各々、レンを探す。

   ウガ入り。

 

ウガ   なんだか騒がしいですね。

アカニシ うわ、このタイミングで。

ウガ   何かあったんですか?

ウチヤマ うちの娘がいなくなってしまったんです。

ウガ   え、娘さんがいなくなってしまった。つまり迷子になってしまったということですか。

ウチヤマ そうなんです。

ツバキ  トイレに行くって言って部屋を出てから戻ってきていなくて。

ウガ   トイレに行く。トイレってそこのトイレですか?

ウチヤマ たぶんそうだと思うんですけど。

ウガ   じゃあ、フロントの方が見てるんじゃないですか?

ウチヤマ あ、そうですよね。うちの娘が最後にどこに行ったか見てませんか?

ホリ   ・・・えっと、プールに行ったと思います。

ウチヤマ いや、でも、ルームキーが部屋に置きっぱなしだったのでプールには入れないと思います。ここ、通ったんですよね?最後にどこに行ったか見ていませんか?

ナミキ  えっと。いたのは知ってるんですけど、その・・・

イワガキ 最後にどこにいたのかはわからないです。

ウガ   わからない。はぁ~!ここにいたのに、娘さんはここを通っているのにどこにいったかわからない。これはもうフロントの皆さんが招いた迷子じゃないんですか。

アカニシ ちょっと、

ウガ   もしかしたら誘拐されたのかもしれませんよ。フロントの皆さんが目を離していなければこんなことにはなっていなかったかもしれないのに。あぁ、かわいそう。

ホリ   ・・・。

ウガ   あなたたちは何のためにそこに立ってるんですか。なんのためにホテリエをやってるんですか。

イワガキ ・・・私たちは。

ナミキ  私たちは、お客様に最高の体験をお届けしたい、その一心でここに立っています。その気持ちに嘘は一つもありません。今日、ずっと憧れだったこの場所に立って、改めてそのことを実感しました。お客様のご希望があればそれを叶える。お客様が困っていたら耳を傾け、一緒に解決策を考える。このホテルには様々なお客様がいらっしゃいます。その中には普段の生活の中で、何かに追われている人、嫌な思いをした人、落ち込んでしまった人、いろんな人がいると思います。そんなお客様が、このホテルに足を運んでくださったすべてのお客様が、滞在中、少しでも笑顔を見せてくれる、ありがとうと声をかけてくださる、それだけで私は幸せで満たされ、やりがいを感じました。だから私たちは、お客様に最高の体験をお届けするためにここに立っています。・・・でも、私たちにも、できることとできないことがあります。ミスもしてしまいます。憧れだけでお客様を完璧に満足させられるほど簡単じゃないこともわかっています。でも、これだけは言えます。私を含め、今ここにいるホテリエは、今日一日お客様おひとりおひとりと真摯に向き合ってきました。迷惑をかけたくてかけた人間は一人もいません。そのことはどうかご理解ください。この度は、本当に申し訳ありませんでした。

 

   沈黙の後、ウガが拍手をはじめる。周りのお客さんたちも次第に拍手を始める。

 

ナミキ  え、え?

ウガ   いやぁ、素晴らしいホテリエが成長していて嬉しいよ。

イワガキ え、ちょっと、どういうことですか。

ウガ   ああ、ごめんごめん。私はこのホテルファ・ブリーズのオーナーのウガです。

イワガキ え、え、えー!

ナミキ  え、オーナー?あ、じゃあ研修の噂は本当だったってことですか!?

ウガ   あ~、やっぱリ噂になってるんだ。この研修のことは誰にも言わないようにっていつも言ってるのに。あ、君たちも次に入ってくる子たちに教えたらだめだからね。抜き打ちの意味がなくなっちゃうんだから。

イワガキ 次に入ってくる子たちにってことは、以前にもこの研修が行われたってことですか?

ウガ   もちろん。だいたい5年に1回くらい?私の気が向いたときにやってるんだ。

アカニシ えっと、あなたがオーナーで、この研修の仕掛け人だったてことでいいんですよね?

ウガ   ああ、いや。私だけじゃありません、ここにいる全員が劇団やプロダクションに所属していて、今回の研修の仕掛け人です。

アカニシ え~!じゃあ、ウチヤマさんのお子さんも?

ウガ   はい。子役の方です。

レン   シロタリンです。

アカニシ めちゃくちゃしっかりしてるじゃん。

レン   すいません。ウガさんにお願いされて向こうの方に隠れてました。

イワガキ なんだ。そうだったんだ。よかった。

ウガ   驚かすような真似をしてごめんね。でも、この研修を通してお客さんと向き合うことの大切さ、難しさ、そして喜びを知ったはずです。これからもこの気持ちを忘れず、さらに素敵なホテリエへと成長してください。

イワガキ はい。ありがとうございます。

ヒカリ  いやぁ、でも、部屋にお花が無いからびっくりしましたよ。

マツカワ ほんと。部屋がお花だらけになってるもんだと思って入ったらなんもないんだからね。

 

   ヒラマ入り。

 

ヒラマ  ごめんなさいね、ようやくスマホ見つけたわ。さ、連絡先を交換しましょ。

ホリ   あ、よかった~。じゃあこの人も仕掛け人ってことですよね。

ウガ   え、皆さんこの方知ってます?

 

   全員知らない的な反応。

 

ウガ   いや、この方は本当のお客様ですね。

ヒラマ  これからよろしくね。ダーリン。

 

   ホリ、ベルを鳴らす。

暗転。全員一列に並びお辞儀。

 

幕。

 

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