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大好きなメタルバンドANTHEMのライブに行ってきた。昔のメタル雑誌文体でライブレポートを書いてみた

小学校低学年の頃から、メタルとプロレスが大好きなのですよ。特に日本のメタルバンドANTHEMが大好きで、長年、追い続けているのですよ。

10代の頃は『ロッキンF』『BURRN!』『ヤングギター』あたりを愛読しており。プロレスにおける『週刊プロレス』『週刊ゴング』『週刊ファイト』もそうですけど、実は物書きとして影響を受けており。視点と文体なのですよね。熱く、たぎるというか(このあたり、『BURRN!』『ヤングギター』はあえてひいて書くことで、熱さを際立たせることもあります)。

というわけで、メタル雑誌文体で、ライブレポートを書きますね。


2022年5月22日、日本が世界に誇るヘヴィメタル界の重鎮、ANTHEMの“THE NEW CHAPTER”ライブが開催された。デビュー35周年/再結成20周年を終え新たな章に突入するANTHEMの、未来へ向かうスペシャル・ライヴである。

いつもは東名阪をツアーし、年によっては地方の小規模なライブハウスをめぐるサーカスツアーも開催する。むしろ東京で、1本のみ単独ライブは珍しい。もともと2020年はデビュー35周年、アニバーサリーイヤーだった。それが延期となり、2021年は1年遅れのアニバーサリーツアーとなった。歴代メンバーの共演、在籍時期によるVSライブなどの特別企画、さらにはアコースティックライブなどが続いたが、ANTHEM単独での、通常のライブは実に久しぶりである。

この夜のために関東だけでなく、全国からANTHEMファンが集結していた。会場となったZEPPダイバーシティ東京はお台場にあるが、とにかく周辺にANTHEMの黒いTシャツを着たファンたちをよく見かけた。お台場名物のガンダム像の前で写真撮影をするファンたちの姿も味わい深かった。お台場をANTHEMファンが埋め尽くしている様子は痛快でもあった。

会場は全席指定ではあるが、一時期の1席あけなどではなく、コロナ緩和モードを体感した。会場は満員と言ってよい入りだった。彼らのライブが始まる前は、客席では往年のハードロックがBGMとして流れていたのだが、この日は90年代以降のナンバーの比率が高く感じた。中には、コア、エキストリームなナンバーも流れており、バンドの新章に対する期待が高まっていた。

客電が落ち、おなじみのSEが地響きのように流れる。コロナ前は観客が大合唱をしていたのだが、残念ながらまだ声は出せない。しかし、観客が一斉に拳を振り上げる様子は壮観そのものだった。ANTHEMファンは心で「連結」し、バンドの登場を待った。

メンバーがステージに現れ、拍手が湧き上がる。ドラマーの田丸勇は明らかに腕がサイズアップしており、たくましさを増している。さらに、リーダーのベース、柴田直人は約30年ぶりにサングラスでステージに登場。彼がサングラスで登場するのは、森川之雄が加入した1988年の汐留PITのライブ以来だ。新章への期待は最初からクライマックスだ。

ライブの1曲目は"DESTROY THE BOREDOM"だ。再結成後、坂本英三加入後に、ライブ会場だけで演奏されていたファストナンバーである。ギターソロもなくひたすら疾走感があり、攻撃的なこの曲は、2014年度の森川之雄復帰後に初めてレコーディングされている。2000年代半ばに誕生した頃も、レコーディングの間にたまったフラストレーションを爆発させるかのような曲だったのだが、この日はいっそう、マグマが燃え盛るような、鬼気迫る演奏だった。1曲目にしていきなり、ギターの清水昭男と、ベースの柴田直人の位置が入れ替わり、観客を確信犯的に煽動する。声は発せないものの、サビの「Ha ha ha ha ha」という掛け声に合わせ、観客も拳を振り上げる。

森川之雄のMCをはさみ、"THE ARTERY SONG","VENOM STRIKE","GET AWAY"と攻撃的なナンバーを畳み掛ける。この新章の扉を開くライブのキーワードはこの瞬間で、攻撃的であることと、自らのターニングポイントを確認するものなのだと確信した。"THE ARTERY SONG"は海外進出前の、現在のところ最新のオリジナルアルバムの1曲目であり、"VENOM STRIKE"は、20歳の現役大学生にしてANTHEMに加入した清水昭男の天賦の才能を知らしめた楽曲である。また、坂本英三時代の曲の再解釈もこの日のテーマだ。"GET AWAY"は坂本時代の最後の音源に収録されていたナンバーである。再解釈により、重さ、激しさ、破壊力を増していた。

