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安くて良いサービスが売れない!?既存顧客に売れる新規サービス3つのポイント

B2Bマーケティング Advent Calendarの7日目は才流(https://sairu.co.jp)でBtoBの新規事業やマーケティングのコンサルタントをしている小島(@yooheykoji)から、「既存顧客に売れる新規サービス3つのポイント」についてお話をさせていただきます。(事業開発に近い内容です)

BtoBの新規事業やマーケティングについてお悩みの方は、是非、気軽にご質問・ご相談ください。可能な範囲で回答させていただきます。
(気軽にDMください) → @yooheykoji

新規サービスの開発に関しては、PMFの理論やリーンスタートアップなどの手法について理解が深まり、多くの企業でプロダクト開発・サービス開発のプロセスがブラッシュアップされています

一方で、新規サービスの販売についてはまだまだ知見が集積しておらず、多くの企業が課題を抱えています。

私は才流に入社する以前、株式会社GENOVAという医療機関向けIT企業の事業開発責任者として4つの新規サービスに失敗し、1つのサービスだけ(メディア事業)が成功し、在籍当時年商10億円の事業に成長しました。

本記事では、私の過去の失敗経験を踏まえた、既存の顧客基盤を活かして新規サービスの販売を加速させるポイントをご紹介します。


この記事の対象者

  • SaaSや無形商材で、新規サービスに携わっている方

  • アカウント制の営業組織を採用しており、1人の営業が複数のサービスを販売している企業に在籍している方

  • 新規サービスが売れずに悩んでいる事業開発・営業・マーケティングに関わっている方

安くて良いサービスが売れない

前職は病院や歯医者などの医療機関向けのHP制作をメインに提供している企業で、私は新規サービスの開発責任者をやっていました。

当時の営業担当者は全国に約100名。既存顧客の病院や歯医者(数千社)に対して、クロスセルするためのサービスを企画・開発するのが役割でした。

当時、アプリ制作や求人メディア等、いくつかのサービスをリリースしました。今振り返ってみても顧客ニーズはあり、提供価値の高いサービスは含まれていたと思います。ですが、全く売れなかったのです。

営業が売るのは、営業目標を達成できるサービス

当時の営業組織はアカウント制で、1社に対して1名の営業が担当し、あらゆるサービスの販売を行っていました。営業を評価する基準は「粗利益」で、1人あた毎月300万円(仮)が目標として設定されていました。

当時はサブスク型のビジネスが流行っていたこともあり、「初期費用は無料の月額サービス」を企画。顧客にとっても初期の負担が低く、会社にとってもストック収益が増やせるため、メリットがあると考えていたのです。

しかしながら、実際には全く売れませんでした。それどころか、案内すらされていなかったのです。月毎に300万円(仮)の粗利益を獲得しなければならない営業からすると、月額5万円(仮)のサービスを販売しても目標の達成ができないことは当然の結果でした。

その時に気づいたのが、「営業が売るのは、営業目標を達成するサービスである」という視点です。では、どのようなサービスであれば営業目標を達成できるのでしょうか?

顧客にとって価値の高いサービスであることは前提として、「達成できる価格設定」「安心して売れる環境」「手離れの良さ」の3つを整備することが重要だと気付きました。

営業が達成できる価格設定

最終的に年商10億(当時)まで伸びたメディア事業においては、リリース時点で営業が達成しやすい価格設定を行いました。

新規サービスの価格設定を行う際に、顧客目線(支払い可能な価格なのか)や競合目線(比較された際に勝てる価格なのか)はもちろん重要ですが、営業目線(営業目標が達成可能な価格なのか?)は抜けてしまいがちな視点です。

営業目線での価格設計を行うためには、既存の評価制度を理解することから始める必要があります。私の場合は新卒で配属されたのが営業だったため、評価制度については身を持って理解していました。

既存の評価制度を理解すると、「営業担当が達成するために必要な価格感」は自ずと見えてきます。例えば、月300万円の売上目標を課されている営業が、「単価100万円×3件=300万円」で計画を立てているとします。その際に、「単価50万円」の新規サービスを売ってもらうには、2倍の受注率を実現しなければなりません。馴染みのない商品で2倍の受注率を出すことは非常に困難で、多くの営業担当は新規サービスの販売にチャレンジせず様子見すると思われます。

社内評価を調整する

営業目線(営業目標は達成可能なのか?)での設定を行うと、自ずと高単価になりがちです。しかしながら、新規サービスにおいて、リリース時点で高い提供価値を実現し、高単価で販売するのは至難の業です。そういった場合には社内の評価調整を行うのも有効です。実際に私が体験・見聞きした中で有効だなと感じている社内調整は下記の2つです。

