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金子ノブアキと海にいた。

「チーム金子ノブアキ」には夢が詰まってる。

いつだっていい夢が見られるように願ってる。



2020年11月

金子ノブアキと海にいた。

2020.12.25「ZANGE UTOPIA」発売。
1曲33分間の、音の旅路。

’自分の親愛なる人たちが、どうか孤独ではありませんように,

あっくんの祈りと願いに振付をした。

この日は、曲の一部分を抜粋した映像作品「Zange Utopia〜Bridge〜」の撮影だった。踊るのはダンサーの可南子さや香、写真と映像はフォトグラファーの廣瀬順二さん、ディレクションは清水康彦監督

「Zange Utopia〜Bridge〜」

二人の女の子がスマホの光でお互いを照らし合いながら踊るのは、孤独と繋がりたい気持ち。

親指ひとつで繋がれるSNS。
身体ひとつで繋がれるダンス。

街の明かりとスマホの光。指を擦り抜ける光は触れることはできても掴めなくて、心と体によく似ている。運命が偶然と重なる一瞬を期待する僕たちができるのは踊ること。でも本当に欲しいのは繋がる実感なのかもしれない。

二人の写真をインスタグラムのストーリーに上げた。誰かのいいねが、誰かのいいねに繋がって、作品の輪郭を作り出す「チーム金子ノブアキ」の現場が大好きだ。言葉にできないことは技術に、言葉にできることは爆笑に。祈りと願いを視覚化する。その瞬間のひらめきとインスピレーションは、24時間じゃ消えない。

月明かりの下で踊りつづける二人は僕の教え子で、はじめてのミュージックビデオの撮影だった。「一人人間!一人動物!」「ソーシャルディスタンス!」など意味のわからない指示を完璧に踊る二人を見ていて「うちの子!天才かもしれん!」と思ってしまう僕はたぶん結構な親バカで、二人が可愛くてたまらない。
心の中であっくんやスタッフのみなさんに感謝をした。口で伝えればいいのにと思ったけど、やっぱり照れるので、家に帰ってからスマホに文字を打ち込んだ。

いつも肝心な事を言葉にできない。

撮影の一週間程前に撮影場所の下見に行った。集合場所は、大きな橋の下にある、海の見える駐車場。駐車場のまわりをウロウロして、みんなで橋に登った。

誰もいない橋の上で、自由に妄想を繰り広げる。くだらない話をして、歩いたり、踊ったりした。

誰かの一言が、誰かの一言に。
繋がったり、繋がらなかったり。

ほんとどうでもいいくらいに、くだらない話。
くだらないほど、繋がれる。

一生懸命写真を撮っているあっくんと監督。

あっくんは知らない。いま撮っている写真が、このアルバムのジャケットになることを。

ふとした一つの行動が、あとで振り返ったときにきっかけだったと気づくことがある。それは神様のきっかけ。力を入れて頑張っているときよりも、肩の力を抜いてリリラックスしているときの方が、なんだかうまく出会えるような気がする。

廣瀬さんが写真を撮ってくれた。

いいジャンプだ。
でも僕は知らない。来月に肉離れすることを。

筋肉が繋がっているように、出会いも繋がっている。神様だけが知っている、運命と偶然。

あっくんと出会ったのは、12年前だった。

2009年6月

金子ノブアキと海にいた。

2009.7.15 1st Album 「オルカ」発売。
金子ノブアキソロデビューアルバム。

’このMVが誰かの力になれれば,

あっくんの祈りと願いを踊った。

僕はミュージックビデオの撮影ははじめてで、きっかけは、一本の電話だった。

 「金子ノブアキのPVで踊ってほしい。」

ガラケーの通話ボタンを押すとたっくんの声だった。数日前、なか卯で親子丼とかつ丼をテイクアウトしてお見舞いに行ったとき、なんとも言えない表情でかつ丼を食べていたたっくん。

僕たちは同じ舞台に立つはずだった。

リハーサル中の怪我、と言うか大怪我だった。正直たっくんの舞台復帰は難しそうで、「オルカ」も本当はたっくんが踊るはずだった。でも、それも難しそうだった。

「わかった。」と言って携帯を閉じてから、嬉しいような、悲しいような、なんとも言えない気持ちになった。

運命とか偶然とか、わからなくなる。

踊りの神様はいるんだろうか。

すべての出来事に理由はあるって言うけど、全然納得できなかった。踊りの神様ふざけんな。

その頃住んでいたボロいアパートで何度も何度も「オルカ」を聴いて踊った。ただの踊りになんてしたくなかった。誰かがくれたボロいラジカセは音飛びが酷くて、勝手に電源が切れた。液晶画面の「good bye」の文字を睨んだ。毎晩ボロいアパートはダンスフロアになる。

いつも大切なことが言葉にできない。

約束の日、待ち合わせは夜の海。
月と車のヘッドライトが身体を照らす。イントロが流れて波打際まで歩いたら、波の粒が光って消えた。踊り出したら不安も消えた。鳴り止まないストリングス、ドラムのビートが心臓を押し上げる。

流れ行く景色を どうか振り返らないで
行き先は遥か あの月の向こう

海岸に「オルカ」が爆音で鳴り響く。

踊るときは一人だから、一人に耐えられるメンタルを。環境に負けない身体を。怖くても突っ込んでいく心を。もっと速く。もっと遠くまで。急げ、夜が明ける。

月明かりの下で、カメラと踊る。がむしゃらに踊る男と、無言で撮る男。ロックの神様は止まらない。

世界を見てごらん 君は美しい
水面を見てごらん 誰も追いつけやしない
スパイホップのアンテナで 見つけ出すからきっと
忘れないで 遠い日の あの約束を

あの日の約束を思い出した。
親子丼とかつ丼を食べながらした約束。

「たっくんの分も、おれが踊る」

神様、なか卯で繋がる友情だって、ある。

思い出が乱舞、吐き出す全部。
音と体が衝突すれば衝動が生まれる。
繰り返される感情と衝動の無限ループ。

神様だけが知っている、運命と偶然。
僕だけが知っている、出会いと別れ。

出会ったんだから、伝えたい。

言葉にできないから踊ってるんじゃない。
言葉にするために踊っている。

いつだって誰かに届けたい言葉がある。



「チーム金子ノブアキ」には夢が詰まってる。

なんで踊るのかって、好きな人達に会いたいだけで。運命でも偶然でも、どっちだっていい。

僕は「チーム金子ノブアキ」と夢をみる。

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