ハイライトは、現在レコーディング中の新曲の披露だ。"METAL (仮)","FAST 2021 (仮)"の2曲が披露された他、英語詞となり再録音された”overture〜ON & ON”が演奏された。

あまりにもベタな仮タイトルの"METAL (仮)"だが、一方で、このタイトルしかありえないような楽曲だった。荘厳なキーボードの演奏を盛り込みつつ、徹頭徹尾攻撃的なメタルナンバーで、2020年代のANTHEMの音になっていた。時流に合わせるわけではなく、日本で、欧州以上に純粋培養されてきた、世界の最先端の、メタル以外なにものでもない楽曲だった。

英語詞となったON & ON”は、坂本英三時代の最高峰といえるナンバーだ。森しかし、森川之雄をボーカリストとしてもともと想定していたかのようなパワフルな楽曲だと再認識した。英語詞であることから、コロナで中断した世界進出に関する狼煙だとも解釈できた。

"FAST 2021 (仮)"は、"ONSLAUGHT","ETERNAL WARRIOR","IMMORTAL BIND"などのような、テクニカルかつ攻撃的な威圧感をまとったナンバーだった。明らかに弦楽器隊の左手泣かせの楽曲だが、テクニックや難解さを目的化した曲ではなく、メタルでありつつもメロディアスでキャッチーであるというANTHEMらしさをまといつつ、やはり2020年代的なエネルギーにあふれた楽曲となっていた。

リーダーの柴田直人は新型コロナウイルスと、それによる活動への影響について赤裸々にSNSなどに投稿していた。不屈の鋼鉄の巨人がさらけ出す苦悩にファンは共感したのだが、結果として、2020年の沈黙、2021年のイベントやアニバーサリー企画、アコースティック企画などが創作にポジティブな影響を与えたのではないかと感じられた。曲にポジテイブなクリエイティブ欲が満ち溢れている。

その後も攻撃的ナンバーが続く。今回は"OMEGA MAN"などのインストナンバーもドラム・ソロもなく、惜しげもなく4人によるナンバーが展開されていく。明らかにこれまでのライブとは異なる、鮮やかな照明が演奏を盛り上げる。ライブの名物だった、バンド名が入った緞帳は姿を消し、そのかわりに4人の攻撃的なパフォーマンスがダイレクトに伝わるものになっていた。

特筆すべきは、ギタリスト清水昭男の存在感と、田丸勇の成長だろう。「若者のギターソロ離れ」が話題となる今日このごろであるが、清水はメロディアスなギターソロも、攻撃的なリフもさらりと弾きこなすだけでなく、シンプルなフレーズすらも、清水以外の何者でもない音を奏でていた。田丸勇は肉体改造の成果もあり、音がより太くなりつつ、繊細なプレイも実現していた。ANTHEMでは最年少ということもあり、いじられキャラであり続けていたが、日本のハードロック、ヘヴィメタルドラマーでトップクラスにいることを我々は認め、評価しなくてはならない。柴田直人のステージアクションも明らかに攻撃的であり、森川之雄は野太くシャウトし、この4人でしかできない、日本が世界に誇るメタル空間が構築されていた。

約2時間半のスペシャルライブは、いつにも切れ味、破壊力抜群の”IMMORTAL BIND”で幕を閉じた。新章とは何なのか?その方向性が打ち出されたライブだと言えよう。歴代の攻撃的ナンバーがこれでもかと並べられたライブに、彼らが円熟味を増しつつも、新たな時代の扉を開いていることを確信したライブだった。

ファンは皆、ANTHEMと絶叫し、熱唱していた。心の中で。

この夏は東名阪アコースティックツアーを開催、秋にはレコーディングという彼らだが、この攻撃的メタルモードのANTHEMをもっともっと観たいと思うのは、ファンとして当然の願望だろう。ANTHEMが開く彼らの、いやメタル界の新たな扉に期待しよう。

5月22日 ZEPPダイバーシティ東京
➖THE NEW CHAPTER➖
DESTROY THE BOREDOM
THE ARTERY SONG
VENOM STRIKE
GET AWAY
METAL (仮)
overture〜ON & ON (英語ver.)
FAST 2021 (仮)
SHINE ON
LOVE OF HELL
ECHOES IN THE DARK
HUNTING TIME
AWAKE
SHOUT IT OUT
BOUND TO BREAK
ONSLAUGHT
-encore -
FAR AWAY
WILD ANTHEM
-encore2-
IMMORTAL BIND

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