月額サービスを、一定期間継続する前提で評価する

既存の営業担当が売上や粗利益で評価されている場合、月額サービスを販売してもらうのは至難の業です。その場合は、一定期間継続することを前提にした評価を行う方法があります。例えば、ある企業では月額5万円のサービスを販売した際に、24ヶ月継続する前提で120万円(5万×24ヶ月)の評価をすることで、月額の新規サービスを営業担当が販売するモチベーションを作ることで拡販に成功しています。

新規サービスの場合は平均継続期間が読めないため、想定売上が立たなかったり、キャッシュフローが悪化するといったリスクはありますが、選択肢として持っておくことをおすすめします。

リリースから一定期間は、◯倍の評価をする

リスクを押さえた調整としては、リリースから一定期間(1年間など)は評価を上げる(1.2倍など)方法があります。会社としては新規サービスを売ってもらいたいが、営業現場に動いてもらえない場合などに有効です。一定期間の継続を見込む評価に比べて変数が少ないため、採用しやすい方法かと思います。

大事なことは、「営業目線」を持つこと

最適な価格設計はサービス内容や各社の個別事情によって異なるため一概には言えません。ただ、1顧客に対して1人の営業が複数のサービスを販売するアカウント制の営業組織における新規サービスの販売は、「営業が達成可能なサービスなのか?」という視点を持つことが重要です。

一見、「安くて良いサービスが売れる」と考えてしまいがちですが、単価が安い→営業の評価が低い→達成しない→売らない、という流れに陥ってしまうケースが非常に多い。振り返ると当たり前な話なのですが、当時は「なぜ価格の高いサービスの方が売れるんだろう?」と不思議に思っていました。

売りやすい環境を作る

価格設計は重要ですが、それだけでは売れません。新規サービスを営業担当に販売してもらうためには、営業が売りやすい環境を整備する必要があります。

事業開発担当が、自分で販売実績を作る

営業の目線に立つと、新規サービスを提案するのはリスクのある行為です。営業目線の価格設計をするだけでなく、「本当に売れるのか?」「売れた後、顧客は満足してくれるのか?」という疑問を解消する必要があります。

「実績を作るためには営業の協力が必要なのですが、営業は実績がないと動いてくれない」というニワトリが先か、卵が先か、という状況でお悩みの方も多いのではないでしょうか?

私の場合、失敗した4つのサービスはまさに上記の課題を抱えていました。リリース初期の実績が作れず、営業を巻き込むことができなかったのです。

成功した最後の事業では過去の失敗を反省し、個人的な関係性の深い営業部門のエース(エバンジェリスト)と一緒に、私自身も営業現場に出向き、自ら提案を繰り返す中で販売実績を作っていきました。

新規サービスにおける最初の顧客獲得(30社くらい)は「自分で、泥臭く売る」のが重要だなと実感しています。「人任せで、スマートに売る」ことはできないのだと深く反省したことを覚えています。

上記の営業活動を繰り返す中で得た知見を元に下記を整備し、営業が安心して提案できる状態を作りましょう。

・営業資料
実際に営業現場で磨き込んだ営業ロジックを資料化する
・導入事例
導入後の成果や声を収集して資料化
・競合比較
「〇〇社との違いは?」と聞かれた時の端的な返答
・Q&A集
よくある質問への回答を用意
・問い合わせ窓口の設置
営業担当者がサービスや契約についていつでも相談できる体制を用意

営業の手離れを良くする

最後に、営業の手離れを良くすることが重要です。販売後に営業担当者の手間が多いと、販売は停滞してしまいがちです。私の場合は、「契約締結後、営業に一切の手間が発生しない」ことを目指して受注後のフローを整備していました。

新規サービスは受注後のフローが曖昧だったり、決まっていても全営業担当者に浸透していないケースが散見されます。トラブルが発生したり、思わぬ手間が発生してしまうと、営業は提案を控えるようになってしまうので細心の注意が必要となります。

結論

「営業目標の達成に繋がるサービスであることを示し、売りやすい環境を整え、受注後一切の手間がかからないことを営業に理解してもらう」ことができれば、既存顧客向けの販売が加速します。少なくとも、営業から既存のお客様に提案をしてもらえるかと思います。

素晴らしいサービスであるにも関わらず、営業に担いでもらえないことで成長できずにいるサービスがあるのではないかと思い、本記事を書かせていただきました。

※本記事の内容はあくまでも私個人の体験談なので、一意見としてご参照ください。


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